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1 婚約破棄
みやめお #meo
「シェイが、婚約破棄したですって?」
私はショックで顔を青ざめていた。
今日の朝、父上から呼び出しを受け、「シェイとミリアーナの婚約破棄が決まった」と言われたのだ。
「ああ、そうだ」
「そんなはず……ないわ」
私は胸の前で小さく手を握る。
だって、あんなに優しくしてくれたじゃない。
いろいろなところに連れて行ってもらって、婚約指輪だってくれたじゃない!
「シェイも、了承しているの……?」
「シェイが決めた」
「そんなはずないわ!」
私は父上の言葉にかっとなり、声を荒げる。
「お嬢様」
隣で見ていたお付きのメイド、リリが私の背中をなでる。
「……確かに、シェイは望んでいなかったかもしれない」
「なら、なぜ!?」
「お嬢様」
ついついかっとなってしまう私をなだめながらリリは目を伏せる。
「……私たちがお前たちの婚約の解消を望んだからだ」
「……っ!」
どういうこと?!
ぐわんと頭に衝撃が走り立っていられなくなる。
そんな姿を見て父上はあざ笑うかのように付け足した。
「確かに、シェイはお前のことをよく愛していた」
「父上が決めたの? シェイのお義父様は!?」
「ああ、彼も望んでいた」
なんで、という言葉がのどにせまる。
でも、私はわかっていた。
私の家、フラーゼ家は最も王族に近い血筋の公爵家だった。
そして、シェイの家は二番目に近い血筋。
つまり、私の父上は私が王妃になることを望んでいて、シェイの父上は今の王家の長女、イザベラを婚約者にしようとしている。
「……そんなっ……!」
私は目の淵に涙を浮かべたまま父上の部屋を出た。