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人間とは異なる者の長い長い悪夢
俺は、生まれた時から、孤独だった。親の顔も知らない。名前もない。不老不死なだけに、何十万年も生きた。やがて、人間が生まれ、文明が発達した。俺にも、友達ができた。初めて貰った名前。しかし、名前をくれた友人も、馬鹿げた戦争で皆、死んだ。戦争が終わり、人類は、再び歩き始める。人は幸福を求め、人間と類似するアンドロイドを造った。しかし、幸福を願うあまり、人類はアンドロイドに滅ぼされた。文明は壊され、アンドロイドもまた、消えた。自然だけが残り、再び俺は孤独になった。長い長い悪夢のような人生で、君と出会った。
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「君、名前は?」
金色の髪を揺らし、煙草に火を付けた女性は、セイラ・サラフェス、と名乗った。アンドロイドを連れている。
「名前………。名前は、無い」
貰った名前も忘れてしまった。ここ数百年、自らの死を願って生きてきた。自分の存在を消したかった。
「じゃあ、今から君はマフィラだ。マフィラ・スゥーデン」
「スゥーデン?」
俺が聞くと、女性は笑って、目を細める。懐かしがるように。
「遠い昔にあった国さ」
女性、セイラはそう答えた。
「そうかい。君は、こんなところで何をしてるのかね?」
「旅をしてる。こいつに、心を持たせる」
セイラはアンドロイドを指差す。無表情で、光のない瞳。
「自己紹介をして」
「サイナ・サラフェス」
感情の無い、その声は、俺にそっくりだと思った。
「君は、マフィラは何を?」
「死にたい」
俺が言うと、セイラは豪快に笑った。なんとなく不愉快だ。俺が眉をひそめると、セイラは髪をかきあげた。寂しそうな表情。
「じゃあ、私と一緒に来てくれ」
「なぜだ?」
「……寂しいっと言ったらダメかい?」
その言葉に、マフィラは返事を返さなかった。
「よしっ!じゃあ、次はあそこ行こうぜ!」
「なにか計画が?」
「そんなもんねぇよ」
「そうかい」
セイラとの旅は、楽しかった。たくさん笑って、怒って、泣いて。だから、あんな恐ろしい事になるとは思わなかった。
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突然、血飛沫が舞った。綺麗なその赤は、セイラの血だった。俺は、セイラを庇って、そこで一回死んだ。次に、目が覚めたら、セイラはいなかった。ただ、虚しい気持ちで、空っぽな心で、ひたすら歩いた。セイラは死んでしまった。その事実を、受け止めきれなかった。ただ、何年も何年も死んでは、生き返って、そして、セイラの事を思い出しては、悲しんで、馬鹿げた人生だ。自分の事を呪い、神を呪った。そんなことしても、セイラは戻らなかった。セイラを忘れても、忘れきれず、いつしか時間の感覚も忘れ、なぜ生きてるのかも忘れ、セイラも、忘れた。そんな、俺の前に、レイが現れた。セイラには似てない、のに、セイラと重なった。また、心を探そうと思った。そして、もう、あんな事にならないようにと思った。
入れ忘れ設定
※アンドロイドに弱肉強食の残酷な世界を見せると、本能が目覚め、人を殺すようになる。
本編どこで入れようか迷い、結局入れれなかった設定です。