公開中
東方玄魔録〜漆〜
*
ああ、びっくりした。
またあの盗人が本をかっぱらいに来たのかと思ったわ。
って、何よ、そんなに身を乗り出して。
訊きたいことでもあるの?
あるなら短めにね。
私、今読書と呼吸をするのに忙しいから。
……努力家で、チグハグな魔法使い? 先の異変?
へえ。
そんなことを今は調べてるのね。
しっかし、あのアリスから言われて来たのね……
全く、彼奴私に丸投げする気なのかしら……私だって面倒なことは嫌いだっていうのに。
そうよ。面倒なことなのよ。
……もしかしてだけれど、あなた、先の異変も詳しく知らない?
そう。
確かに、私も同意するわ。本人から聞くのが一番よ。
本人の言葉、声色、目線……それらからしか判らないものが会話にはあるもの。
まあ、それでも好んで会話や議論をしようとは思わないけれどね。
はあー。
しかし、私かあ。
そうねえ……。
同じ魔女であるアリスが逃げたなら私だって丸投げして良いわよね。
小悪魔!
レミィを呼んできて頂戴。できるだけ早めにね。
咲夜は……そうね。なるべく連れてこないで貰って。
優秀なメイド長の代わりに、美味しい紅茶をお供にって伝言をお願い。
よろしくね。
ふう。
さてと。少しだけ待っていてもらえるかしら?
今、私以上に紅魔館において力がある子を連れて来てもらってるから……。
あら、結構早かったじゃない。レミィ。
*
急に呼び出すなんて驚いたわよ、パチェ。
小悪魔から簡単なことは聞いたけれど……。
此の子が新しい博麗の巫女?
頑張り屋さんな感じの子じゃない。
これならきっと安泰ね。
あ、異変を起こすつもりは今のところないから安心して頂戴? まあ前科があるから信憑性は薄いでしょうけど。
で──猫っかぶりな生真面目魔法使いの話だっけ?
あら? ちょっと違う?
外と内面がチグハグな努力型? 殆ど同じ意味じゃない?
違うの? まあそういうことにしておいてあげるわ。
うーん。
けれど、あの人形魔女も情に脆いのね。
かなりのヒントじゃない。
あのスキマ妖怪が隠してるのにそんなに言って良いのかしら……まあでも、止めていないってことは良いのでしょうね。
うふふ。
大丈夫よ。
私は隠し事をしないわ。
それに、この暖かい美味しい紅茶とプチフールを冷めさせるわけには行かないもの。
食べながらでも良いなら、上で話しましょう?
だってパチェ、あなた図書館でクッキー食べたら怒るじゃない。
ほら、ね? パチェも立って。
さ、続きは中庭で話しましょう。勿論日傘付きでね。
*
(パチュリー・ノーレッジ/レミリア・スカーレット談)
『東方玄魔録』より抜粋