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生きてても良いことなんかないって知ってたしね。
本作の主人公イメージ
https://picrew.me/ja/image_maker/1342308/complete?cd=D89aXlIku7
シンプル女の子メーカー(maru_fue00)様で作成させていただきました。
「モブウザ。」 「いや、絶対生きてる価値ない。」 「モブがいなきゃこのクラス最高だったのにな~」
分かってる。
このクラスには私だけが部外者なんだと。
隣のクラスに行ったって、別学年に行ったって、私は同じ扱いを受ける。
本当はもっと皆と仲良くして、楽しく中学校生活を送りたかった。
だけど、皆が受け入れてくれない。何も悪い事してないけど…皆にとって、私は犯罪者。
「いじめる子も悪いとは思うけど…イジメられる方にも原因はあると思う。」
誰かが言ってた。私は何もしてない。だけど、理不尽にイジメられるなんてことは絶対にありえないらしい。名前のつかない「制裁」なんて無いらしい。
うちは、貧乏でもないし、裕福でもない。人並みの暮らしを送れている。
だから親は必死に働いて裕福になろうとしている。
多額のお金がいっぺんに入ったら親はきっと楽になるかな。――強盗でも闇バイトでもしてみようかな。
でもね、私はそこまで強く出来た人間じゃない。私はそこまで上手く出来た人間じゃない。
犯罪を犯してまでも、親を楽になんかさせたくない。これって親不孝に入るのかな。
そうだったら、ごめんなさい。
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最近、いい話を聞いた。保険金の事。
「ねぇ由利ちゃん聞いて!パパが、課長になったのよ!」
「そうなんだ。きっと収入も良くなるんだよね。パパ凄い。」
「そうよ。今までと比べ物にならないぐらい。ママも嬉しいわ~」
「じゃあママはこれ以上パートのシフト増やさなくても良いね。」
「何言ってんの。そんな上手く行かないのよ。うちは、保険に入ってるから、そのお金を払わないと。」
「…保険?」
「生命保険って聞いた事無い?もし、由利が病気とか、事故で入院生活をおくんなきゃいけなくなったときのためにお金を払ってるのよ。でもっていざという時に今まで払ってきたお金を返してくれるの。そうすれば入院代とか全負担じゃないでしょ。パパのお金は皆のために稼いでくれてるのよ。」
「そうなんだ。じゃあパパに感謝しないとね。」
私が死ねば今まで払ってきた分のお金は全部家に返還されるのかな。
生きてて…この先意味あると思う?別に私が世界を救う発明や行動をするわけでもない。
私のために使ってくれてる税金も、保険金も、…全部無駄じゃない?wいらなくない?w
生きてても良いことなんかないってこの数年で実感させられたし。それこそ、死ぬほどね。
だったらこの辺でさっさと死んで、地球の広大なステージから潔く退場しよっかな。
そっちのほうが、なんか儚げで私の人生美しく見られるんじゃない?
死ぬ前にいい思いしたいって思う人もいるかも知れないけど、私が死ぬ事で誰かが少しでも幸せになれるならそっちを選ぶ。世界を救えないけど、その人の事は多少なりとも救えるしね。
死ぬことの恐怖…そんなのない。なんか、最強無双モードなの。今そんなの手に入ってもちょっと遅いんだけどwどうしよ。遺書とかかいといたほうが良いのかな。
私が死ぬことにしたのは学校でいじめられてたからです。
なぁんて。うそうそ。そんな事書くわけ無いじゃんか。死の理由をあの人たちのせいにしたくない。
みっともない。ちょっとは反省してくれるかな~とか思ったけどごめんなさいって先生に言ってそれで終わり。先生の時間が無駄だよね。そういうちょっとしたとこでも善を積んどかないと。
遺書とか面倒くさいけど、私の死が無駄にならないように書かないと。
最後の一文。「世界が平和になりますように。」うん。それらしい。聖職者みたいな発言。
今まで勉強してきて良かった。たった今役に立った。
飛び降りるのは怖いけど、世界のためだ。そして…私のためでもある。
「あれ?wwモブじゃんw」「寂しくなっちゃってウチらのとこ来たん?w」「うちらの聖地来んなよ」
「大丈夫だよ。私は寂しくもないし、あなた達の領域に踏み入るつもりも一切ない。
ただ、この場所をお借りしたいだけ。」
「は?何言ってんの?モブキモいんですけどーww」
「…え、何してんの?」
「言ったよね。この場所をお借りしたいだけって。すぐ終わるから。君たちは黙ってそこで見てなよ。
女子高生見殺し事件…なんてタイトルを付けるのも良いね。」
「ちょっ…と!飛び降りるつもり!?やめなさいよ!」
「謝るから!死ぬのだけはやめて!」
「今更。もう遅いよ。ってか、あんたたちのために死ぬわけ無いじゃん。自意識過剰ウザー。」
「あ、そうなのね…良かった…」
「死ぬ事実は変わらないけど死ぬ理由は変わるんだよ。あんたたちは関係ないって遺書に描いたから、よく見てご覧?中々、スリリングで楽しい日々を過ごせたよ。――さよなら。」
「…由利!?」
痛い…なんてなかった。ただ、心地よい風に体を支えられながら、私は世界平和を願った。