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第肆話【疑】
ユヲネと会った日から、シラハは少しよそよそしくなった。普段ならノルエ様に言うが、今回のことはなんだか言い出せなかった。認めたくないけど、きっとノルエ様の事を少なからず疑ってるんだと思う。そして、この生活も、施設も。
「シラハ、大丈夫かい?」
ノルエ様の心配する声で、シラハは自分の朝食を食べる手が止まってることに気づく。
「大丈夫………です。」
ノルエ様の優しく、甘い蜜のような声も、今じゃ偽りの声にしか聞こえない。ノルエ様は絶対に気づいてる。もしかして、ノルエ様が主犯………?違う。あんなに優しいノルエ様がそんなことするわけない。シラハだってノルエ様に拾ってもらわれなきゃ死んでたもの。しかし、疑うのをやめることはできない。黙々と朝食を粗食し、食べきった。食器を片づけると、無意識にお祈りの場へと行った。
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「__シラハ?__シラハ?シラハ。」
肩を揺すられ、ぼんやりとしていた意識が鮮明になり、感覚が戻る。白黒だった世界が一気に色づいた。少しくらくらするし、頭痛がする。
「大丈夫かい?」
前にも聞かれたような気がする言葉を言われ、シラハは目の前の人物、ノルエ様へと目を向ける。
「大丈夫………です。」
前と同じように答え、立ち上がろうとしたら、ふらついて、座っていた椅子を倒してしまった。慌てて直し、謝る。
「自分の部屋に戻って、寝てるといいよ。」
ノルエ様に言われるがまま、頷いて自分の部屋へと戻った。それから、倒れるようにして、ベッドに横になると、そのまま寝てしまった。
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目を覚ましたのは六時だった。正確には、六時十三分。とっくに夕食の時間はすぎている。シラハは起き上がり、走って食堂へと向かった。
「遅れてすみません!」
シラハは普段めったにあげない大声で、謝った。すると、食堂にいるみんなはぽかんとした表情をして、やがて笑い出した。
「大丈夫だよ!それより、シラハ姉ちゃん、体調大丈夫?」
一人の少年に聞かれて、シラハは頭痛や目眩がしないことに気づいた。
「大丈夫。」
「本当?」
一人の少女が疑いのまなざしでシラハを見る。シラハは笑って、頷いた。少女の顔はぱぁーっと明るくなる。
「よかった!こっちこっち!」
少女は隣の席を空けてくれたが、シラハは迷わずにいつもの席へと座った。少女は不満げに唇を尖らせ、夕食を黙って食べ始めた。周りの子が少女を慰める。いつもの幸せそうな光景に、シラハは昨日、ユヲネに会ったことが夢のように思えた。シラハは今があることに感謝し、夕食を噛みしめた。
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夜、みんなが寝静まった頃に、シラハはユヲネに会いに、部屋を抜け出した。思えば、ここからだったのかも知れない。始まりは。
あとがき
歯車は回り始めている。
だんだんと壊れていく日常と認識。
歯車は止まらない__。
ここまで、読んでいただきありがとうございます!
上の意味深三文はほっといてくださいね。
どうでしたか?
次回も読んでくれると嬉しいです!