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溶ける記憶と紡ぐ幸せ。 2.大切な
「っ…ま、って…しょうと…、」
目の前の光景に、思わず声が震える。
ぴくりともしない翔斗。息は…?心臓は、?
そんなことを考えている間に、車はどこかへ行ってしまっていた。
ひき逃げなのに、今の私にはそんな考えはなくて。
私が殺したんだ
私がいなければ
私が
わたしが…
いつのまにか、遠くからは救急車のサイレンが響いていた。
どうやら、近くにいた人が通報してくれたらしい。
「あなたがこの方の保護者ですか?」
「っいや、あのっ…わたしが、ころして…」
よっぽどパニクっていたのか、何を言っているのかさっぱりわからない。
「この方は、車に轢かれたんですよね?」
「は、い…いやでもあの、私を、あのかばって、…」
「はいなるほど。とりあえず至急、病院まで急ぎます」
「っ…はぃ、」
声が掠れていたのは、怖さのせいなのか。それとも…
悔しさの、せいなのか
今日、プリクラなんて誘わなかったら、こんなことなかったはず。
私のせいだ、
私が誘ったから。
私が彼女だったから。
私が、わたしが、
さっきから、「私が」という五文字しか頭にない。
目の前で担架に寝転んでいる翔斗に、やっぱり声なんて出ない。
このまま、死んじゃったらどうしよう。
救急隊員の人によると、まだ息はあるそうだ。
心臓も一応動いてるし、まっだ死んではないって。
でも…もし、
…あぁもう、こんな考えやめよう。
もっと、ポジティブな考えしよ…
うん、まだ死んでないもん、!
まだ、まだ、ね
だいじょうぶ。
そう自分に言い聞かせながら、私は救急車を降りた。
ぴー、ぴー
病室に機械音が鳴り響く。
今は、眠っている翔斗と私の二人だけ。
頭の中は、さっきと違って真っ白。
モニターは、たぶん心拍数を表してる。モニターに映る線?はさっきからちゃんと
動いてる。
つまり、まだ生きてるってこと。
そこだけは安心だった。
「…しょうと、
ごめん、」
そんな虚しい一言が病室に響いたとき、
「…、」
翔斗が、目を覚ました。
「っ、ぁ…しょう、と…」
「…?」
「うぁっ…よか、った…翔斗ぉ…(´;ω;`)」
「…ぇ、」
すいません…誰、ですか