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第4話
城の門をくぐると、馬車の揺れが止まった。
私は深く息を吐き、二人の肩にそっと手を置く。
まだ硬く俯いたままの小さな背中。
少しでも安心させるため、優しい声で話しかける。
「ここが、これから君たちの住む場所よ。」
二人は顔を上げることなく、ただじっと私の手を見つめる。
私の心もぎゅっと締めつけられた。
きっと、過去で受けた恐怖が、まだ彼らの体に残っているのだろう。
私は小さく微笑みながら、そっと言った。
「名前、つけてもいいかしら?」
一瞬の間。
二人は互いに視線を交わし、言葉を発しなかったが、どこか安心したような空気が流れた。
「じゃあ、あなたには……末日(まひろ)っていう名前をつけるわ。」
柔らかい声で呼びかけると、少し驚いたように目を見開く末日。
「そして、あなたには加楓(かえで)。」
こちらも同じく、まだ戸惑いの色が残る。
名前を呼ばれたことで、少しだけ彼らの表情がほころぶ。
私は二人の小さな手をそっと握り、ゆっくり城内に歩みを進める。
廊下の先には温かな光が差し込み、城下町よりは少し安心できる空気が流れていた。
「今までたくさん怖い思いをしてきたでしょう。でも、もう大丈夫よ。」
末日が小さく肩を震わせ、加楓もわずかに息を吐く。
まだ完全に心を開いてはいないけれど、
この城が少しだけ安心できる場所であることを、二人は理解し始めたようだった。
私の心も、少しずつ落ち着いてくる。
(守らなくちゃ……二人とも、絶対に守る。)
この城での生活が、彼らにとって安全で居心地のいいものになるよう、私は全力を尽くそうと決めている。
だけど、まだこれから待ち受ける試練や、彼らの心の傷が簡単に癒えるわけではないことも、分かっていた。
窓から差し込む光が、二人の小さな手に当たり、微かに温かく照らす。
私はその光景に、少しだけ未来への希望を感じた。
「さあ、新しい日々の始まりよ」
まだぎこちない足取りの二人を見守りながら、私はそっと囁いた。