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3rd collaboration.7
Lewis side
テニエルの後をついて行って、数分。
探偵社の建物から離れ、適当なビル群の間に入り、と。
全く、これじゃ僕がストーカーみたいじゃないか。
そんなことを考えながら頬を膨らませていると、テニエルが小さく口を動かしている。
「……“もういい”、ねぇ」
とりあえず周囲を気にしながらも、小走りで彼の元へ向かう。
そして、ずっと思っていた疑問を一つ。
「…これ、大丈夫なの?」
「ああ、...一応俺にも打算はある、だが今はまず...泉を気絶した状態にすること、それを達成しないことには話が始まらない」
それ、中々大変なことなんだよな。
何故なら相手はポートマフィア五大幹部が一人“泉桜月”。
気絶ぐらいなら僕がササッと終わらせられるけど──。
「俺がやる」
「いや、僕が」
「俺がやる」
「ダメ、僕がやる」
どちらにせよ、これ以上テニエルが傷つく必要はない。
僕も一枚噛むことを決めたんだから、これぐらい任せてもらいたいものだ。
気絶させるぐらいなら全く、とは云えないが震えはない。
人を殺すわけじゃないんだから、そんな風に──。
「…俺がやる」
──ここで僕は、やっとテニエルの顔をちゃんと見たのかもしれない。
ま、僕は全部終わってから責め立てる桜月ちやんのなだめ役でもしようかな。
「…わかったよ」
「何を考えてるんだよ」
「別にー?君だって色々隠し事してたわけなんだから、それを暴こうとする権利は君にないんだけれど...わかってるよね?」
ニコッ、と笑えばテニエルは何とも言えない顔を浮かべた。
「…にしても、桜月ちゃんのことだからきっと探偵社を飛び出した僕たちを追いかけて来るだろうと思っていたけれど…見当たらないね」
「意外とのんびり探偵社で待っていたりしないのか」
「だって桜月ちゃんだよ?」
すぐに飛び出すでしょ。
|ルイスとダニエル《信じた人達》があんな風に言い争ってたんだし。
「あとこの際だから聞くけど、何でさっき僕のこと下の名前で呼んだの?」
--- 「…待て、__俺は今回の件...泉とルイスが関わるのは反対だ、」 ---
「は、......は!?よ、呼び捨てにしてなんかなッ、無い!」
わぁ、凄い動揺だ。
「…呼び捨てとは云ってない…それに、証言者なら探偵社に複数人いるよ」
またニコッ、と笑う。
すると照れているのか、テニエルの顔が少し赤くなった。
「だ、誰をどう呼べばいいのかわかんないんだよ!!」
「意外と理由が可愛かったね」
「うるさい!!」
なんて、わあぎゃあと大人二人が小声で騒ぐというのも、この辺にしておこうか。
先程から会話をしながら歩いているが、視線は自然と泉に近い身長の女性に向く。
どうも、嫌な予感が拭い切れない。
探偵社から歩いて来て、また探偵社方向へとゆっくり歩く。
(探偵社の奴らに見つかったら色々面倒な事になりそうだ)
とか思っているんだろうな、この男は。
本人に問い掛けることも、歩みを止めることもなく。
着いた場所は或る路地裏。
「歩いてきた中ではここが最後のビルの列と路地裏、だ」
「…この世界も土地的には僕と同じ立地だし、此処は粗直線道路」
つまり、と続けた言葉は彼と綺麗に重なる。
--- 『|泉《桜月ちゃん》が消えた』 ---
拭いきれなかった嫌な予感はこれかぁ、と頭を抱えざるを得ない。
そして同時に見つけてしまった。
「…テニエル、これ」
しゃがみ込み、僕は見覚えのあるものを彼に手渡した。
「…この、チョーカー、」
「…不自然な所で切られているから、争ってはいないだろうけれど...態とだろうね、此処にこれを残したのも」
はぁ、と溜め息をつく僕に対して、テニエルは色々と考えているようだった。
切れたチョーカーは桜月ちゃんがいつも身につけていたもの。
マフィアらしい綺麗な黒をしていたが、少し汚れてしまっている。
「…既に、彼奴らに...捕まっている、ってことか?」
「…そう考えるのが、一番妥当だね」
自分で云って、頭が痛くなってきた。
出来れば否定したいが、不可能だ。
普通に考えてテニエルの元仲間ということは、一緒にいた時間が確実に僕や桜月ちゃんより長い。
頭がキレる人──太宰君とかならもう思考を読める。
(桜月ちゃんは無事だろうか)
心の中で、そう呟いた。
アリスの反応は勿論ない。
そもそも生きているかどうかも分からない状態だ。
色々な戦場を乗り越えてきたと思っているが、|生死不明《この状況》が一番精神的にキツイ。
無事を願ったって、結果が全てだ。
とりあえず、二人して黙っていても良いことはない。
「…どうす、る_____は、?」
話を切り出してくれたのはテニエルだった。
けれど、会話を遮るように浮遊感に襲われる。
「っテニエル、君まさか__!!」
テニエルの異能である"一筋の光"。
回避は間に合わず、落ちるしかない。
何がどうしてこうなった。
ハメられたのか、僕も。
あの喫茶店で云ったことを、此方の森さんと話したことを撤回したい。
本当に滑稽だ。
大莫迦者すぎて笑えもしない。
久しぶりに信用が全て崩れ去った気がする。
再会したら一回ぶん殴ってやろうかな。
『物騒ね』
「アリス……!」
『とりあえず着地はちゃんとしなさいよ? そして私の出番を増やしなさない』
「僕に云うなよ。今は僕が動いた方がいいんだから」
とりあえず、アリスの言う通り出口で何が起きても良いように備えるか。
---
No side
とある場所の、或る部屋の前。
ふぅ、とため息をつきながら出てきたハリエットを二人は出迎える。
「異能の調子はどう?」
「どうもこうも、別にいつも通りよ。花姫と云っても齢14の女の子なんだし」
「“元仲間”ってうるさかったし、強めに異能使ったわよね?」
「面倒くさいことはしないわ」
ねーぇ、と腕に抱きついてくるメアリーに、ハリエットは特に反応しなかった。
「フランシスは?」
「ちゃんと“行動”してるよ。異能を使ってるから此処にはいない」
「早くあの女と戦神をぶつけようよ! そしたらテニエルが戻ってくるのが前倒しになるし……」
「はぁ……メアリー、順序はちゃんと守らないと駄目よ」
「ふふっ♪ テニエル~♡」
鼻歌交じりに、まるで指揮者のように指先を動かすメアリー。
対して、ハリエットは先程よりも深いため息を吐いていた。
「まぁ、戦神もすぐ此方へやってくるよ」
「本当に?」
「勿論さ、メアリー。その為にフランシスは動いて貰ってるし、テニエルのことを僕はよく判っている」
「……戦神が関わることで予想から外れることもあると思うのだけれど」
「確かに戦神の伝説も結構凄いの多いよね~……でも、ジョージはテニエルの扱いが判ってるし……」
うーん、と悩むメアリーを見て、ジョージは微笑む。
「今回の|遊び《game》は前と違う。──絶対に花姫と戦神は戦ってもらわないとね」
微笑みはいつの間にか、真剣な表情へ変わっていた。
「誰が誰と戦うって?」
「……ようこそ、戦神。相変わらずの殺し嫌いかな」
テニエルをぶん殴るように、ルイスは拳を取っておく。
とりあえず構えたヴォーパルソードは簡単に避けられてしまった。
「異能剣“ヴォーパルソード”……!」
「あははっ! 本当に戦神が来たぁ!!」
「──1人足りない……?」
「うん、そうだよ。聞き出すかい?」
ルイスは多くの息を吸い込んで戦闘準備を整える。
「無理矢理にでも!」
お久しぶりのコラボじゃあァァァァ
いやぁ、No sideのところ考えたんやけどめちゃむずかった…!
でも良い感じに出来て満足(エッヘン)
桜月ちゃんsideも是非!!!!!
次回も楽しみ!!!!!!!!!!!
うぇい!!!!
それではまた。←唐突に冷静になる人