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𝕿𝖍𝖗𝖊𝖊 勘違いされましたよ
「お前、光流幼稚園通ってたんだな。」
「うん!」
朝、こいつの制服がどこの幼稚園のものなのか調べてみたら、あの有名な光流幼稚園だった。
幼少期の頃からエリートの子が通う幼稚園。こいつそんなに賢かったのか。
「名札つけて!」
エリートなのに名札は付けられないんだ…。
名札を受け取り、制服に付けようとしたら、ふと思い出した。
「そういえばお前の名前、知らなかった。『ひいらぎ いつか』って言うのか?」
俺はそう聞きながら名札を付けてやると、いつかはリビングに走ってボールペンと紙を取って何かを書き、こちらに持ってきた。
まだ汚らしい字だが、幼稚園にしては上手な気がする。
「|柊一佳《ひいらぎいつか》…お前親に良い名前貰ったな。」
幼稚園でもう漢字が書けるのか。やっぱエリートなんだな。
一佳に鞄を渡すと、少し下を向いて『しゅん…』という文字が浮かびそうな顔をして言った。
「ママは僕を他の子と違うと思ってるから。」
「?」
それっていい事じゃないのか?そう思いながら時計を見るともう出発する時間になっていた。
俺は一佳の忘れ物がないようさっと確認した後、自分の鞄を持ちながら一佳を背負い、玄関を出て走った。
「お兄ちゃん速ーい!」
後ろで一佳が燥いでいる。
「すぐ着くからなー。」
光流幼稚園は運よく学校の登校ルートだから、送ったらすぐに学校に行ける。
神過ぎる。
「行ってきまーす!」
「おー。」
幼稚園前で手を振り、学校に向かおうと振り向く。
すると、大分聞き覚えのある声がした。
「雅って弟居たんだな。知らなかったよ。」
ビクッとして声が聞こえる方を見ると、クラスメイトでいつも一緒に居る男、|天花寺 翔惺《てんげいじ かいせい》が鞄を高速回転させていた。
「翔惺、なんでお前が此処に居るんだよ。」
「登校ルートだから。」
普通かよっ。
翔惺は俺の隣に歩き始め、俺の肩を叩きながら言った。
「雅、弟居るなら早く教えてくれたらよかったのに。お前に兄が居るのは知ってたけどさぁ。」
「いや、あれは俺の弟じゃなく…」
「あーはいはい、『実は俺、ずっと隠していた弟が居るんだ☆』って言いたかったんだろ?」
ウゼェ。マジでこいつ後で殴りたい…。
「先輩、やっぱり勘違いされましたよ。」
放課後、俺は一佳を迎えに行き寝かせてから今は仕事にいる。
結局あの後クラスで色々大変な勘違い
俺が禮士先輩に事を告げると、すぐに笑いながらこう言った。
「やっぱそうだよねぇ。でもいいじゃん。実質弟みたいになった訳だし家が寂しくなくなったでしょ?」
「そうですが…兄が居るのと弟が居るのとは話が違いすぎます。」
「琉麗も雅と同じ思いをしてたかもよ?」
確かにりゅー兄はもっと大変な思いをしてるかもしれない。それは本当に申し訳ない。今から土下座でもして謝りたい。まぁ、りゅー兄にはもう会えないんだけど。
禮士先輩は「そうだ」と言いながら黒い手袋を嵌めなおして続ける。
「最初に勘違いをした第一号は誰だったの?」
「聞いてどうするんですか。」
「興味本位で。」
「…天花寺翔惺っていう最近ずっと一緒にいる人です。偶々幼稚園前で会いまして。」
そう言うと、、禮士先輩は仮面の上から顎に手を置いて上半身を左右にくねくねさせた。
「何してるんですか?そんな気持ち悪い動きして。」
訊くも、禮士先輩は「ん?ん~…?んー?」と不思議になっているだけ。
「……禮士先輩?」
すると、いつも通りの禮士先輩に戻り、
「やっぱり何でもない。」
と言いながら一枚資料を渡してきた。
「はい、これ。一週間後に実行。敵組織依頼だよ。」