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僕は記憶を取り戻すために一週間を何度も繰り返す#2
ファスナー
僕の前にはある少女が立っていた。その少女は僕の前に黒いトランクケースを置く。そしてどこかへ歩き去って行く。僕はそのトランクケースを開ける。そこには一枚の手紙と携帯食料、三本の刃がついたクローブレードが入っていた。その手紙には地図が張り付けてあった。地図の横に小さく文字が書いてある。あなたは一週間しか記憶を維持できません。なので今からはこの手紙に書いてある行動だけをとってください。この地図に印がしてある場所がありますね。そこに向かってください。そこに向かうことだけを考えてください。手紙にはこう書いてあった。僕には記憶が無かった。思い出したくても何も思い出せない。僕は地図をじっくり眺める。この手紙に従うのであれば僕は北へ進めばいいのだろう。僕はトランクケースに地図を片付ける。よく見るとトランクケースの中にすごく小さな破片のようなものが入っている。これはすごく大事なものだ。直感的にそう思った。そうだ、地図の通りに動く必要なんてない。僕にはこの破片が必要だ。それを探そう。僕はトランクケースを持ち上げ歩き始めた。地面をじっくり眺める。しかし何も落ちていない。歩き続けながらこんな心配事が脳裏によぎる。この破片はいくつあるのだろう。1週間で探しきることのできる量なのだろうか。僕の頭にはそのような不安が浮かんでいた。なぜだろうか。その心配をする必要なないような気がしてきた。僕には無限に時間がある。なんだかそんな気がしてきた。どこにもそんな根拠はないのに。そこでふと足を止める。なにやらすごく不気味な雰囲気の塔が立っている。僕はトランクケースを開けて、地図を確認する。しかし地図にはそんな塔のことなど載っていない。僕は自然にその塔に足を運んでいた。そして入り口をくぐる。そこはなんだか薄暗かった。死体が転がっている。まあそんな事は気にしてもしょうがない。僕は階段を探す。しかしどこを探しても階段は見つからない。僕は後ろを振り返る。そこには人?がいた。そいつは四足走行で僕に突っ込んでくる。こいつは敵だ。僕はトランクケースをそいつに投げつける。しかし軽々とかわされる。このままだと殺られる。僕は衝動的に足を振り上げていた。驚いた。僕が繰り出した蹴りは敵の顎に直撃していた。敵はそのまま後ろに吹っ飛ぶ。僕は走ってトランクケースのもとに向かいその中からクローブレードを取り出した。敵が迫ってくる。これを投げるか?いやそれだと前回の二の舞だ。前回?前回ってなんだ?まあいいや。そんな事を考えているうちに敵は僕に迫ってくる。これを腕にはめる時間は無い。それなら。僕はそれの手にはめる所を握りしめて目の前にそれを振り上げ、そして下ろす。しかしそれは敵には当たらず空を切る。僕はとっさに後ろに飛ぶ。敵は僕がもといた場所に唐辛子の先をとがらせたような爪を振り下ろしていた。僕はそいつが爪を振り下ろした隙に前進する。クローブレードを目の前に突き立てた。 グシャ 僕は敵の目を潰した。敵はまだ生きている。目を押さえてうずくまる敵。僕はそいつをクローブレードでメッタ刺しにした。 グシャグシャグシャ そいつは動かない。おそらく死んだのだろう。吐き気が込み上げてくる。込み上げてきたものを一気に吐き出す。血とゲロの混ざった臭いでまたもや吐く。しばらく吐き続けてだいぶ落ち着いた時、僕は改めてそいつの姿を眺める。これは人なのか。いやこれは人ではない。少し落ち着いて考えればすぐに分かること。あんな動きが人にできるはずが無い。だからそいつは人ではない。ならなんなのだろう。僕がまだ存在を知らない未確認生物とでもいうのだろうか。そいつを見ているとまた吐き気が込み上げてきたので一度離れることにした。そして前に進もうとすると目の前に階段があった。いつの間に現れたのだろうか。僕は階段を上っていく。上の階を探索しているとそこには死体が転がっていた。五体以上はある。そしてその死体はどれも同じ顔をしていた。そういえば入り口でもこんな顔の死体をみたような。僕は少し恐怖した。しかし今さら恐れてももう手遅れだ。進むしかない。僕は早歩きで階段を探す。今回は意外とあっさり階段が見つかった。僕は階段を上っていく。その先には僕が探していた破片と思われるものが落ちている。それに触れようと手を伸ばしたが触れる直前で手を止めた。これ、破片とは少し違うな。破片がどういうものかすら知らないのになぜか直感的にそう感じた。僕は手を引っ込める。そして周りを見渡す。そこにも大量の死体が転がっている。もちろん同じ顔だ。この塔全体からおかしな臭いがするがここの臭いは今までの場所と比べて圧倒だ。おそらく死体の量の影響だろう。僕は急いで階段を探す。この臭いをずっと嗅いでいるとどうにかなってしまいそうだ。しかしいっこうに階段は見つからない。その時、目の前に階段が現れた。僕は喜んだ。この臭いから逃れられることに対する喜びだ。上の階へ向かおうと足を一歩踏み出す。その時、僕の右腕に何かが刺さった。僕は反射的に身構える。周りを見渡すが僕以外誰もいない。急いで上の階へ逃げよう。僕はそう思い走り出した。つもりだった。僕の右足から赤い液体が垂れてきている。血だ。何者かに足を貫かれたのだ。足が痛い。腕が痛い。僕は気付いた。ここは化け物の巣だ。僕は迂闊にそのような危険な場所へ足を踏み込んでしまったのだ。前の敵が現れた時に気付くべきだった。逃げるべきだった。そんな後悔今さら遅い。足が痛くて動かない。腕が痛くて動かせない。辺りをもう一度見渡す。すると僕の視界に何かがうつりこんだ。そいつは小さかった。すごく小柄で痩せ細っていて握ったら潰れてしまいそうなくらい小さく痩せていた。そしてそいつは何かを取り出すような仕草を取る。しかし手には何も握られていない。その時、何かが僕の右目を貫いた。今度は左目を。 何も見えない。閉ざされた視界の中僕はとある事を悟った。それは死、英語ではdeathというらしい。僕の体に次から次へと何かが刺さる。腕や、足、腹に肩、体中から何かが垂れる感覚が感じられる。それは血だ。英語ではbloodというらしい。ってそれと似たようなくだりさっきやったわ〜つって。僕はこんなくだらない事を考えていた、わけではない。そして次の瞬間、何かが僕の体の真ん中辺りを貫いた。何本もその何かが僕の体の真ん中辺りに突き刺さる。音はしない。ジャガイモが柔らかくなったか確かめる時のように僕の体の真ん中辺りに何かが刺された。しかしジャガイモの柔らかさを確かめる時とこれでは明らかに相違点があった。それは何度も何度も突き刺すこと。それと刺しているものがジャガイモでなく心臓であること。