公開中
呪術俳優
フィリー
=修学旅行=
京都の夜。撮影で使い慣れたはずの古都も、仕事抜きで来れば最高の遊び場だ。老舗旅館の大広間には、修学旅行生さながらに布団を並べた東京校と京都校の男子メンバーが集まっていた。
「おい、東堂! お前の枕、デカすぎんだろ!」
虎杖悠仁が叫ぶ。東堂葵が持ち込んだのは、役作りのために特注したという「高田ちゃん等身大抱き枕」だった。
「悠仁、これは枕ではない。俺の魂(ソウル)だ! いくぞ、親友(ブラザー)! 枕投げ……展開!!」
東堂が全力で投げた抱き枕を、伏黒恵が「……邪魔だ」と無表情に叩き落とす。
その横では、狗巻棘が小声で「しゃけ(いけ)!」と叫びながら、パンダを盾にして枕を連射していた。
「おい、棘! 俺を遮蔽物にするな! 毛並みが乱れるだろ!」
そのカオスな状況を、部屋の隅で乙骨憂太が楽しそうに眺めている。
「平和だなぁ。劇中だと、僕らだいたい誰か死にかけてるか、泣いてるかですもんね」
「本当だよ」と答えるのは、隣でヘアバンドをして洗顔を終えた夏油傑だ。「私も、悟とこうして畳の上で並んで座るなんて、10年前の回想シーン以来だよ」
そこへ、襖がババーン!と景気よく開いた。
「はーい、みんな! 最強の講師が、最高級の宇治茶スイーツを持って登場だよ!」
目隠しを外し、完全オフモードの五条悟役のスターが、両手に大きな紙袋を提げて乱入してきた。
「五条先生! また勝手に予算超えた差し入れしたでしょ!」
虎杖が笑いながら駆け寄る。
宴もたけなわ、深夜2時。
部屋の明かりを消し、修学旅行の醍醐味「恋バナ……ではなく、役者バナ」が始まった。
「……なぁ、正直さ」
暗闇の中、虎杖がぽつりと呟いた。
「俺、宿儺に体を乗っ取られるシーンの撮影、前日は怖くて眠れないんだよね。自分の顔が自分じゃなくなるみたいで」
「わかるよ」と、隣の布団から伏黒が答える。「俺も、影から式神を出す時、たまに本当に何かが出てくるんじゃないかって指先が震えることがある」
「それは、君たちが本気でその役を生きてる証拠だよ」
五条役の声が、暗闇の中で優しく響く。
「僕も、この目隠しをしてる間は、世界が君たちとは違って見えてる。でも、目を開けてこうしてみんなの顔を見ると、あぁ、この作品の『最強』でいられて良かったなって思うんだ」
「……何、しんみりさせてるんだよ、悟」
夏油が少し照れくさそうに笑う。
「明日は金閣寺の前で全員集合の記念撮影だ。むくんだ顔で映るなよ、猿共」
「「「 言ったな、傑!! 」」」
再び枕が飛び交い、夜蛾学長(監督)にガチで怒られるまで、彼らの「青い春」は終わらなかった。
「いや〜、昨日の枕投げ、僕の『無下限』でも防げない数だったね」
翌朝、少し寝不足気味の五条が、お土産の八ツ橋を片手に京都駅を歩く姿が目撃されました。
男子部屋が「枕投げ事変」で夜蛾監督に正座させられていた頃。
女子部屋では、禪院真希・釘崎野薔薇・家入硝子の3人が、地元の高級宇治茶を飲みながら、しっとりとした時間を過ごしていました。
「……ねえ真希さん。ぶっちゃけ、アクションシーンで男子に負けるの、悔しくないですか?」
野薔薇が、パックをした顔で真剣に尋ねます。
「悔しいなんてレベルじゃないわよ。だから私は、乙骨や伏黒が1回振る間に3回振る練習をしてる。俳優学校の『禪院』の名は、伊達じゃないからね」
真希が木刀を磨きながら不敵に笑うと、硝子が「まーた仕事の話? 旅行くらい、ただの女の子に戻りなよ。ほら、この美容液、宿儺役の人が『これ裏梅が勧めてた最高級品だ』って差し入れてくれたわよ」と、和やかな空気に戻しました。
翌朝:鴨川沿いでの「奇跡のショット」
最終日の早朝。霧が立ち込める鴨川。
「おーい! 全員揃ったかー!」
五条悟が、朝から元気いっぱいに集合をかけます。寝不足で目をこする虎杖、髪が寝癖で跳ねている伏黒、そして昨夜のパックのおかげで肌がツヤツヤの野薔薇。
「はい、撮るよ! 三、二、一……領域展開!」
シャッターが切られた瞬間、ちょうど雲の間から朝日が差し込み、メンバー全員を黄金色に照らしました。
虎杖:満面の笑みで伏黒に肩を組む。
伏黒:鬱陶しそうにしながらも、少しだけ口角が上がっている。
釘崎:真希とモデル立ちでポーズ。
五条&夏油:かつての「青い春」を彷彿とさせる、背中合わせのピース。
宿儺&裏梅:なぜか観光客のふりをして、端っこでさりげなく写り込む。
この写真は後に、呪術廻戦 公式サイトで「修学旅行:最高の1枚」として公開され、あまりの尊さにサーバーがダウンする事態となりました。