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黒いものは美しい。
純白?無垢?汚らわしい。
「はぁ、」
街を歩けば嫌でも視界に入ってくる。白い、いかにも「爽やかです」と言っているような人間が。
毎度毎度思うのだ。
――真っ黒に染め上げてしまいたい
と。
そんな気味の悪いことを考えている自分自身が誰よりも美しく感じる。
「ねぇキミ。」
「ぁ、はい。」
「今時間いいかい?」
「ナンパですか?(笑)」
「やだなぁ、私がそんなことするように見えるのかい」
「冗談です(笑)いいですよ、時間あるので。」
「それはよかった、じゃあ私に付いてきてくれ」
「はあ。」
「あぁーあ、もうこんなになってしまった。」
「かひゅっ、ひゅー、ひゅー」
「っふ、人間はこのくらい黒くなくては」
「っあ、ぐ」
「どうした人間」
「…っ、ぁ、あ(がくがく」
「喋れるわけがない、か。それじゃぁな」
「っ、まっ、て」
「はぁ、まるで蛆虫のようだ。汚い」
口元までコートのファスナーを上げる。
「もう少し面白い奴はいないものか、」
きらり、と人一倍白く輝く人間がいた。
(面白そうだ)
「ねぇキミ、今一人かい?」
「えぇ、散歩中です。貴方は?」
「私か、私もそんなところだ。」
「夕方の空は、本当にきれいで何度でも見たくなるんです」
何を言う汚い人間
「ほう、繊細な感じ方を持っているんだな」
「そうでもないですよ」
そうやって自分は謙虚だと優越感に浸っているのだろう
「少し時間良いかい?」
「え?あぁ、いいですよ」
「すまないな、散歩の邪魔をして」
「いえ、お気になさらないでください」
「いやぁ、キミさすがだね」
「っ、なに、がっ」
「黒くしがいがあるよ」
「何を、言ってるんですっ、か」
「ふふ、知らなくてもいいことが世の中には沢山あるんだよ、子羊ちゃん」
――――
美しい、黒ければ黒いほどに。
美しさってなんでしょう?
あの人は何をしたんでしょう?
あの人は女性でしょうか、男性でしょうか?
あなたは黒いですか?白いですか?
奇麗な白のあなた、次はあなたの元に来るかもしれませんね