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織りなす魔法。 4話
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木陰の中。
ゼインは、他の誰とも距離を置いたまま、静かにカイの背中を見つめていた。
言葉はない。
表情も変わらない。
だが、その瞳だけが、確かに何かを探るように揺れている。
(……あの時と、同じ匂いだ)
ゼインは思い出す。
まだ“裏切り者”と呼ばれる以前――
仲間の輪の中にいて、冗談を言い、笑い合っていた頃。
それでも、自分だけが見えなくなっていた。
「信じる」という感情が、怖くて仕方なかった。
カイの今の姿は、その時の自分とよく似ている。
必死で誰かを守ろうとして、結果的に誰からも心を閉ざされていった――
そんな過去をなぞるような、静かな孤独。
(……あいつ、どこまで踏み込んでる?)
ゼインはゆっくりと手を握る。
あの頃、止めてくれる誰かがいたら。
自分も、もっと違う道を選べたのかもしれない。
だからこそ――
カイが同じ道を進んでいるように思えて、怖かった。
(もし、本当に……あいつが何かを隠してるなら)
その時は――もう、傍観者ではいられない。
◆ 小さな亀裂の兆し
夕暮れの光が広場の片隅をオレンジに染める頃。
6人は、いつも通りの顔ぶれで集まっていた。
けれど、確かに――いつもとは“違う空気”が流れていた。
テオが明るく話題を振る。
「ねぇ、リアン!この前の焼き肉の話、またしてよ!」
リアンはいつものように腕を組みながら、ニヤッと笑って言った。
「しょうがねえな〜、あの時な、肉がさ、もうとろけるようでよぉ〜」
けれど、笑い声は一瞬だけ。
テオも、いつものようにノってくれない。
リアムは笑ってはいるが、目がどこかうつろだった。
ドライは無言のまま、草の上に座って空を見ている。
その背中が、妙に遠く感じた。
ゼインは木の陰で、誰よりも静かに周囲を見つめていた。
その視線は警戒心に満ち、全員の表情をひとつひとつ拾っている。
そしてカイ。
彼は、さりげない仕草で周囲を見ていたが、ほんのわずかに“浮いて”いた。
テオが冗談を言っても反応は薄く、リアムの提案にもすぐに同意しない。
視線は、仲間たちではなく、自分の足元やスマホの画面を何度も確認していた。
その些細な違和感が、誰の胸にも「言葉にできない不安」として残る。
(なんだろう、この感じ……)
誰も言わなかった。
でも、確かに感じていた。
小さな、けれど確かな“ひび割れ”が、チームの中心に生まれ始めていた。
夜。
部屋の灯りはすでに落ち、窓の外からは虫の声だけが静かに響いていた。
カイはベッドに腰を下ろし、スマホの画面を見つめている。
部屋は静かすぎるほど静かで、スマホの微かな振動音だけが、現実と彼をつないでいた。
画面には、メンバーのログ、行動記録、魔力の変動、装備の使用履歴。
日々のデータが整然と並び、まるで“チームの心拍”を映すようだった。
けれど、そこに――見慣れない通知がひとつ。
《匿名メッセージ:1件》
カイは指先でそっと開く。
そこに書かれていたのは、ただ一行。
「真実は、まだ隠されている。」
目が止まる。
しばらくの間、呼吸すらできなかった。
誰だ? なんのつもりだ?
どうして――俺の端末に?
頭の中がざわつく。
もしこれが、誰かの仕掛けた“罠”なら。
それとも、本当に……?
カイはスマホをそっと伏せた。
何も見えない天井をじっと見つめ、静かに息を吐く。
「……どうすればよかったんだろうな、俺……」
言葉にしても、答えは返ってこない。
ただ、夜の静寂がすべてを呑み込んでいった。
そして画面の通知は、消えることなくそこに残っていた。
《真実は、まだ隠されている。》
まるで、それこそが――
この物語の“始まり”であるかのように。
あんま長くないけど おつはる〜