名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
公開中
一章
こはね「えっと…これからどうしようか?」
こはね「このままじっとしてても危ないと思うんだけど…」
咲希「そ、そうだね…」
寧々「じゃあ…先に、電子生徒手帳っていうのを確認したほうがいいかも」
寧々「校則も確認しないと…だし」
奏「そうだね…」
--- 1,生徒たちはこの学園内だけで共同生活を送りましょう ---
--- 2,夜10時から朝7時までを『夜時間』とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう ---
--- 3,就寝は、寄宿舎エリアに設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します ---
--- 4,希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。 ---
--- 5,学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。監視カメラの破壊を禁じます ---
--- 6,仲間の誰かを殺したクロは卒業となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません ---
--- 7,尚、校則は増えていく場合があります ---
雫「あの…この6番目ってどういうことかしら?」
遥「後半の、『他の生徒に知られてはいけない』ってところ?」
遥「私もちょっと気になったんだよね」
えむ「なんで知られたらだめなんだろ〜…?」
瑞希「とりあえず校則も分かったし、学園内を探索しない?」
みのり「そうだね!じゃあ早速みんなで…」
奏「………」
穂波「宵崎さん…大丈夫ですか?」
奏「ごめ、ん…だいじょ…」
杏「ちょ、やばくない!?」
奏「あ…………」
そこで私の意識は途切れた
大丈夫なわけがない
現実味がないことばかりで
なにもかもめちゃくちゃで
こんなの有り得るわけがない…
---
奏「う………」
奏「あれ…私……」
奏「ここ、は…?」
奏「?…壁に何か紙が…」
--- モノクマ学園長からお知らせ ---
--- 部屋の鍵には、ピッキング防止加工が施されています ---
--- 鍵の複製は困難な為、紛失しないようにしてください ---
--- 部屋にはシャワールームが完備されてますが、 ---
--- 夜時間は水が出ないので注意してください ---
--- また、女子の部屋のみ、シャワールームが施錠できるようになっています ---
--- 最後に、ささやかなプレゼントを用意しております ---
--- 女子生徒には女子らしく、裁縫セットを ---
--- 男子生徒には男子らしく、工具セットをご用意しました ---
--- 裁縫セットには人体急所マップも付いているので、女子のみなさんは針で一突きするのが効果的です ---
--- 男子の工具セットを使用する場合は、頭部への殴打が有効的かと思われます ---
--- ドントシンクだ!フィールだ!!レッツエンジョイだ!! ---
奏「………」
私は紙を丸め、ゴミ箱の中に投げ捨てた
奏「…っと、ここは…シャワールームみたい」
ガチャガチャガチャ…
奏「あれ…開かない…」
奏「鍵が掛かってるのかな」
奏「…部屋から出るドアもある…」
奏「ってことは、ここは寄宿舎エリアにある個室?」
奏「多分…気を失った私を誰かが運んでくれたんだろうな」
奏「…他のみんなはどうしてるんだろ…?」
奏「一旦、部屋から出てみようかな…」
---
扉を開けると、古い少女漫画のようなシチュエーションに遭遇した
ドンッ!
?「きゃっ…」
奏「っ…!いたた…す、すみませ…」
奏「って、まふゆ?」
まふゆ「奏…」
奏「ごめん…ちゃんとみてなくて…」
まふゆ「…私のほうこそ…ごめん」
奏「えっと…怪我はない?」
まふゆ「大袈裟…」
まふゆ「私、奏より丈夫だと思うけど。」
奏「ふふ、確かにそうだね」
まふゆ「…奏は大丈夫なの?」
まふゆ「突然気を失ってたから…」
奏「あ…そうだった…」
奏「私は大丈夫だよ。」
まふゆ「そっか、ならよかった」
奏「それよりまふゆはなんでここにいるの?」
まふゆ「奏を呼びにきた」
奏「…呼びに?」
まふゆ「そう。具合がいいなら、食堂に来てほしい」
奏「食堂?なんで…」
まふゆ「奏が倒れた後、結局別行動する事になったの」
まふゆ「その後みんなで集まって、調査結果を話し合うんだけど…」
奏「そうなんだね…」
奏「私はもう大丈夫だし、もちろん行くよ」
まふゆ「そう、じゃあ私は先に行ってるね」
---
奏「…ここが食堂か…」
まふゆ「清潔な食堂でよかったよね」
奏「そうだね…」
見た感じ…他のみんなはまだ来てないみたい…
奏「もう少し待ってよっか」
まふゆ「…そうだね」
ガチャッ…
司「おぉ!朝比奈さん!宵崎さん!」
まふゆ「あ、天馬さん、他のみんなは?」
司「もう少しでくるんじゃないか?…ほら、足音がするぞ」
天馬さんに続くように、次々と人が入ってきた
数分後には、ようやく全員が揃った
まふゆ「みんな揃ったみたいだね、それじゃあ、早速会議を始めようか」
まふゆ「えっと…調査の結果を共有してほしいな」
こはね「あ、ちょっといいですか?」
まふゆ「?どうしたの?」
こはね「その…神代さんがいないみたいだけど…」
奏「…ほんとだ、いない…」
杏「え?だれか、神代先輩見た人いないの?」
瑞希「…いないみたいだね…」
寧々「…とりあえず、調査報告だけする?」
寧々「そのうちに来るかもだし…」
司「む…そうだな…」
まふゆ「あ、状況を知らない奏のために、簡単に説明するね」
まふゆ「みんなは手分けして、学園内の調査をしてたんだ。」
まふゆ「東雲くんと志歩さん、天馬くんは単独行動。あと…神代さんもだね」
まふゆ「天馬さん、花里さん、白石さん、瑞希は一緒に行動してたみたいだよ」
まふゆ「あと、星乃さん、望月さん、桐谷さん、桃井さん、小豆沢さん、絵名が一緒で、」
まふゆ「日野森さん、青柳さん、鳳さん、草薙さんも一緒だったよ」
奏「なるほど…ありがとう。まふゆ。」
彰人「俺は、俺たちを閉じ込めた犯人について調べたんだ」
彰人「だけど、なにも分からなかった」
志歩「私は寄宿舎エリアを調べてたんだけど、」
志歩「特になにもなかったかな…ただ個室があるくらい」
えむ「あっ、その個室、完全防音みたいだったよ〜☆」
寧々「うん、隣の部屋で大声出しても全く聞こえなかった」
一歌「私達は、窓の鉄板について調べてたよ」
遥「どこかに外れるものがないか、片っ端から調べたんだけど…」
絵名「ぜんっぜんだめだった…」
愛莉「ビクともしなかったわね」
こはね「どこにも逃げ道がなかったの…」
穂波「ほんとに封鎖されてたよ…」
咲希「あたしたちは、外との連絡手段はないかなーって調べてたよ!」
瑞希「でも…なにもなかったね」
杏「あと、入口の鉄の塊をなんとかできないかなって試したんだけど…」
みのり「机とか椅子で叩いてもダメだったぁ…」
えむ「あっ、そーいえば!」
えむ「外との連絡手段とは関係ないんだけどね」
えむ「学校と寄宿舎の廊下に、2階に続く階段があったんだー!」
冬弥「だが…シャッターが閉じていて、入れなかったんだ」
雫「開けるためのスイッチもなかったわね…」
寧々「今は、建物の一階しか調べることができないってことだね」
えむ「でもでも!2階には外に出るための扉があるかもしれないよ!」
彰人「まだ可能性はあるってわけだな」
まふゆ「これで、みんなからの報告は終わったね」
まふゆ「じゃあ、私の調査結果を報告しようかな」
まふゆ「私は、この食堂について調べてたんだ」
まふゆ「奥の厨房にある冷蔵庫の中には、食材が沢山あったよ」
咲希「なるほどぉ…食料の心配はなさそうだね」
穂波「いくら豊富でも…何日もつんでしょうか…」
まふゆ「そこは心配ないよ。毎日自動で食糧が追加されるから」
まふゆ「…って、モノクマが言ってたよ」
絵名「え!?あんた、モノクマに会ったの?」
まふゆ「うん、冷蔵庫を調べてたら急に飛び出してきて、」
まふゆ「それだけ言ってまた帰っていったんだ」
まふゆ「ラジコンとは思えないスピードだったよ」
寧々「神出鬼没の動くぬいぐるみ兵器って…」
遥「怖いか怖くないか微妙な設定だね」
こはね「でも、大丈夫だったんですか…?」
こはね「クマに食べられそうになったり…襲われたりしませんでしたか?」
瑞希「く、喰われる!?そんな怖いことあるの!?」
杏「ないとは言い切れないはず…爆発するくらいだし…」
愛莉「いつ殺されてもおかしくないのよ…」
みのり「そうだよぉ…なんとかしないと…!」
そう言った花里さんの言葉を遮るようにして、声があがった
?「…ずいぶんと騒がしいねぇ」
類「余裕があるのかい?それとも、現実を受け入れてないだけ?」
司「類!今まで何をしていたんだ!」
寧々「会議、とっくに始まってるよ」
すると神代さんは、無言のまま、テーブルの上に1枚の紙を広げた
奏「え、これって…?」
類「希望ヶ峰学園の案内図みたいだよ」
奏「…希望ヶ峰学園の…案内図?」
咲希「これになんの意味があるの…?」
類「この見取り図を見る限り…」
類「今僕たちがいる建物は、希望ヶ峰学園の構図とまったく同じみたいだよ」
奏「つまり…ここは正真正銘、希望ヶ峰学園ってこと…?」
類「…構造だけ、だね」
類「でも、妙な改築は入ってるみたいだよ」
一歌「改築…ですか?」
類「詳しいことはまだ分からないね…」
類「僕が見つけた見取り図は、一階部分だけだから…」
志歩「ほんとに希望ヶ峰学園だったんだ…」
冬弥「連れ去られたわけではないみたいだな」
彰人「んな事あるかよ…」
彰人「こんなところが、国の将来を坦うエリートを育てる学園?」
彰人「ありえねぇだろ…」
瑞希「でもさ…ここが希望ヶ峰学園なら…他の生徒はなんでいないんだろ…」
えむ「も、もう暗い話はやめよう?ね…?」
奏「でも…鳳さんは心配じゃないの?」
奏「私達の…この状況」
えむ「それは…怖いに決まってるよぉ…」
まふゆ「でも、よかったね、」
まふゆ「みんなで手分けして調査した甲斐があって」
絵名「はぁ?あんた、話聞いてたの?」
絵名「逃げ道もないし、犯人だって分からないのに…」
まふゆ「え?でもこれでわかったでしょ?」
まふゆ「私たちが、逃げ道のない密室に閉じ込められたのが…紛れもない事実っていうことが」
まふゆのその言葉に…私たちは黙るしかなかった
認めたくない現実…でもそれが、私達の目の前の現実だった
絵名「ちょ、いわないでよ…せっかく忘れてたのに…」
こはね「……どうすればいいんだろ…」
類「簡単な事だよ。ここから出たければ、殺せばいいだけだ」
司「る、類…!?」
寧々「ちょっと…冗談でもやめてよ…」
奏「みんな…落ち着いて…」
まふゆ「そうだよ…もっと冷静に、これからを考えないと…」
彰人「…なんかいい方法ねぇのかよ…」
志歩「適応だよ、この生活に、適応すればいい」
雫「ここで暮らすことを…受け入れろってこと…?」
志歩「まぁ…そういうことだね」
一歌「あ…それなら、いい案があるよ」
穂波「いい案…?」
一歌「はい。閉じ込められてる以上、私たちはこの場所で夜を過ごさないといけないわけだけど…」
一歌「みなさん、夜時間のルールは知ってますよね?」
みのり「もちろん知ってるよ!」
一歌「この夜時間に関してなんですけど…もう一つルールを追加したいなって。」
奏「ルールの…追加って?」
一歌「夜時間の出歩きは禁止…はどうでしょうか」
一歌「校則では、夜時間の出歩きは禁止されてないですけど…」
一歌「ここに制限を設けるんです」
絵名「え、なんで?」
一歌「このままだと…私達は夜になるたびに怯える事になるのではないでしょうか…」
一歌「誰かが殺しにくるのではないか…と」
まふゆ「え…?」
類「…その防止策として、夜時間の行動に制限をかける…ということだね」
一歌「でも、校則と違って強制ではないので…皆さんの協力次第になるんですけど…」
咲希「…あたしは賛成だよ…いっちゃんの言う通りだし…」
司「俺も賛成だ!!」
一歌「皆さん賛成ですか…?よかった…」
まふゆ「…じゃあ、私はこれで失礼するね」
えむ「ほぇ?朝比奈せんぱい、どこ行くんですか?」
まふゆ「もうすぐ夜時間だから、シャワーでも浴びようかと思って」
まふゆ「それじゃあ、また明日」
瑞希「…適応力がすごいな…」
寧々「で?どうするの?1人いなくなったけど」
司「む…では、今日の会議はこれくらいとするか」
司「諸君、明日に備えるように!」
杏「ほ、ほんとにここに泊まるしかないの…?」
遥「でも仕方ないよ…寝ないと体力も削られるし…」
彰人「今日は…諦めるしかねぇか…」
穂波「でも、明日からはどうするんですか、?」
愛莉「また手分けして調査するしかないわね…」
絵名「じゃあ解散だね、はぁ…疲れた…」
---
奏「…本当に、この部屋に泊まるのか…」
奏「あ、そうだ…寝る前にもう一回、シャワールーム調べとかないと…」
奏「鍵が掛かってるだけ…だよね」
…………
奏「ん…やっぱり開かない…」
モノクマ「ブブー、鍵じゃないよ!」
奏「ひゃぁぁ!?」
モノクマ「リアクションが大袈裟だなぁ、まるで人を幽霊みたいに…」
モノクマ「いや、この場合はクマを幽霊みたいに…かな?」
奏「な、何しに来たの…」
モノクマ「宵崎奏さん!マジヤバだよ!マジカルなヤバさだよ!」
モノクマ「ウルトラマジカル!ヤバヤバアタック!!」
モノクマ「実は、君の部屋のシャワールームだけ、ドアの建て付けが悪いことが判明したんだ!」
奏「あ…だから開かなかったんだ…」
モノクマ「ま、鍵がつくのは女子のシャワールームだけだし、」
モノクマ「建て付けのせいとは思えないよねー!」
モノクマ「だって、男子の部屋に鍵が付いてても意味ないじゃん!」
モノクマ「いや…意味なくはないけど…ボクは薔薇とか百合に詳しくないんで…」
モノクマ「とにかく!そのドアを開けるにはちょっとしたコツが必要で、」
モノクマ「いい?ドアノブを捻りつつ、上に持ち上げるようにしながら開けるんだ」
モノクマ「ほら、やってみ?」
奏「えっと…ひねりつつ…持ち上げて…」
すると、ドアはあっさり開いた
モノクマ「うぷぷ…開いたね」
モノクマ「でもさぁ、笑えない?君のドアだけ建て付けが悪いなんて…」
奏「え…なんで…」
モノクマ「ま、ボクは伝えたいこと伝えたし、帰るね!」
奏「な、なんか…嵐みたいだったな…」
---
キーンコーンカーンコーン…
モノクマ「えー、校内放送です」
モノクマ「午後10時になりました」
モノクマ「ただいまより、夜時間とします」
モノクマ「まもなく食堂はドアをロックされますので、立ち入り禁止となりまーす」
モノクマ「ではでは、いい夢を…おやすみなさい…」
奏「…夜時間か…」
奏「たしか…外出は禁止の約束だったな…」
奏「うぅ…作業がしたい…」
奏「…今日はおとなしく寝るか…」
---
キーンコーンカーンコーン…
モノクマ「オマエラ、おはようございます!」
モノクマ「朝です!7時になりました!起床時間ですよ〜!」
モノクマ「今日も張り切っていきましょーう!」
奏「…ん、朝…?」
奏「窓がないから確かめようがないな…」
奏「今日は…どうしようかな」
奏「まふゆを誘って…相談してみようかな…」
奏「とりあえず、まふゆの部屋に行ってみよう…」
---
スタスタスタスタ…
司「む?おぉ!おはよう宵崎!!!」
奏「あ、天馬さん…おはよう」
朝なのに声が大きいな…
司「うむ、やはり朝の挨拶は気分がいいな!」
司「では、今日もお互い頑張ろう!!」
奏「そ、そうだね…」
元気なのはいい事だけど…う…耳が痛い…
---
奏「まふゆの部屋は…あ、私の隣なんだ」
ピンポーン…
まふゆ「はい…?」
まふゆ「あ…奏…?」
奏「おはよう、まふゆ」
奏「ごめんね、急に来ちゃって…」
まふゆ「…別に…でも、ちょうどよかった」
奏「…?」
まふゆ「ちょっとお願いがあって」
奏「お願いって…?」
まふゆ「私もこれから出かけようと思ってたの」
まふゆ「よかったら付き合ってくれない?」
奏「私は大丈夫だよ。でも、どこに行くの?」
まふゆ「…どこかに、護身用の武器がないかなって…」
奏「護身用…?」
まふゆ「…誰がいつ襲ってくるか分からないから」
まふゆ「何があっても、自分の身を守れるように…」
奏「だったら…体育館前のホールに使えそうなものがあったよ」
まふゆ「…じゃあ、行こう」
---
奏「えっと…この辺に…」
奏「…あった」
まふゆ「…刀…?」
奏「いや…模擬刀みたいだよ」
まふゆ「金箔が塗装されてる…」
奏「わっ…ちょっと触っただけで金箔が…」
まふゆ「ほんとだ…」
まふゆ「…これは護身用には向いてないかも…」
奏「そっか…ないよりマシだと思ったんだけど…」
まふゆ「だったら、奏が持って帰れば、?」
奏「…じゃあ、一応持っておこうかな…」
まふゆ「新聞紙に包んだほうがいいかも…」
奏「そうだね…」
まふゆ「ここには…もう護身用になるものはないみたい」
奏「でも、すぐには見つけなくていいと思うよ」
奏「もし…襲われたとしても…」
奏「その時は、私が守るから」
まふゆ「…奏が…?」
まふゆ「……ありがとう」
---
奏「…これからどうしよっか」
まふゆ「…もう少し、話したい」
奏「…!うん、いいよ」
まふゆ「えっと……」
まふゆ「…ごめん…私から誘ったのに、話すことが出てこない」
奏「ふふ、大丈夫だよ」
奏「話す事がなかったら、黙っててもいいし」
まふゆ「…でも私…ぼーっとすることに慣れてないの」
奏「あ…そう、だよね…まふゆはいつも忙しいし…」
まふゆ「………」
まふゆ「唐突…なんだけど、」
まふゆ「奏は…将来の夢って、ある?」
奏「…あるよ。」
奏「私は…誰かを救える曲をずっと作り続ける」
まふゆ「…今と、変わんないんだね」
奏「そうだね…まふゆは?なにか夢、ある?」
まふゆ「…私は…」
まふゆ「…お母さんの、期待に応えたい…」
まふゆ「あと…辛い想いをしてる人に…寄り添いたい」
奏「…素敵な夢だね」
まふゆ「…私は…夢を叶えるために…今までなんでもしてきた」
まふゆ「嫌なことも含めて、なんでも…」
奏「…えっ?」
まふゆ「夢を追い続ければいつか叶う…」
まふゆ「でも…そのためには、もっと夢を見なくちゃいけない。」
まふゆ「たとえそれが…悪夢であろうと…」
奏「まふゆ…」
まふゆ「…でもお母さんは…いつも私のことを気にかけてくれて…」
まふゆ「私の将来だって…考えてくれてるから…」
まふゆ「だから…」
まふゆ「こんなところに…いられない…」
奏「…」
まふゆ「希望ヶ峰学園に招待されて…入学したのも…」
まふゆ「卒業すれば、成功できるって言われてたから…」
まふゆ「もっとたくさん勉強して…お母さんの期待に応えないといけないのに…」
まふゆ「なのに…」
手が…震えてる…
まふゆ「閉じ込められて…出られないなんて…」
まふゆ「きっと、お母さんも待ってるのに…」
奏「まふ、ゆ…」
まふゆ「私には…!こんなことしてる暇…ないのに…!!」
奏「まふゆ…落ち着いて…!」
まふゆ「…ごめん…」
まふゆ「急に…愚痴って…」
奏「ううん、私は全然」
まふゆ「………」
奏「…あのさ…まふゆ」
奏「…ところで、お腹すかない、?」
奏「部屋に戻る前に、食堂でご飯食べて行くとか…どう?」
まふゆ「…だったら、私が作る」
奏「え、ほんとに?何が得意なの?」
まふゆ「ラー油」
奏「調味料…!?」
まふゆ「…冗談だよ」
まふゆ「それじゃあ、行こう」
その後、まふゆと食堂で食事をして、
私達は、それぞれの個室へ戻っていった
奏「…この部屋に金色の模擬刀は合わないな…」
奏「違和感しかない…」
キーンコーンカーンコーン…
奏「…夜時間か…」
奏「明日こそ…手掛かりを掴んでみせる…」
---
キーンコーンカーンコーン…
奏「…朝だ…」
奏「ちょっと外に出てみようかな…」
ガチャッ
その後、天馬くん、白石さんと一緒に過ごした
少し仲良くなれたみたいだったから、ちょっと安心した
キーンコーンカーンコーン…
奏「ん…3日目もおわり、?」
奏「…何もすることないし…寝ようかな…」
---
キーンコーンカーンコーン…
奏「う…今日もあんまり寝れなかったな…」
ピンポーン…
奏「?だれだろ…」
ガチャッ
司「おはよう!宵崎!!」
奏「天馬さん…?おはよう…」
司「昨日、少々考え事をしていてな、」
司「俺たちはもっと、協力するべきだと…」
司「だから、これから毎朝、起床後に…」
司「みんなで朝食を共にしようと思う!!」
司「今日からだ!早速、食堂にきてくれ!」
奏「あ…う、うん。分かった」
司「では、俺は失礼するぞ!」
ガチャッ…
奏「えっと…食堂に行けばいいんだよね」
---
司「よし!全員揃ったな!」
司「早速、朝食を始めるとしよう!」
彰人「俺断ったんすけど…」
司「さっきも話したが、」
司「ここから出るためには、俺らの協力が大事だと思うんだ!!」
司「その第一歩として、朝食会を開催する!!!」
司「これからは起床後、この食堂に集まるように!頼んだぞ!」
えむ「あいあいさー!!」
司「では、早速朝食を頂こう!!」
寧々「…朝から暑苦し…」
---
瑞希「関係ないんだけどさー、」
瑞希「あれから、何か情報を得た人はいないの?」
瑞希「えぇぇ!?なんも進展なし!?」
奏「うん…ごめん…」
瑞希「いや…謝ることじゃないよ!」
瑞希「ボクも何も見つけてないし…」
志歩「でも、犯人は決まってるよ」
志歩「よっぽど異常で、猟奇的なやつってことがね」
彰人「で?ほんとに手掛かりないのか??」
こはね「あの…」
こはね「ひょっとして犯人って…例の殺人鬼だったり…しないよね、?」
愛莉「例の殺人鬼…?」
こはね「う、うん…みんな、ジェノサイダー翔って知ってる?」
杏「それって…ネットとかテレビで話題になってる連続殺人犯の…!?」
類「現場には必ず被害者本人の血で、チミドロフィーバーの血文字を残す…」
類「警察もその足取りを掴めていない状態なんだよね」
絵名「それが話題になったときに、ネットでつけられたあだ名が…」
絵名「ジェノサイダー翔…」
冬弥「噂では…被害者は数千人にも及ぶとか…」
えむ「みんなよく知ってるね…あたしは全然知らなかったよぉ…」
咲希「でもそれって、都市伝説でしょ…?」
みのり「せ、せいぜい数十人とか…それでも異常だけど…」
えむ「……………」
遥「そんな殺人鬼なら…こんなことしてもおかしくないね」
こはね「で、でも、ただの推理だから…」
瑞希「だ、大丈夫だって!きっと…大丈夫だよ…!」
瑞希「もうすぐ助けも来るはず!」
絵名「は?助け?」
瑞希「だって…ボクたちがここに閉じ込められてから、もう数日は経つんだよ?」
瑞希「そろそろ警察が動き出す頃だよ…!」
?「…アハハハハハハハハハハ!」
モノクマ「警察だって!警察なんかあてにしてるの?」
寧々「!モノクマ…!」
モノクマ「オマエラ…警察がどんな役割か知ってる?」
モノクマ「引き立て役だよ!悪の組織や悪役やダークヒーローのね!」
モノクマ「あいつらがやられることで、悪役が引き立てられんの」
モノクマ「そんな安直な役割しかない警察をあてにするなど…」
モノクマ「お約束と言えども、どうかと思いますぞ?」
モノクマ「…ていうかさ、そんなに出たいなら殺しちゃえばいいじゃーん!」
彰人「つーか、何の用だよ…連続殺人鬼め…!」
モノクマ「レンゾクサツジンキー?変な名前!ドイツ人?」
彰人「おめぇの正体は分かってんだよ…!」
モノクマ「はぁ…無視無視」
彰人「チッ…無視すんなよ!!」
モノクマ「はいはい、それでは話を戻して…」
モノクマ「学園生活が始まって数日経ったわけですが…」
モノクマ「まだ誰かを殺すような奴は現れないよね!」
モノクマ「ボク的にはちょっと退屈です〜!」
奏「な、何を言われたって、私達は人を殺したりなんか…」
モノクマ「あわかった!ピコーン!閃いたのだ!」
モノクマ「なんで殺人が起きないのかと思ったら…」
モノクマ「そっか!足りないものが1つあったね!!」
奏「足りない、もの…?」
モノクマ「ずばり!動機だよ!」
モノクマ「うぷぷ…だったら簡単!ボクがみんなに動機を与えればいいんだ!」
一歌「動機…?どういう意味…?」
モノクマ「ところでー、オマエラに見せたいものがあるんだ!」
一歌「話変えられた…」
モノクマ「オマエラに見せたいのは…」
モノクマ「ちょっとした映像だよ…」
モノクマ「あ、違うよ?18禁とかそーゆーのじゃないよ?」
モノクマ「ほんとに、そういうのじゃないんだから!」
モノクマ「学園の外の映像なんだってば!」
穂波「え…学園の外…?」
雫「それって、一体なんの…」
モノクマ「へへっ、気が短けぇや!」
モノクマ「それは見てからのお楽しみですよぉ!」
類「…だったら、すぐに確認してみようか」
類「でも…その前にきかせてくれるかい?」
類「貴方は何者?どうしてこんなことするんだい?」
類「貴方は僕達に…何をさせたいのかい?」
モノクマ「ボクがオマエラに、させたいこと?」
モノクマ「あぁ、それはね」
--- 絶望、それだけだよ ---
モノクマ「後のことを知りたければ、自分の手で突き止めてね!」
モノクマ「この学園の謎…知りたければ好きにして。ボクは止めないから」
モノクマ「じゃ、ボクは楽しく見させてもらうね!」
絵名「……………」
類「…学園の外の映像って…なんのことだろうね」
一歌「そうですね…」
奏「あ…わ、私調べに行こうか?」
寧々「え、ほんと?」
まふゆ「だったら私も行くよ。1人だと危ないし…」
瑞希「おっけー!じゃあ2人とも、よろしくねー!」
えむ「何かあったらすぐに呼んでくださいっ!」
えむ「すぐに駆けつけますので!」
まふゆ「うん。ありがとう」
---
まふゆ「それで…モノクマが言ってた『ある場所』ってどこなんだろう…」
奏「ここ、じゃないかな?」
奏「視聴覚室って書いてあるよ」
まふゆ「じゃあ、入ってみよう」
---
奏「ん…?ダンボールの中に何か…」
まふゆ「DVD…?みんなの名前が書いてある…」
奏「多分、『ある映像』ってこれのことだね」
まふゆ「私、みんなを呼んでくる」
奏「うん、ありがとう」
奏「…ここに…なにが映ってるんだろ…」
奏「…ちょっと確認してみようかな」
私は専用のデッキに、DVDを挿入した
奏「あっ…⁉︎」
そのモニターに映し出されたのは、
私の、お父さんの姿だった
奏「お父さ、ん…?なんで…」
奏「病院に、いるはずなのに…」
奏の父「奏、希望ヶ峰学園への入学、おめでとう」
奏の父「自分の娘として…誇りに思うよ。」
奏の父「無理はしすぎないで、な」
今置かれてる状況が、
普通の学園生活だったなら、
どれだけ嬉しかったのだろう
…だけど、
今私が置かれてる状況は、ただの学園生活ではない
だから…この映像も、このまま終わるはずない…
そして、
そんな私の嫌な予感は、
見事に的中してしまった
奏「…!?」
今度は、声を上げることもできなかった
ただ声を…失った。
奏「お父さん…?どうした、の?」
奏「なんで……お父さんが、倒れてるの…?」
そんな疑問に答えるかのようなタイミングで、
モニターから流れてくる声…
聞き覚えのある、あの声…
モノクマ「希望ヶ峰学園に入学した宵崎奏さん…」
モノクマ「そんな彼女を応援していた1人のお父様…」
モノクマ「どうやら、そのお父様の身に、何かあったみたいですね?」
モノクマ「ではここで問題です!」
モノクマ「お父様の身に、一体何があったのでしょうか!」
--- 正解発表は『卒業』のあとで! ---
奏「ど、どういうこと、!?」
奏「なんでお父さんが…!」
奏「病態が悪化した…?」
奏「それとも…もうこの世には…」
次に私の頭の中に出てきた考えは、
当然と言えば当然の考えだった
奏「出なきゃ…」
奏「今すぐ…ここから出なきゃ…!」
?「奏、?」
まふゆ「どうしたの…?」
気づけば視聴覚室には、私に困惑の眼差しを向けているみんながいた
穂波「宵崎さん…?なにかありましたか…?」
奏「…そこ、の…ダンボールの中、に…」
彰人「モノクマが言ってたのって、これの事か?」
司「な、なにがあるというのだ…」
みんなは、自分のDVDを手に取ると、
すぐにモニターへと走った
そして…
愛莉「…!?な、なによ、これ…」
こはね「これ、本物じゃないよね…ねつ造だよね…?」
杏「ほ、本物なわけないよ…!」
絵名「もう、いや…なんなのこれ…!」
…みんな、私と同じような映像を見せられたんだ…
そんな中、1人だけ冷静な人がいた
瑞希「…なるほど、これが『動機』ね…」
奏「瑞希は、怖くないの…?」
瑞希「…わかんない、かな」
瑞希「というか…こんなこと起こってるなら、先に警察が動いてると思うから、大丈夫だと思う…多分。」
司「お、おまえら、下手な考えはよせ、それこそ、黒幕の思う壺だぞ!」
寧々「そういいつつ…私たちが油断してる隙に…」
司「なんでそうなる!やるわけないだろう!」
遥「ちょっとまって…そうやって争っても意味ないよ…」
みのり「そうだよね!冷静にならないと…」
咲希「じゃ、じゃあさ…お互いに話し合ってみない?」
志歩「自分がどんな映像を見せられたのかを?」
咲希「うん…話したほうが、楽になるかなって…」
咲希「それに…ちょっと気になるし…」
…たしかに、気にならないと言ったら嘘になる…
奏「ねぇ、まふゆ、?」
まふゆ「……」
奏「…まふゆは…どんな映像を見せられたの?」
まふゆ「………」
絵名「ちょっと…なにか言ったら、?」
奏「まふ、ゆ?」
私は、まふゆの肩にそっと手を___
まふゆ「やめて!!!」
私の手を振り解くと同時に、
まふゆは走り出していた
えむ「あ、朝比奈せんぱい!?」
奏「!…私、捜しに行ってくる…!」
雫「私も…心配だわ…」
絵名「…ごめん、私はパス」
みんな、バラバラだ…
で、でも…今はそんなこと言ってる場合じゃない…
まふゆを捜しにいかないと…!
---
奏「…ここは…教室か…」
ガチャッ
奏「!まふゆ…!」
まふゆ「………」
奏「まふゆ…大丈夫、?」
まふゆ「…大丈夫なわけ、ない…」
まふゆ「私が…なにをしたって言うの…」
まふゆ「…出して…!今すぐここから出してよ…!!」
奏「まふゆ!落ち着いて…!」
まふゆ「っ…」
奏「気持ちはわかるよ…私だって、家族の安全を確かめたい…」
奏「でも…まずは冷静にならないと…!」
奏「じゃないと…全部黒幕の思う壺…」
奏「…まふゆ、冷静に…なろ?」
奏「冷静に、ならなきゃ…」
それは…自分に言い聞かせるような言葉だった
冷静になれ、冷静に…
奏「みんなで協力すれば…絶対にここから出られるよ…」
まふゆ「もし…逃げ道もなにもなくて…助けも来なかったら…?」
奏「その時は…」
奏「私が、まふゆをここから出す…」
奏「だから___」
その時、
一瞬、何が起きたか自分でも分からなかった
まふゆが私に抱きついて、こう言った
奏「まふ、ゆ…?」
まふゆ「お願い…奏…」
まふゆ「助けて…」
その時…まふゆの声は震えていた
奏「…まふゆ…」
まふゆ「さっきの言葉…信じていいの、?」
奏「え、?」
まふゆ「奏が…私をここから出してくれるって言葉…」
奏「もちろんだよ」
まふゆ「信じられるのは…奏だけなの…」
まふゆ「だから…」
まふゆ「奏は…何があっても、ずっと私の味方でいて…」
奏「…当たり前だよ。何があっても、味方でいる」
まふゆ「…ありがとう。」
モノクマ「…たってますねぇ!」
奏「ひゃっ!?」
モノクマ「宵崎さん…たってますね…」
奏「た、たってる…?」
モノクマ「言わずと知れた…」
モノクマ「フラグですよ!」
奏「…な、なにしにきたの…」
奏「向こうにいってて…」
モノクマ「やだやだぁ!ボクもまぜて〜!」
奏「だったら聞かせて…さっきの映像って…」
モノクマ「やーだねっ!」
奏「…!」
私はモノクマ目掛けて全力で殴ろうとした
でも…全力の空振りをした
奏「う…腕が痛い…」
まふゆ「奏、大丈夫…?」
モノクマ「今のはボクが避けてなかったら校則違反だよ。」
モノクマ「でも足りない!スピードも疾走感も情熱も大胆さも何もかも足りないー!」
奏「………」
まふゆ「…なんだったんだろ…今の…」
奏「…ただの嫌がらせ…だよ」
まふゆ「…とりあえず…帰ろう」
奏「そうだね…」
---
奏「まふゆ、ちょっと休んでたほうがいいよ…」
奏「顔色も悪いし…」
まふゆ「…ごめん…ありがとう」
その後、まふゆは自分の部屋へと戻り、
私は他のみんなに、まふゆの無事を知らせた後、
一旦自分の部屋に戻ることにした
---
…問題だらけだな…
何が1番の問題なんだろう…
ここから出られないこと?
さっき見せられたあの映像?
モノクマ?
黒幕の目的?
それとも…
私達自身…?
奏「……ここから出たい…」
奏「でも…殺せるわけない…」
奏「…みんなも…そうなのかな」
---
ぴーんぽーん…
奏「…ん、?」
目を開けた私は、
まず最初に時計を見た
…10時近く
奏「いつのまに寝ちゃってたんだろ…」
奏「もうすぐ夜時間だけど…」
奏「だれか、来た?」
---
ガチャッ
まふゆ「…ごめん…奏…」
奏「ま、まふゆ…!?」
奏「まふゆ?…どうしたの?」
そこで私は、気がついた
まふゆの体が…震えていることに
奏「…何かあったの…?」
まふゆ「…ちょっと…変なことがあって…」
奏「変なこと…?」
まふゆ「さっき、部屋にいたら…」
まふゆ「急にドアがガタガタ揺れて…」
まふゆ「誰かが無理やり…ドアを開けようとしてるみたい、で…」
奏「!?…鍵は掛けてた…?」
まふゆ「うん…だから、開きはしなかった」
まふゆ「でも…だんだん揺れが酷くなって…」
奏「それで…どうしたの…?」
まふゆ「…しばらくしたら、収まった…」
まふゆ「後から、ドアを開けて確認してみたけど…」
奏「そんな…」
まふゆ「みんなを疑いたくないけど…怖くて…」
奏「夜時間は外出禁止だし…大丈夫だと思うけど…」
まふゆ「でもそれって…ただの口約束、だから…」
奏「それなら…今夜は、私の部屋に泊まる?」
奏「それなら怖くないし…」
まふゆ「…でも…一つのベッドで二人は…狭いんじゃない?」
奏「あ…た、たしかに…」
まふゆ「…奏がよかったらなんだけど…」
まふゆ「今夜だけ、部屋を交換してほしい…」
奏「部屋を…交換…?」
奏「…うん。私は大丈夫だよ。」
キーンコーンカーンコーン…
まふゆ「あ…夜時間になった…」
奏「じゃあ、部屋を交換するってことでいいね」
奏「あ…部屋交換するなら、鍵も交換しないと…」
まふゆ「うん。そうだね」
まふゆ「…奏…気をつけてね」
まふゆ「誰か来ても、絶対ドアを開けないように」
奏「ふふっ、わかってるよ。」
奏「まふゆも…気をつけてね」
まふゆ「うん…奏ってわかってても開けない。」
奏「…あっ、念の為言っておくけど…」
奏「私の部屋のシャワールーム、ドアの建て付けが悪いんだ」
奏「だから、シャワールームのドアを開けるときは、」
奏「ドアノブを捻りつつ、上に持ち上げるようにしてドアを押し開けてね。」
奏「そうすれば、簡単に開くから。」
まふゆ「…でも、夜時間ってシャワーの水は出ないよ」
奏「あ…そ、そっか…忘れてた…」
まふゆ「…朝起きた時に使うかもしれないから…ありがとう」
奏「そっか…じゃあ、私はそろそろ行くね」
奏「まふゆ。また明日…」
まふゆ「うん…おやすみ。また、明日…」
---
廊下へ出た私は、すぐにあたりを見回した
人の気配は…全くない
ある程度人がいないか確認したら、
私はまふゆの部屋へと入った。
---
奏「…内装は変わらないんだな…」
奏「ん…ゴミ箱に何か…」
奏「…これって…視聴覚室にあった…DVD?」
奏「そういえば、どんな映像をみたのか…聞けてなかったな…」
奏「……待つしか、ないか…」
奏「疲れた…今日はもう寝よう…」
---
キーンコーンカーンコーン…
奏「ん…ふわぁ…」
奏「…そういえば…朝食はみんなでって話だったよね…」
奏「行かないと…」
---
食堂に着くと、すでに数人が集まっていた
司「おぉ!宵崎!聞いてくれ!今朝は俺が1番だったぞ!」
遥「天馬さん、朝から元気だね」
穂波「ふふ…おはようございます。宵崎さん。」
こはね「みんな集まるのが早いね…おはよう。」
彰人「ん、はよ」
冬弥「みなさん、お早いですね。」
最初から揃っている人達は、
『規則正しい高校生』に分類される面々。
で、少し遅れてくるのが…
一歌「おはようございます。みなさん。」
志歩「…おはよ」
愛莉「あら、少し遅れちゃったかしら?」
雫「みんな早いのね〜」
杏「おっはよー!」
えむ「おはようわんだほーい!ごめんねー!元気いっぱいわんだほいしてたら遅れちゃった〜!」
一歌「元気いっぱいわんだほい…?」
少しルーズな時間感覚の面々。
大半の高校生がこの部類に入ると思う
で、ようやく来るのが…
咲希「ごめんなさーい!ヘアセットに時間かかっちゃって…」
みのり「う〜…寝坊しちゃったぁ…」
寧々「…眠い…おはよ…」
絵名「ちょっと彰人!なんで起こしに来てくれなかったわけ!?」
彰人「はぁ!?自分で起きろよ!」
瑞希「みんなおはよー!…ふわぁ…ねむたーい…」
…これで全員揃った…はずなんだけど、
司「む…まだ揃っていないな…」
こはね「神代さんと…朝比奈先輩が来てないですね…」
神代さんはともかく…
まふゆは本来…規則正しい高校生に分類されるはず…
それなのに…まだ来てないなんて…
類「おや、どうしたんだい?」
えむ「あ、類くん!」
瑞希「類〜!まふゆ見なかった〜?」
類「見てないねぇ…」
みのり「朝食の約束、忘れてるのかなぁ…?」
一歌「しっかり者の…朝比奈先輩が、?」
奏「…!…私、まふゆの様子見てくる…!」
絵名「え、奏!?」
私はすぐに、食堂を後にした…
---
私が向かった先は、
まふゆと一晩だけ交換した、自分の部屋。
だけど、その部屋は…
一晩のうちに…すっかり様変わりしていた
奏「なに…これ…!?」
奏「…これは…私が護身用に持って帰ってきた…金箔の模擬刀…?」
奏「抜き身の状態になってる…」
奏「金箔もところどころ剥がれてるし…」
奏「…っそれより…まふゆは…!?」
そして私は、
シャワールームの中を覗き込んだ
私は…
シャワールーム…の、中…を…
……ノ………ゾキ…………コ………
………………
自分が叫び声を上げていると気づくまでに、
しばらくの時間が必要だった。
目の前の光景は、私の脳裏にしっかりと焼きつき………
そして………………
---
目を覚ますと、広い天井があった
なんとなく、見覚えのある天井…
体を起こすと、今度は顔が見えた。
なんとなく、見覚えのある顔……
奏「……………」
穂波「!宵崎さん!大丈夫ですか!?」
奏「あ…れ…?」
瑞希「奏、気失ってたんだよ。」
絵名「で、私たちが運んで来たの。」
愛莉「……あんなことがあったのよ…無理もないわ。」
奏「あんな…こと…?」
奏「!?う…ッ!」
穂波「宵崎さん…大丈夫ですか……?」
奏「……夢じゃ…ない……?」
奏「あれは……夢じゃ、ない…?」
類「…現実…だよ」
類「朝比奈さんは……死んだ」
奏「ッ…!」
次の瞬間、私は飛び起き、
走り出していた
類「どこにいくんだい?」
奏「…まふゆを…!まふゆの…ことを……!!」
類「……散々確かめたよ。」
類「朝比奈さんは、間違いなく死んでいた」
奏「やだ……やだやだやだやだ…ッ!!」
みのり「か、奏ちゃん!落ち着いて…!」
奏「…こんな、ときに……」
奏「なんでこんなときに…体育館に集まってるの…ッ」
奏「仲間が…!まふゆ、が…!」
奏「死んだのに…!」
死んだ
その言葉を発したとき、
私はようやく実感した
まふゆは……死んでしまった……
奏「…じゃあなんで、こんなところにいるの…?」
奏「なんで体育館に集まってるの…?まふゆが…死んじゃったのに…ッ」
瑞希「……ボク達だって…ここにいることは本意じゃないよ…」
奏「だったら……なんで……」
咲希「……モノクマだよ…あいつが…集まれって……」
司「オレたちも反論したぞ……」
司「朝比奈が大変なことになったのに…何を言っているんだと…」
司「だが……」
瑞希「ボクがみんなに提案したんだ」
瑞希「今は、あいつに従おうって」
瑞希「無闇に逆らうと…危険だから…」
瑞希「これ以上、犠牲者を増やさないために……」
奏「…なんであんなやつに従わないといけないの……」
奏「まふゆを殺したのも…あいつに決まって…」
モノクマ「ボクはそんなことしないよ!それだけは信じて!」
愛莉「!!」
彰人「出やがったな……」
モノクマ「校則違反をしない限り、ボクは自ら手を出しません!」
モノクマ「ボクってね、クマ1倍ルールにはうるさいって、サファリパークでも有名だったんだからねっ!」
寧々「だ、だったら、だれが朝比奈さんを……」
モノクマ「わかってるくせにっ!」
モノクマ「朝比奈まふゆを殺したのは、オマエラの誰かじゃーん!」
その言葉に、私たちは完全に沈黙した
まふゆを殺したのは……私たちの誰か……??
モノクマ「あれあれ?どうしたの?」
モノクマ「ハトがガトリングガン食らったような顔してるよー?」
モノクマ「やだなぁ……最初に言ったでしょ?」
モノクマ「オマエラの誰かが、ここから卒業するために、」
モノクマ「朝比奈さんを殺しただけ、だよ」
モノクマ「別に殺すのは悪いことじゃないよ!」
モノクマ「だって、それがルールだからねっ!」
絵名「嘘…だよね…?」
絵名「嘘に決まってる…!あいつが…!あいつがまふゆを…!」
モノクマ「いいや?殺したのはオマエラの誰かだよ」
モノクマ「それは…当の本人がよーく知ってるはずだけどね」
奏「……」
私は思わず、みんなの顔を見回していた
それは、他のみんなも同じだった
恐怖、混乱、疑惑
これらが入り混じった視線が、
その場で何度も何度も交差した
こはね「本当…なんですか…?」
司「誰が…?誰が殺したんだ…ッ!」
志歩「…信じられない事をする人もいるんだね」
彰人「ちょっとまて…あいつの言うことなんか鵜呑みにすんな…」
類「…少し、静かにしてくれるかい?」
類「そこのぬいぐるみに、確認しておきたいことがあってね」
類「僕たちの中に殺人者がいるとすると…」
類「その人は、ここから卒業できるんだよね?」
モノクマ「…へ?」
類「とぼけないでくれ。君が言ったんだろう?殺人を犯した人は卒業できると…」
モノクマ「…うぷぷ…」
モノクマ「あっはっはっはっはッ!」
彰人「…何笑ってやがる」
モノクマ「うぷぷ…だってさぁ…」
モノクマ「甘い…甘すぎるよ!」
モノクマ「人を殺しただけで、簡単に出られると?」
モノクマ「そんなの大甘だよ!デビル甘だよ!地獄甘だよー!」
モノクマ「むしろ…本番はこれからじゃん!」
奏「本番……?」
モノクマ「ではここで…卒業に関する補足ルールを説明しまーす!」
モノクマ「『誰かを殺した者だけが卒業できる』という点は、以前説明した通りですが…」
モノクマ「その際、守っていただかなければならない約束があったよね!」
愛莉「校則の…6条目の項目かしら…」
愛莉「自分が殺人を犯したクロだと、他の生徒に知られてはならない…」
愛莉「その点を言ってるのよね」
モノクマ「そうそう!つまり、ただ殺すだけじゃ駄目なの。」
モノクマ「他の生徒に知られないように殺さないと駄目なの。」
モノクマ「で、その条件がクリアできているのかを査定するシステムとして、」
モノクマ「殺人が起きた一定時間後に、『学級裁判』を開く事とします!」
奏「学級…裁判…?」
モノクマ「学級裁判は、殺人が起きた数時間後に開催します!」
モノクマ「学級裁判の場では、殺人を犯した『クロ』と…」
モノクマ「その他の生徒の、『シロ』との対決が行われるのです!」
モノクマ「学級裁判では、『身内に潜んだクロは誰か?』を、オマエラに議論してもらいます。」
モノクマ「その結果は、学級裁判の後に行われる、『投票』によって決定されます。」
モノクマ「そこで、オマエラが導き出した答えが正解だった場合…」
モノクマ「秩序を乱したクロだけが『おしおき』となりますので、残ったメンバーは共同生活を続けてください。」
モノクマ「ただし…もし間違った人物をクロとしてしまった場合は…」
モノクマ「罪を逃れたクロだけが生き残り、残ったシロ全員がおしおきされます。」
モノクマ「その場合、もちろん共同生活は強制終了となります!」
モノクマ「以上!これが学級裁判のルールなのです!」
雫「ねぇ…さっきから連呼してる…おしおきって…?」
モノクマ「あぁ…簡単に言えば…」
モノクマ「処刑ってとこかな!」
杏「しょ、処刑…!?」
一歌「処刑って…なんのこと…?」
モノクマ「処刑は処刑だよ。ショ・ケ・イ!」
モノクマ「電気イスでビリビリ!毒ガスでモクモク!ハリケーンなんちゃらで体がバラったりってやつだよ!」
司「つ、つまり…」
司「犯人を当てれば犯人だけが殺されるが…もし犯人を外せば…」
司「俺ら全員が処刑される…?」
モノクマ「賢いね!さりげなく自分が犯人じゃないとアピールするところもポイント高いよ〜!」
モノクマ「ま、つまり外の世界で言う裁判員制度ってやつだよ」
モノクマ「犯人を決めるのはオマエラってわけ」
モノクマ「ただし、判断は慎重にね!」
モノクマ「オマエラ全員の命がかかってるんだからさ!」
モノクマ「じゃあ今のルールも校則に追加しとくから、各自ちゃんと確認しとくんだよ!」
咲希「ちょ、ちょっと待ってよ…!」
咲希「あなたの言ってる事…無茶苦茶だよ…!」
モノクマ「…ん?」
咲希「何が学級裁判なの…!」
咲希「そんなのに参加する気ないから…!」
モノクマ「…どうして?」
咲希「どうしてじゃないよ…!」
咲希「なんでアタシが犯人当てなんか…」
モノクマ「なんと…学級裁判に参加しないですと!」
モノクマ「そんなこと言う人には罰が当たるよ!」
咲希「な、何言ってるの…」
モノクマ「暗くてこわーい牢屋に閉じ込めちゃったり…!」
咲希「う、うるさいよ!なんて言われても、絶対参加しないから!」
モノクマ「そんな身勝手な!」
咲希「身勝手なのはそっちの方だよ!」
咲希「殺し合いなんてやって…あたしには関係ないでしょ!?」
モノクマ「目の前の圧倒的な悪の迫力に…正直ブルってるぜ…だけどなぁ…」
モノクマ「ボクは悪に屈する気はない…」
モノクマ「最後まで戦い抜くのがモノクマ流だよ!」
モノクマ「どうしても通りたければ…」
モノクマ「ボクを倒してからにしろーー!!」
という声と共に、
モノクマはテトテトと突進してきた
だけど…
モノクマ「ぎゅむ…」
咲希「はい、これで満足?」
モノクマ「そっちこそ…」
咲希「え…?」
モノクマ「学園長ことモノクマへの暴力を禁ずる。校則違反だね」
モノクマ「召喚魔法を発動する!」
モノクマ「助けて!グングニルの槍!!!」
次の瞬間、
どこからか、謎の槍が飛んできた
…天馬さん目掛けて。
咲希「………」
咲希「…………………」
咲希「あ…れ…?」
咲希「なんで……あたし…が……?」
天馬さんは、最後にカッと目を見開くと
そのまま…2度と動かなくなった…
司「は…?」
司「さ…き…?」
司「咲希…!?!返事してくれッ!!!咲希!!」
司「あ"ぁぁぁぁッッ!!」
司「咲希!頼むッ!!起きてくれ!!」
穂波「嘘…咲希ちゃん…?」
冬弥「咲希さん…!!!」
モノクマ「ボクは今、痛感しております…お約束というものの偉大さを…」
モノクマ「関係ないところでは、できるだけ死人を出さないようにと思ってたんだけど…」
モノクマ「やっぱり見せしめは必要だったんだね!おぉ!なんと偉大なお約束!!」
司「お前…ッ!ふざけるな!!!」
モノクマ「おー怖い怖い…でもさ、これでオマエラもわかってくれたよね?」
モノクマ「…ボクは…本気だよ。」
モノクマ「逆らう生徒は…ハチの巣になったり爆発させられたり生き埋めにされたり溶かされたり…エトセトラ。」
モノクマ「そんな風になりたくなかったら、オマエラは学園の校則にしっかり従うこと!」
目の前には…大量の槍に貫かれた天馬さんの姿…
そこからは、大量の血が広がっている…
それは…私が初めて見た、
人が死ぬ瞬間だった
さっきまで生きていた…仲間だった天馬さんは…
死んだ。殺された。絶命した。
こんなに、あっさりと。
これが…人間の死…
モノクマ「驚くことないよ!」
モノクマ「死んだだけ…ただ死んだだけだよ…」
モノクマ「いつか人類が滅びるくらい、めちゃ当たり前のこと…」
モノクマ「そして、むちゃ自然なことなんだよ。」
モノクマ「少年漫画じゃないんだし…死んでも死なないなんてことはないんだ」
モノクマ「これが現実なんだよ!!」
瑞希「…っ…なんで殺したの?牢屋に入れるんじゃなかったの?」
モノクマ「気が変わったの。」
瑞希「…最初から殺す気だったんじゃないの?」
モノクマ「殺す気…?なんて読むの?ころすけ?」
モノクマ「最初からころすけだったって…そう言ったの?」
モノクマ「おいおい!ボクはモノクマだってば!」
モノクマ「…ま、そんなことはどうでもいいとして…」
モノクマ「クロ探しの調査にあたって、オマエラにはこれを配っておかないとね!」
モノクマ「これはボクが死体に関することをまとめたファイル…その名も…」
モノクマ「ザ・モノクマファイル!!」
モノクマ「ま、結局のところオマエラは素人さんなわけだし…」
モノクマ「死体を調べると言っても限度があると思うから、」
モノクマ「代わりに、ボクが死亡状況や死因っぽいのをまとめておいてやったの!」
モノクマ「ちなみにボクは、監視カメラで一部終始を見てたから、一目瞭然なのだよ!」
瑞希「じゃあ、あなたは知ってるんだね?」
瑞希「まふゆを殺した…犯人を…」
モノクマ「もちろんですよー!」
モノクマ「じゃないと、学級裁判のジャッジを公平に下せないでしょ?」
瑞希「ふーん、ジャッジは公平に下されるんだね。」
瑞希「それを聞いて、ちょっと安心したかも。」
モノクマ「じゃあ!捜査を頑張ってくださいね〜!」
モノクマ「では後ほど、学級裁判でお会いしましょう!」
こうして、モノクマは去っていった
混乱した状況と、
困惑した私たちと、
変わり果てた天馬さんを残して…
しばらくの間、私たちは口を開こうともしなかった
まふゆや天馬さんの死が、とてつもなくショックなのは当然だけど、
でも、それだけじゃなかった
この中にいる誰かが…人を殺したという事実…
しかも、その人物を特定できなければ、他の全員が処刑されてしまう…
互いが互いに、疑いの目を向けている状況…
最悪の状況だった…
ただ、そんな常軌を逸した最悪の状況でも…
彼女は…動じた様子を見せてなかった。
瑞希「…落ち込んでる場合じゃないよ。」
瑞希「今はただ…できることをしないと…」
瑞希「そうじゃないと…全員まとめて処刑されるだけ…」
類「その通りだよ。早速、捜査を始めようか。」
遥「どの道私たちは逃げられない…やるしかないんだよ。」
一歌「やるしか…ない…」
絵名「本当に…やるしかないの…?」
彰人「なにが処刑だ…殺されてたまるかよ…!」
口々に、『やるしかない』と呟いていた
そうだ…やるしかないんだ……
それが生き残る、唯一の手段だから…!
それに…私は知らないといけない…
どうして…まふゆが殺されてしまったのか…
知るのは怖い…けど、知らなくちゃいけないんだ…
そうじゃないと…私は…
まふゆの死に…納得がいかない…
だから…
やるしか…ないんだ…
---
奏「…捜査って言っても、何をすれば…」
瑞希「とりあえず、見張りの人を用意しないとじゃないかな」
みのり「見張り?」
瑞希「そう。じゃないと、犯人が証拠隠滅するかもでしょ?」
冬弥「たしかにそうだな…」
えむ「じゃあ、あたしが見張りをするよ!」
奏「鳳さんがやってくれるの?ありがとう。」
えむ「うんっ!まかせて!」
彰人「ちなみに…鳳が殺したっていう可能性は…」
えむ「あたしは殺してないよ〜…血が苦手なんだよね…」
奏「血が苦手なら、殺人はできなさそう…」
杏「あ、ちょっとまって、見張りが1人だと怖くない?」
類「どういうことだい?」
杏「ほら、その見張り役が犯人だったりして…」
杏「とか思っちゃうんだよね〜」
瑞希「それなら、見張り役は、えむちゃんと杏でいいね」
一歌「あとする事といえば…」
穂波「さっき配られた…モノクマファイル?を見ればいいんじゃないかな」
雫「……わ…すごく細かく書かれているわね…」
愛莉「ご丁寧に死体写真まで…趣味悪いわね…」
志歩「…ちょっとまって…」
志歩「殺害現場…宵崎奏の個室ってあるけど…」
寧々「え……ってことは…」
みんなの視線が、一気に私へ向けられた
それは、さっきの眼とは違う。
疑惑と恐怖の眼…
私が…疑われてる…
彰人「…はっ、調べる必要がなくなったな…」
奏「!?違う…私じゃない…!」
こはね「で、でも…ここに書いてあるし…」
奏「…なんで…ッ私は一晩だけまふゆと部屋の交換を…」
瑞希「ちょっとまってよ…それは、捜査すれば分かる事でしょ?」
瑞希「早く行こう。時間も迫って来てるんだし」
志歩「………私はあなたの事…疑ってるから」
奏「…………」
瑞希「…話し合いはもういいかな?」
瑞希「そろそろ捜査始めよう。ここからは別行動だね」
瑞希「誰がまふゆを殺したのか…その答えに辿り着くために…」
瑞希「根拠となる手掛かりを集めて、推理を組み立て、正しい判断を下さないと…」
瑞希「…じゃあ、ボクは一足先に捜査するよ。」
そう言って、瑞希は体育館を後にした
類「僕も行くとするかな…」
瑞希に続くようにして、神代さんも去っていく
杏「っと…私たちは見張り役だったね」
えむ「急いで現場に向かわなきゃ〜…」
奏「鳳さんは血が苦手だけど…現場の見張りはできるの?」
えむ「うん!見なければ大丈夫だよっ!」
杏「じゃあ、いこっか!」
そう言い、足早に去っていった
こはね「でも…探偵でも刑事でもないのに…殺人の調査をしろなんて…」
志歩「別に…分かりきってるでしょ…朝比奈先輩を殺した人とか…」
奏「それって…」
志歩「あなたの事だよ」
奏「だから…私は違うって…」
志歩「…信用できない」
司「と、とにかく!やるだけやってみるぞ!」
司「まだ宵崎が犯人って決まったわけじゃ…ないんだしな…」
疑ってるみたい…だな…
絵名「とりあえず行こうよ…やらないと…」
そう言って、
みんなはぞろぞろと、体育館を後にした。
疑いの視線を…私に向けたまま…
…みんな、本当に私が犯人だと思ってるのかな…
なんで、そうなるの…?
そんなわけない…
奏「なんで私が…まふゆを殺さないといけないの…?」
なんとかしないと…
このままじゃ…みんなが……
…そんなことに…なったらだめだ…
私が…犯人を見つけてみせる…
まふゆを殺した、犯人を…
奏「えっと…まずは、さっき配られたモノクマファイルに目を通しておこうかな…」
被害者は朝比奈まふゆ
死亡時刻は午前1時。
死体発見現場となったのは、寄宿舎エリアにある宵崎奏の個室
被害者はそのシャワールームで死亡していた
致命傷は刃物で刺された腹部の傷、その他右手首に打撃痕あり
打撃痕のある右手首は、骨折している模様
これを元に、捜査を進めていこう…
奏「なんとかして、突き止めないと…」
奏「私と、みんなが生き残るために…」
奏「そして……まふゆのためにも…」
そして私は向かった。
まふゆの死体があるはずの、私の部屋へ
---
まずは、この部屋の状況を詳しく調べてみよう…
床に鍵が落ちてる、私の名前がついた鍵だ。
確かこれは…部屋を交換するとき、まふゆに渡したんだよね…
部屋の中に落ちてるってことは、ずっとまふゆが持ってたことになる
じゃあ、犯人はどうやって部屋に入ったんだろ…?
まふゆが…鍵を掛け忘れた…?
いや…そんなわけないな
あんなに怯えていたまふゆが…鍵を掛け忘れたり、自分からドアを開けたとは考えられない
じゃあ、落とした鍵を盗まれた?
……それも違うか…
まふゆはずっと部屋にいたはずだから…
誰かに鍵を盗まれる機会もない…
じゃあ……どうやって…?
奏「あ……私が護身用に持ち帰って来た模擬刀…」
これが事件に使われたのかな…?
…あれ?刃の部分と持ち手の柄の部分の塗装が…ところどころ剥がれてる…
柄の部分は塗装の剥がれが激しいな…
たしかこの模擬刀って、ちょっと触っただけでも金箔がついちゃうんだよね
奏「……ねぇ、白石さん…?」
奏「白石さんも、私が犯人だと思ってるの?」
杏「私には…わからない、推理できないよ…」
奏「そっか…」
……ん、?
この模擬刀の鞘……傷がついてる?
刃物みたいなやつで切り付けられたような…
でもなんで鞘に切り傷が?
模擬刀が争いに使われたとしても、鞘に傷があるのは不自然…
模擬刀で襲いかかるなら、普通は刀を鞘から抜くはずだし…
……なんで傷があるんだろう…
えむ「あっ、ねぇねぇ奏ちゃん!」
えむ「見張りをしてて気づいたんだけど…もう犯人が証拠隠滅した…とか、可能性はあるよね?」
えむ「例えば、死体が発見される前とかに…」
奏「うーん……可能性はあるね…」
えむ「それに、こっちの寄宿舎にはゴミ捨て場もあるし…あそこで処分してるかも…!」
奏「……たしかにそうだね…ありがとう。鳳さん。」
えむ「いえいえー!」
あとは……あ、部屋の壁に傷がついてる…
奏「争った形跡…ってやつかな」
奏「…隣の部屋にいた私が…気づいていれば…」
杏「うーん…それは無理だと思う…」
奏「え、?」
杏「ほら、個室って完全防音だったでしょ?」
杏「だから、どれだけ激しい争いがあっても、気づくのは難しいかなって思ったんだけど…」
奏「あ……そうだった…」
杏「これも、モノクマの策略なのかな…」
奏「犯人にとって…最適な環境だったってことかな…」
奏「…ねぇ、瑞希?」
私は、現場で捜査してる瑞希に、声をかけた
…でも……
奏「瑞希?……何やってるの…?」
瑞希「あっ、奏!捜査だよ!捜査!」
奏「捜査……?」
瑞希は、私の部屋の隅々までじっくり見回していた
瑞希「………………」
集中してるみたい…
…?あれ、この粘着テープクリーナー、テープの残量がかなり減ってる…
誰が使ったんだろう…犯人が証拠隠滅のために…とか、?
引き出しの中には裁縫セット…使われた形跡はなしか
奏「というかこれ……使うシチュエーションってあるのかな…」
えむ「奏ちゃんも使ってないの?」
奏「ひゃっ…鳳さん、?」
えむ「あわわっ…驚かせてごめんね〜!」
えむ「この裁縫セット、まだ誰も使ってないみたいだよ〜あたしも使ってないんだ。」
奏「そうなんだ……」
瑞希「ねぇ奏?奏って潔癖症だっけ?」
奏「いや…違うよ」
瑞希「んー、やっぱりこの部屋、ちょっと妙なんだよね〜…」
奏「妙……って?」
瑞希「床を調べたんだ。隅から隅までね。」
瑞希「で……この部屋には、髪の毛が一本も落ちてなかったんだよ。」
奏「一本も……?」
瑞希「うん。まふゆの髪も、奏の髪も落ちてなかった。」
瑞希「あっ、奏、テープクリーナーって使った?」
奏「ううん、一回も使ってないよ。」
瑞希「じゃあ、奏以外の誰かがこの部屋を掃除したってことになるね。」
奏「やっぱりそうなんだ…」
奏「……………」
シャワールーム……この向こうに…まふゆが…
だめだ……弱気になっちゃだめ…
落ち着け……冷静に………
そう自分に言い聞かせ、私はシャワールームの中に入った
そこには、夢でも錯覚でもない…
変わり果てた彼女がいた
奏「まふ…ゆ……」
涙と吐き気と立ち眩みが、ほぼ同時に私を襲った
怯むな…事件の真相を突き止めろ……
倒れそうな私の背中を押してくれたのは、
そんな決意だった。
---
私はまふゆの背中越しに、後ろの壁を覗き込んだ
奏「……なにこれ…?『0_IZIV』…?」
奏「なにかの暗号かな……読めない…」
奏「まふゆが書いたのかな…?」
奏「……ッ…」
正直、直視するのも辛い
でも、そんなこと言ってる場合じゃない…
奏「えっと…お腹に刃物……これが致命傷か…」
この刃物って、どこから持ってきたものなんだろ?
刃物がある場所…あとで調べようかな
奏「あと……モノクマファイルによると、まふゆは右手首を骨折してるんだよね」
たしかに右手首には腫れと出血がある…
でもこの腫れた部分、なにかきらきらしてる…?
いや、きらきらしたものが付着してるのか…
あと気になるのは……
あれ、?まふゆの左手…人差し指だけ血で汚れてる…
両手とも手の平は綺麗なのに……なんでここだけ…?
致命傷は腹部の傷だから、骨折はそれより以前ってことになる
だって、死んだ後に骨折する理由なんて…考えられないからね
とすると、この怪我は、部屋で争いがあったときに負った傷なのかな?
瑞希「あ、奏も気づいた?」
瑞希「シャワールームの壁にあった血文字……多分、ダイイングメッセージだね」
奏「あ……あれはダイイングメッセージだったのか…」
瑞希「うん。犯人に気づかれないように書いたんだろうね。暗号になってるし……」
奏「……血文字なんて初めて見た…」
奏「それに、あの文字…全く心当たりがない…」
瑞希「…あの血文字は、まふゆの背中で隠れるような場所にあったよね」
瑞希「まふゆがあの体制のまま、あの場所に字を書いたとすると…」
瑞希「『手だけを背中の後ろに回した状態』で書いたことになるね」
瑞希「そんな状態で字を書いたら…どうなるのか…」
奏「……どうなるの…?」
瑞希「……奏が、自分で考えてみて。」
奏「教えてくれないんだ…」
瑞希「この事件の真相は、奏が突き止めるべきだから。」
瑞希「そうじゃないと……納得できずに終わることになる…」
ダイイングメッセージの意味……瑞希にはわかってるみたいだけど…
私にはさっぱりだな…
瑞希「あーあと、ひとつ聞きたいんだけど、」
瑞希「あのシャワールーム、ドアが壊れてるのはなんで?」
奏「……あ、建て付けのこと?」
瑞希「建て付け…?」
奏「私のシャワールームのドアだけ、建て付けが悪いんだよね」
瑞希「……そっか、建て付けが悪いんだね…」
瑞希「でも、ボクが言ってるのはドアノブの故障のことだよ」
奏「え…ドアノブ…?」
瑞希「あれ…気づかなかった?ちょっとシャワールームのドア、閉じてみて」
私は瑞希にそう言われて、シャワールームのドアを閉じてみた。
すると……
奏「なにこれ……!?」
奏「ドアノブが外れかかってる…」
奏「な、なんでこんなことに…?」
瑞希「多分、ドライバーか何かを使って壊したんだろうね」
瑞希「いや、壊したと言うか…ネジを外した…かな?」
瑞希「意図的に外したのは確かだよ。」
奏「意図的に…?でもなんで……」
瑞希「んー…鍵を壊そうとして、ドアノブごと壊したとか?」
瑞希「……奏、聞いておきたいことがあるんだけど、」
瑞希「ドアの建て付けのこと、誰かに話した?」
奏「えっと……まふゆには話したよ。昨日、部屋を交換したときに。」
瑞希「じゃあ、知ってたのは奏とまふゆだけってことだね」
瑞希「……これではっきりした…」
奏「はっきりしたって…何が?」
瑞希「じゃあ、また後でね」
奏「あ、み、瑞希…!?」
奏「行っちゃった…」
奏「会話が噛み合ってなかったような……」
……あ、刃物がある場所を見ないと…
あと……まふゆが持ってたDVD……
あれも確認しておかないとな……
他にも捜査しないといけない場所があるかも…
他のみんなにも話を聞いてみようかな…?
---
奏「あれ、望月さん?」
穂波「あ、宵崎さん!」
奏「望月さんは、食堂の捜査?」
穂波「いえ、私は休憩中です。というか、ずっと休憩してるんですけどね……」
穂波「こんな経験初めてで……どうすればいいかわからなくて…」
奏「そうだよね…」
穂波「それに、ここの食堂って、なんだか落ち着くんです。」
穂波「朝比奈先輩が殺されてしまった日の夜も…食堂にいたんです…」
奏「……そうなんだね…」
奏「えっと……たしかこの厨房に…」
奏「…あった」
大小様々な包丁が並んでいる
でも……
包丁が一本足りないみたい
これって最初からなかったのかな…それとも……
厨房に詳しい人がいるなら、話を聞きたいけど…
とりあえず、別のところを調べよう
---
……あれ?ここってまふゆの部屋だよね…
ネームプレートが私の名前になってる…
ってことは、私の部屋のネームプレートが、まふゆの名前になってるってこと?
……入れ替えられてる…!?
せっかくみんなに内緒で部屋を交換したのに……これじゃあ意味がないな……
誰がこんなことを……?
---
まふゆの部屋のゴミ箱…たしかここには……
あった。まふゆに配られたDVD。
奏「この映像を見た後、かなり取り乱してたんだよね……」
何が映ってるんだろう……
事件とは関係ないかもだけど、一応確認しておこう。
奏「まふゆ…ごめん……このDVD借りてくね」
---
トラッシュルームは……ここか
奏「あれ、焼却炉が鉄格子の中に…」
奏「……これじゃあ入れないな……」
モノクマ「ここは終着駅……」
モノクマ「そう、ゴミ捨て場。名付けてトラッシュルーム。」
奏「こ、この鉄格子はどうやったら……?」
モノクマ「だめだめ!この先は入れないよ!掃除当番以外は入れないよ!」
奏「掃除当番……?」
モノクマ「だめだめ!この先は入れないよ!掃除当番以外は入れないよ!」
奏「掃除当番……?誰のこと……?」
モノクマ「だめだめ!この先は入れないよ!掃除当番以外は入れないよ!」
奏「RPGのキャラみたいになっちゃった……」
---
まふゆの部屋に捨ててあった、DVDの内容を確認してみよう……
再生ボタンを押し、暗い画面を見つめていると、
数秒後に、映像が流れ始めた
そこには、まふゆの両親が映っていた
両親は笑顔で、まふゆの希望ヶ峰学園への入学を、喜んでいるようだった
私と似たような内容……
そのとき、あの忌々しい声が聞こえてきた
モノクマ「超高校級の優等生。朝比奈まふゆさん。」
モノクマ「彼女にとって、両親はとても大切な存在でした。」
モノクマ「ですが……」
そのとき、私は信じられないものを目の当たりにした
奏「……!?なに、これ……」
そこには、絶望的な表情をしたまふゆの両親がいた
まふゆ母「まふゆ…あなたは音楽をやっている場合じゃないの…!」
まふゆ母「はやく…早く勉強して…!」
まふゆ母「あなたには、医者になるという夢があるのでしょう?」
まふゆ母「お願い…お母さんの言うことを聞いて……お願いだから……!」
まふゆ父「…………」
モノクマ「超高校級の優等生、朝比奈まふゆさんのせいで、両親は絶望してしまいました!」
モノクマ「音楽のせいで、勝手に勉強以外のことをしたせいで……」
モノクマ「つまり、朝比奈まふゆさんは、勉強をし続けなければなりません!」
モノクマ「親の期待に応えなければなりません!」
モノクマ「では!ここで問題です!」
モノクマ「この後、朝比奈まふゆさんの両親は、どうなったでしょうか!」
--- 正解発表は『卒業』のあとで! ---
奏「なに…これ…?」
奏「まふゆの両親にまで…手を出したっていうの…?」
奏「何者なの…ここまでするなんて…」
---
奏「ねぇ天馬さん」
司「む、宵崎か……」
やっぱり妹さんのこと…かなりショックみたいだな…
奏「えっと、掃除当番のことなんだけど…」
司「それなら昨日の朝、モノクマから話を聞いたぞ!」
奏「ほんと…?」
司「嗚呼、モノクマから直接オレに言いに来てな…」
司「掃除当番を決めてくれ。とな!」
奏「じゃあ、天馬さんが掃除当番だったんだね」
司「いや、俺は掃除当番ではないぞ?」
奏「え、?じゃあ誰が…」
司「ちょうどそのとき、花里がいてな…立候補してくれたんだ」
奏「じゃあ掃除当番は、花里さんってことだよね?」
司「ああ!掃除当番は1週間ごとに交代する予定だ。いずれ、宵崎にもお願いすることがあるだろう」
司「その時はよろしくな!!!!」
奏「う、うん…わかった。ありがとう」
いつも通りの天馬さんだ…よかった、のかな
---
奏「あ、花里さん」
みのり「奏ちゃん!どうしたの?」
奏「花里さんって掃除当番なんだよね。それなら、トラッシュルームの鉄格子も開けることができるの?」
みのり「もちろんだよ!鍵もちゃんと受け取ってるし!」
みのり「ちなみに、掃除当番は1週間ごとに交代するらしいよ!」
類「おや…トラッシュルームに入るには鍵が必要なのかい?」
みのり「え?そうですけど…」
類「その鍵は、掃除当番だけに持たされる…」
類「どうしてそんな面倒なことをするのかな…」
類「トラッシュルームを開放して、各々が廃棄できるようにしたらいいはず…」
奏「たしかに…そっちのほうが効率的だね」
類「………………」
類「…なるほど…そういうことか…」
類「全員がトラッシュルームに出入りすることができたら…」
類「証拠隠滅がすごく簡単になってしまう」
類「つまり……スリルがなくてつまらないということだね」
奏「つ、つまらないって…」
奏「…とりあえず、」
奏「花里さんにお願いがあるんだけど……」
みのり「は、はひ!?なんでしょうか!?」
奏「トラッシュルームを調べたくて…」
みのり「わかりました!花里みのり!頑張ります!」
奏「が、頑張れ…?」
---
みのり「ふむふむ…ここの鉄格子を開ければいいんだよね!」
奏「うん。ありがとう」
花里さんはポケットから取り出した鍵を使って、
鉄格子の脇にあるスイッチを作動させた
みのり「でも奏ちゃん、トラッシュルームで何をするの?」
奏「捜査だよ。犯人がここで証拠隠滅してないか…」
みのり「なるほど…頑張ってね!」
奏「ありがとう」
トラッシュルームの奥に設置された焼却炉…
ここから鉄格子まで、大体10メートルくらい離れてるな
というか、火が付きっ放しだ…
みのり「焼却炉の隣には、緑のボタンと黄色のボタンがあるよね?」
みのり「緑色のボタンを押すことで燃焼を開始して、黄色のボタンで燃焼を終了するシステムだよ!」
みのり「って…あれ…!?火が付けっ放しだ!?」
みのり「おかしいな…前来た時はちゃんと火は消えてたのに…」
奏「…!花里さん…!今言ったこと、ほんと…?」
みのり「え?う、うん、ほんとだよ!」
みのり「鉄格子を開けるための鍵も、私しか持ってないから、火がついてるなんてありえないし…」
奏「つまり…誰かが鉄格子を開けずに、焼却炉のスイッチをつけた?」
奏「…でもどうやって…」
奏「あれ…なんか落ちてる…?」
みのり「これ、燃えカスかな…?」
みのり「…布…だよね?…それにこの形状…ワイシャツの袖口?」
奏「血がついてる…ってことは…」
奏「犯人が隠滅した…証拠の残り…?」
みのり「で、でも…袖口が白いワイシャツを着た人は、たくさんいるよね…」
奏「これだけじゃ、犯人を特定するための証拠にはならないかも…」
---
奏「あと…これって…?」
みのり「ガラス玉かな…?綺麗な色…」
この色使い…どこかで見たことあるような…
奏「ん…そうだ、あの人に…聞いてみよう」
奏「ありがとう花里さん。だいぶ証拠が集まったよ。」
みのり「そっか!よかったぁ…」
---
奏「えっと…たしかここに……あっ、いた」
絵名「早くここから出たい…もうやだ……今すぐ出たい…」
奏「え、絵名?大丈夫?」
絵名「あ…奏…ごめん、何?」
奏「ちょっと聞きたいことがあって…」
奏「このガラス玉に見覚えないかな?」
絵名「え…これ、私が作ったガラス玉…!」
絵名「なんでこれが…」
奏「たしか、ガラスと色の組み合わせについて知りたくて作ったんだよね…?」
絵名「そうそう…というか!割れてるし!!」
絵名「もー…なんなのよ…」
奏「じゃあこれって、絵名のもので間違いないんだよね?」
絵名「う、うん…」
絵名「そういえば…昨日の夜、ランドリーに置き忘れたような…?」
奏「置き忘れた…ということは、誰にでも持ち出し可能だったってわけか……」
---
奏「桐谷さん、ちょっといいかな?」
遥「あ、宵崎さん…?どうしたの?」
奏「聞きたいことがあって、死んだまふゆがあるメッセージを残してたんだ。
奏「『0_IZIV』っていう文字なんだけど…何か心当たりとかある?」
遥「…うーん……」
桐谷さんは数秒首を傾げて考えていた……けど…
遥「ごめん、分からないな…」
奏「そっか…ありがとう」
---
奏「望月さん、知ってる?」
奏「厨房の包丁が一本足りないみたいなんだけど…」
穂波「あ、私もそれ気になってました…」
穂波「いつのまにか無くなっていて…」
奏「じゃあ、最初から無かったわけじゃないんだね」
穂波「はい。前に見た時は全部揃ってましたし…」
奏「それじゃあ、包丁が無くなってるって気づいたのはいつ?」
穂波「えっと…昨日の夜、紅茶を飲もうとして厨房に入った時は、包丁は揃ってました。」
穂波「だけど、紅茶を飲んだ後に厨房へ入ったときは…」
穂波「もう、無かったんです…」
奏「なるほど…望月さんが食堂にいる間に包丁が持ち出されたんだな…」
だったら、望月さんは知ってるはず…
その間、私が食堂に行ってないことを……
つまり、私が凶器を持ち出していないことを…
穂波「……宵崎さんは…ほんとに朝比奈先輩を殺したんですか…?」
奏「!?違う…!私は殺してない…!」
奏「…望月さんは、私が殺したと思ってるの…?」
穂波「殺害現場が宵崎さんの部屋だったので…」
穂波「でも、お二人はとても仲が良かった…けど、仲がいいから殺人が起こると言うのもあると思いますし…」
穂波「…結局、よく分からないです…」
奏「…そう、だよね…」
キーンコーンカーンコーン…
奏「…!この放送って…!」
モノクマ「えー、ボクも待ち疲れたんで…そろそろ始めちゃいますか?」
モノクマ「お待ちかねの…」
モノクマ「学級裁判をっ!!!」
モノクマ「ではでは!集合場所を指定します!」
モノクマ「学校エリア一階にある、赤い扉にお入りください!」
モノクマ「うぷぷ…それじゃ!また後でね〜!」
学級裁判…
奏「……行くしか…ないんだよね…」
---
奏「…ここか……」
ガチャッ…
司「む、宵崎!遅かったではないか!!」
司「もう全員揃っているぞ!!!」
志歩「…怖いんでしょ、自分の犯行を暴かれるのが」
司「決めつけはよくない!学級裁判まで待て!!」
司「そこで、宵崎の犯行を明らかにするのだ!」
奏「(疑ってはいるんだな…)」
奏「(でも…)」
私が犯人じゃないってことは、私とまふゆがよく知ってる
…まふゆを殺した真犯人は…
この中に…いる……?
モノクマ「うぷぷ…全員揃ったみたいですね…それでは…」
モノクマ「正面にみえる、エレベーターにお乗りください…そいつが、オマエラを裁判場まで連れて行ってくれるよ。」
モノクマ「オマエラの…運命を決める裁判場にね…」
瑞希「……行こう」
類「嗚呼。さて、いよいよだね…覚悟はいいかい?」
奏「このエレベーターに、乗ればいいんだね…」
こはね「じゃあ…行こっか…」
一歌「…そうだね…」
奏「………」
瑞希「…怖いの?」
奏「…いや…怖いというか…」
瑞希「前にも言ったけど…この事件の謎は、奏が突き止めるべきだよ」
瑞希「そうじゃないと…納得しないまま終わっちゃうから…」
奏「…言われなくても…そうするつもりだよ」
奏「まふゆのために…!」
そして私は、緊張で震える足をエレベーターへと向けた
すでに全員が乗り込んでいるエレベーター。
最後の私が乗り込んだところで…
扉は閉じ、エレベーターは動き始めた
耳障りな音を響かせながら、エレベーターは地下へと潜って行く…
---
モノクマ「おー!やっと来たね!」
モノクマ「どう?これっていかにも裁判場って感じじゃない?」
冬弥「どこがだ…悪趣味な空間だな…」
モノクマ「はいはい、じゃあオマエラは、自分の名前が書かれた席に着いてねー」
---
一同が、円状に陣取るように配置された席…
みんなの顔が、ぐるりと見回せるようになっている
その場の空気が、一気に重苦しいものへと変化していった
そして、幕は開く…
命がけの裁判
命がけの騙し合い
命がけの裏切り…
命がけの謎解き、命がけの言い訳、命がけの信頼……
命がけの…学級裁判……
--- 学級裁判 開廷 ---
---
奏「ほんとに…この中に犯人がいるんだよね…」
モノクマ「当然です」
司「よし、みんなで目を閉じろ!そして犯人は挙手したまえ!」
寧々「あげるわけないでしょ…」
瑞希「…ちょっといい?議論の前に聞きたいんだけど…」
瑞希「あれって、どう言う意味?」
瑞希が指を指した場所は、
死んでしまった仲間の、遺影だった
モノクマ「あぁ…死んだからって、仲間外れにするのは可哀想でしょ?」
司「ッ…」
愛莉「……それなら…あれは何かしら?」
愛莉「私たちは20人なのに、なんで席が21個あるの?」
モノクマ「……深い意味はないよ。最大21人収容可能な裁判場ってだけ」
モノクマ「さてと…前置きはこれくらいにして、そろそろ始めよっか!」
モノクマ「まずは、事件のまとめからだね!じゃ、議論を始めてください!」
始まる…犯人を見つけるための裁判が…
何か気になるところがあったら、私自身が発言しないとな…
私だけじゃない…みんなの命がかかってるんだ…!
---
司「断言する!!殺されたのは朝比奈まふゆだ!!!」
絵名「そんなこと、言われなくても分かってるってば…」
類「殺人が起きたのは宵崎さんの部屋だったね」
穂波「そのシャワールームでしたね…」
こはね「きっと朝比奈先輩は…シャワールームにいるところをいきなり襲われて…」
こはね「抵抗する間もなく殺されちゃったんですね…」
奏「それは違うよ…!」
奏「小豆沢さん、私の部屋の状況を思い出してみて?」
奏「あの部屋の状況からすると、間違いなく争いはあったはずだよ」
こはね「争いって…誰と誰のですか…?」
奏「まふゆと…犯人とのだよ」
こはね「じゃあ…最初に部屋で襲われて…その後シャワールームに逃げ込んだところで…」
こはね「追ってきた犯人に殺されたってこと…?」
類「現場を見ればすぐわかることだね、わざわざ説明するまでもないよ」
こはね「す、すみません…」
絵名「…それじゃ、続き始めよ」
杏「じゃあ…次は凶器の話にしようか」
司「朝比奈の腹部に刺さっていた刃物…」
司「間違いない!!あれが凶器だ!」
一歌「犯人がナイフで刺したんですね…」
奏「それは違うよ…!」
奏「あの刃物はナイフじゃなくて、厨房の包丁だったはず…」
一歌「包丁…ですか?」
奏「うん、厨房にあった包丁が、事件後に一本だけ無くなってたんだ」
えむ「その包丁が、凶器になったんだね!」
一歌「あ…ほんとだ…よく見ると包丁ですね…」
彰人「凶器が包丁ってことは分かったけどよ…」
彰人「それがどうしたっていうんだ?」
彰人「つか、結局のところ…やっぱり宵崎が犯人なんだろ?」
志歩「そうだよ、現場はあなたの部屋だったし…これ以上の根拠はないよね」
奏「ちょ、ちょっとまってよ…私は…!」
瑞希「その結論は、議論を進めた後で出そう。じゃないと、学級裁判の意味がない」
彰人「けど、これ以上話したって何も変わんねーって…」
瑞希「いや、そんなことない。議論を続ければ、いつか突破口は見つかる…」
そうだ…いつか突破口は見つかる…
私が犯人じゃないことは…私自身がよく分かってる…!
彰人「たしかに凶器は包丁みてーだけど…」
彰人「それがどーしたってんだよ?」
志歩「…宵崎さんが厨房から持ち出したんでしょ」
志歩「誰も見てない隙に…」
奏「それは違う!」
奏「まって、厨房から包丁を持ち出したのは私じゃない」
志歩「お次は犯人は私じゃない…?言うだけならいくらでもできるよ」
奏「じゃあ…証人がいるとしたら?」
奏「…ねぇ、望月さん?」
穂波「えっ?」
奏「だって、望月さんは昨日言ってたよね?」
奏「包丁は、食堂にいる間に消えたって…」
奏「その間、私は食堂に来た?」
穂波「えっと…来なかったと思います…」
類「…思う…?」
穂波「い、いえ!来ませんでした!」
奏「包丁は、望月さんが食堂にいた間になくなった…」
奏「でもその間、私は食堂に行ってない…」
奏「だから、私に包丁を持ち出せたはずがないんだよ」
志歩「…だったら、こんな可能性は?」
志歩「穂波と宵崎さんが共犯関係にあって、嘘の証言をしてる…とか」
穂波「共犯関係…!?」
類「ついでにそこのぬいぐるみに聞きたいんだけれど…」
類「共犯者が存在した場合、その人もクロになるのかい?」
モノクマ「殺人の際、共犯者を味方につけることは可能ですが…」
モノクマ「卒業できるのは、実行犯であるクロ一名のみです」
瑞希「つまり…いくら殺人を手伝ったからって、共犯は得しないんだね」
冬弥「じゃあ、共犯者っていうのはなさそうですね…」
えむ「でもでも、犯人がそのルールを知らなかったかもしれないし…」
モノクマ「あぁ…めんどくさいなぁもう!」
モノクマ「ないない!今回の事件に共犯者はいないんだよ!」
モノクマ「はっ…言ってしまった…」
奏「えっと…とりあえず、議論を再開しようか…」
奏「とにかく、私は食堂に行ってないし、包丁なんて持ち出してないんだよ」
奏「だから…私は犯人じゃない」
こはね「だったら…包丁を持ち出したのは、誰なんですかね…」
一歌「食堂にずっといた穂波なら可能だろうけど…」
穂波「ち、違う!私じゃないよ!」
愛莉「それなら、証明できる人物とかいるの?」
絵名「私だよ」
穂波「昨日の夜、紅茶を飲んでる時…私はずっと、絵名さんと一緒でした」
司「む…それなら、東雲と穂波のどちらかが、こっそり持ち出した…というのはどうだろうか?」
穂波「それはありえないです、えと…その……」
類「…なんだい?」
絵名「昨日の夜、私は穂波ちゃんの部屋に泊まったんだ」
穂波「変な映像見せられたせいで…怖くなってしまって…」
穂波「絵名さんに無理言って、泊まってもらったんです」
穂波「ですから…私たちにはアリバイがあるんです…!」
志歩「泊まった…?それって、校則違反なんじゃ…」
こはね「個室以外で寝ることは禁止されてたけど…他人の個室で寝ることは禁止されてなかったから…」
こはね「問題ないってことなんじゃないかな…?」
雫「だけど…食堂にいた絵名ちゃん達でもないなら…もう他の可能性は…」
絵名「いや、まだ可能性はあるはずだよ。そうだよね、穂波ちゃん」
穂波「実は…私たちが食堂にいるとき、他にも1人だけ、食堂に来た人がいるんです」
彰人「なんでそれを先に言わねーんだよ…」
穂波「だって…もうここにはいない人なので…」
もうここにはいない人…?それってもしかして…
穂波「朝比奈まふゆ先輩…食堂に来たのは、殺された彼女だったんです…」
奏「まふゆが…!?」
奏「そ、それなら…包丁を持ち出したのって…!」
穂波「多分…朝比奈先輩…でしょうね…」
絵名「それに、今になって考えてみると、まふゆの言動…なんか違和感があったんだよね…」
絵名「食堂に来るなり、まふゆは私たちに見向きもせずに厨房へと入って行ったの」
絵名「水を飲みに来ただけって言ってたけど…多分その時に…」
司「では、包丁を持ち出したのは、被害者である朝比奈自身だったのか!!!」
奏「きっと…護身用にしようと…!」
類「つまり、朝比奈さんは自分で持ち出した包丁を犯人に奪われ…殺されたんだね?」
類「では、包丁を持ち出していないからと言って、容疑が晴れたわけではないということだ」
奏「え…!?」
志歩「ほら…やっぱり貴方が犯人なんだね」
奏「だから…違うんだって…!」
冬弥「そうやって議論を捻じ曲げて…俺らを間違った方向へと誘導しているのか…?」
どうしよう…このままじゃ私が犯人にされちゃう…!
なんでみんな分かってくれないの…?私を犯人にしたら…みんなも殺されるのに…!
瑞希「ちょっとまって、奏が犯人だって決めつけるのは、まだ早いよ!」
瑞希「今回の事件の犯人は、部屋の持ち主ではあり得ない行動を取っていた……」
瑞希「その行動を解明しない限り、奏が犯人だとは言い切れないはずだよ」
寧々「あ、あり得ない行動…?なにそれ…?」
瑞希「事件となった部屋には、あって当然のものがなかった…」
瑞希「奏…ここまで言えば…分かるよね?」
現場にあって当然のものがなかった…?引っかかる言葉だな…
奏「…!そうだ…私の部屋には、『髪の毛』が一本も落ちてなかったんだ…!」
こはね「犯人が…証拠隠滅したってことですか…?」
奏「それに、もし私が犯人だとすれば…」
奏「どうして、自分の部屋の髪の毛を、徹底的に掃除する必要があるの?」
奏「自分の部屋に自分の髪の毛が落ちていても、何も不思議じゃないよね?」
遥「朝比奈先輩が部屋を訪れた。という痕跡を残すために、部屋中の髪の毛を掃除した…」
遥「そうは考えられないかな?」
瑞希「いや、それだったら、髪の毛よりも死体をなんとかするはずだよ」
彰人「それなら、なんで髪の毛が落ちてなかったんだよ?」
瑞希「もちろん、犯人が掃除したからだよ」
瑞希「自分がその部屋を訪れた…という痕跡を消すためにね」
冬弥「!ということは…!」
瑞希「…そう、犯人が部屋の持ち主だとは考えられないんだよ」
こはね「じゃあ…宵崎さんは犯人じゃない…!?」
司「だが、そんな大事なことを…たかが髪の毛だけで決めていいのか!?!?」
瑞希「いや、奏が犯人じゃないっていう根拠は、他にもあるよ」
瑞希「現場となったシャワールーム周辺の状況を思い出してほしいんだけど…」
瑞希「まふゆは最初に部屋で襲われて、その後シャワールームに逃げ込んだんだよね?」
瑞希「その時犯人は…すんなりシャワールームに入れたのかな?」
愛莉「どういう意味かしら…?」
瑞希「犯人はシャワールームに入る時、かなり手こずったはずだよ」
瑞希「その証拠もはっきり残ってる…そうだよね、奏」
犯人が手こずった証拠…それって、犯人が壊した例の物のことだよね…
奏「犯人が手こずった証拠…それって、シャワールームのドアノブのことだよね」
杏「ドアノブが…どうしたの…?」
奏「壊されてたんだよ…私の部屋のシャワールームのドアノブがさ」
こはね「でも…どうしてドアノブなんかが…?」
瑞希「犯人がシャワールームの鍵を外そうとして、ドアノブごと壊したんだよ」
瑞希「これが、奏が犯人だと考えられない行動だよ…」
彰人「自分の部屋のドアを壊すはずないってか?」
彰人「でも壊すしかねーなら壊すだろ…ありえねーってほどでもないだろ!?」
瑞希「…まだわからないんだね…だったら…」
瑞希「もう一回、事件の流れを振り返ってみようか、そうすれば、きっとわかるはずだよ」
瑞希「事件は奏の個室で起きたよね」
瑞希「まふゆは最初に部屋で襲われて…」
瑞希「その後シャワールームに逃げ込んだんだよ」
冬弥「犯人はその後を追って……」
冬弥「シャワールームに入ったんですよね」
彰人「その時にドアノブを壊したんだろ」
彰人「シャワールームには鍵がかかっていたからな」
奏「それは違うよ…!」
奏「私の部屋のシャワールームの鍵が開かなかったのは…鍵のせいじゃない」
奏「ドアの建て付けのせいなんだ」
彰人「は?建て付け?」
奏「私の部屋のシャワールームは、ドアの建て付けが悪かったんだ」
奏「証人は、そこにいるモノクマだよ」
モノクマ「そのとーりです!」
瑞希「シャワールームのドアが開かなかったのは、ドアの建て付けのせい…」
瑞希「でも、犯人はそれを、鍵がかかっていると勘違いした」
瑞希「だから、ドアノブごと鍵を壊そうとしたんだよ」
愛莉「でも、鍵がかかるのは女子の部屋のシャワールームだけでしょ?」
愛莉「それなら、鍵がかかってるって勘違いしてもおかしくないはずだけど…」
奏「さっきも言った通り、私の部屋のシャワールームは建て付けが悪いから、鍵をかけることができないんだよね」
遥「じゃあやっぱり、建て付けのせいなんだね」
絵名「女子部屋なのに鍵をかけれないって…最悪すぎる…」
類「それに、万が一建て付けが良かったとしても…追い詰められた朝比奈さんが咄嗟に鍵をかける、なんてことも、中々できないだろうからね」
瑞希「最終的には、力ずくで開けたか…ひょんなことで開いたのかは分からないけど…」
瑞希「犯人は相当混乱したはずだよ…結局、ドアが開いた理由も分からず終いだろうし…」
奏「ドアが開かない理由を知ってる私なら…ドアノブを壊すなんてこと、しないはずだよね?」
こはね「じゃあ…犯人は、部屋の交換を知らなかった人物ってこと…?」
志歩「…宵崎さんは当てはまらないね」
だから、最初からそう言ってるのに…
穂波「だ、だったら犯人って…誰なんでしょうか…?」
えむ「う〜…あたしもうわかんないよぉ……」
司「よし!!とりあえず多数決で決めるぞ!!!」
彰人「とりあえずでいいのかよ…?」
寧々「ねぇ…この状況やばくない……?」
雫「だれか…疑問に思ってる事とかないかしら…?」
杏「…あっ!疑問ならあるよ!」
遥「…杏か……」
杏「なんで残念そうなの!?」
司「白石!いいから話を聞かせてくれ!」
杏「あぁ…えっと……」
杏「そもそも、犯人はどうやって宵崎さんの部屋に入ったのかなーって思って…」
彰人「朝比奈さんが鍵を落として、それを犯人に盗まれたんだろ…」
司「そんなに都合よく落とすとは考えられないがな…」
司「うーむ……全くわからん!」
寧々「……じゃあ、ピッキングとか?」
一歌「いや、鍵にはピッキング防止加工があったはずです」
冬弥「来訪者のふりをして来た犯人を…朝比奈さんが自ら招き入れた…とか…」
奏「いや、それはないよ…」
志歩「なんでないって言い切れるの?」
そもそもまふゆは怯えていたから…私に『例の事』を頼んだんだ…
それが、根拠になるはず…
まふゆが他人を部屋に招き入れたと考えられない根拠は……
奏「まふゆは怯えてたんだ…だからこそ、私に部屋の交換を頼んだんだよ」
奏「そんなまふゆが…自分から鍵を開けたとは考えられない…」
瑞希「…まふゆが怯えてたこと自体が、嘘だとしたら?」
奏「え…?」
奏「な、なに言って…なんでまふゆがそんな嘘を…」
瑞希「…奏にとっては考えたくない可能性かもしれない…けど…」
瑞希「これを見ても…まだそう言える?」
奏「…?」
--- 2人きりで話したいことがあります ---
--- 5分後に、私の部屋に来てください ---
--- 部屋を間違えないように、ちゃんと部屋のネームプレートを確認してくださいね ---
奏「な、なにこれ…?」
瑞希「ある場所に置いてあったメモ帳の1番上のページを鉛筆で擦ってみたら…」
瑞希「こんな字が浮かび上がったんだよ」
瑞希「古い手法だけど…意外と古典も役立つんだね」
杏「でも、これってどこで見つけたの?」
瑞希「奏の部屋のデスクの上だよ」
奏「え…?」
瑞希「つまり…このメモを事件前に残せたのは、奏の部屋に入ったことのある人物だけ…」
類「それは…部屋の持ち主である宵崎さんか…一晩だけ宵崎さんの部屋で過ごした朝比奈さんか…」
瑞希「…これは、奏が書いたもの?」
奏「いや…違うよ…」
瑞希「そうだよね…このメモには、『朝比奈』と読めるサインもあるし…」
奏「じゃあ…そのメモって、まふゆが書いたもの…?」
奏「でも…なんでまふゆがそんなメモを…」
瑞希「まふゆは、『ある人物』を呼び出そうとした…そこで、このメモを使ったんじゃないかな」
瑞希「このメモをドアの隙間から入れることで、その人物をこっそり呼び出そうとしたんだよ」
遥「…でも…そのメモで呼び出された人って、本当にいるのかな…?」
遥「たとえ呼び出された人がいても、事件とは関係ない気がするんだけど…」
こはね「どうして…?」
遥「だって、宵崎さんと朝比奈先輩は、部屋を交換してたんだよね」
遥「でも、そのメモの呼び出し先には…『私の部屋』ってあるんだよ?」
こはね「そっか…そのメモで呼び出されたら、その人は…朝比奈先輩の部屋に行っちゃうんだね」
遥「そう…宵崎さんがいた、朝比奈先輩の部屋にね。」
奏「それは違うよ」
奏「私の部屋とまふゆの部屋は、ネームプレートが交換されてたんだよ」
遥「ネームプレートが…?」
瑞希「うん、部屋の交換と同じようにね」
瑞希「そのせいで、奏がいたまふゆの部屋は、『宵崎奏』のネームプレートになり…」
瑞希「まふゆがいた奏の部屋は、『朝比奈まふゆ』のネームプレートになってたんだよ」
類「つまり、『朝比奈まふゆ』のネームプレートの部屋には、本当に朝比奈さんがいたんだね」
一歌「じゃあ、そのメモの通りに動いても…朝比奈先輩がいる宵崎さんの部屋に行けたんですね…」
瑞希「それに、2人の部屋は隣同士…ネームプレートを入れ替えるにはうってつけだった…」
瑞希「じゃあ…それをやったのは誰なんだろうね…もちろん、奏じゃないんだよね?」
奏「うん…」
彰人「それじゃ、誰がやったって言うんだよ?」
ネームプレートの交換が可能だった人物…
それって…
奏「…そもそも、部屋交換のことを知ってたのは、私とまふゆだけ…」
奏「だから…ネームプレートの交換ができたのは、まふゆしかいない…」
瑞希「その事は、まふゆが残したメモの文からも推測できるね」
瑞希「まふゆは、呼び出した人物に対して、部屋のネームプレートを確認しろと言ってる…」
瑞希「ネームプレートの入れ替えを知っていなければ、書けないことだよ」
雫「でも…どうして朝比奈さんは、ネームプレートの交換をしたのかしら?」
瑞希「奏との部屋交換を隠したかった上で、自分のいる部屋に人を呼び出したかったからだよ」
絵名「部屋の交換を隠した上で人を呼ぶって…そんなことして何の意味があんの?」
瑞希「それは…まふゆがその人物を招き入れた後…そこでなにが起きたかを知る必要があるよ」
司「その後に起きたことか…おそらく…」
司「朝比奈に呼び出された人物が…そこで朝比奈に襲い掛かり…」
司「む…?犯人が判明したぞ!呼び出された人物が犯人なのだ!!」
寧々「その人が誰かが問題なんでしょ…」
穂波「あの部屋では、最初に朝比奈先輩と犯人の争いがあったんですよね?」
穂波「だったら、その争いの中に、さっきの問いの答えがあるんじゃないでしょうか…?」
愛莉「じゃあ…そこでどんな争いがあったのかを、はっきりさせればいいのよね」
志歩「そういえば、あの現場には模擬刀が落ちてたな…あれは、争いに使われた物なんじゃないの?」
杏「そういえば…あれってなんなの?」
奏「まふゆに勧められて、私が護身用に持って帰ってきた物なんだけど…」
奏「きっと、犯人はあの模擬刀でまふゆの右手首を骨折させたんだよ」
彰人「朝比奈さんの骨折が模擬刀のせいって…なんでそんなことがわかんだよ?」
まふゆの骨折が模擬刀のせいだとわかる根拠…
まふゆが骨折した箇所…それしか考えられない
奏「まふゆの右手首を見ればわかると思うよ…」
奏「右手首の腫れてる部分に、何かキラキラしたものがついてたでしょ?」
えむ「これって…金箔?」
奏「うん、あの模擬刀の金箔だよ」
奏「あの金箔って、少し触っただけでもすぐ手についちゃうんだけど…」
奏「それがまふゆの手首に付いてたって事はさ…」
司「そうか!そこに模擬刀の打撃を受けたからだな!!!」
類「なるほど…だんだん真相に近づいてきたねぇ…」
えむ「それじゃあ、どんどん謎を解いていこー!」
杏「それじゃあ…あの部屋で起きた事の一部始終を解明しよっか」
奏「あの部屋で起きた事…か…」
まふゆの死の真相を突き止めるために、まずはそれを明らかにしないと…
杏「あの部屋で争いが始まった際に、犯人は模擬刀を手にしたんだよね?」
こはね「じゃあ、そこで最初の一撃が繰り出されたって事…?」
杏「うん!模擬刀の先制攻撃だよ!」
愛莉「そこで朝比奈さんは骨折してしまったのね…」
志歩「…慌てて応戦しようとした朝比奈先輩は…」
志歩「隠し持ってた包丁を取り出したけど……」
司「それすらも犯人に奪われてしまって殺されたのだな…!!」
奏「ん…?ちょっとまって白石さん、それは違うよ」
杏「え…違うって、どこが…?」
奏「さっき言った、模擬刀の先制攻撃って部分だよ」
奏「最初に模擬刀の一撃があったとは考えられない…」
杏「…?なんで…?」
奏「模擬刀の鞘にある傷だよ」
奏「刃物で斬りつけたような傷があったよね」
こはね「刃物って…包丁だよね…」
穂波「そうだね…現場にあった刃物って包丁だけだし…」
奏「最初に模擬刀の先制攻撃があったとすると…」
奏「鞘に包丁の傷があった事の説明がつかないんだよ」
奏「だって、模擬刀で襲い掛かるなら、刀を鞘から抜くはずだよね」
冬弥「たしかに…鞘を付けたままだと重くて邪魔なだけだからな…」
遥「それに、攻撃力も下がるから…デメリットしかないね…」
雫「それなら、どうして鞘に傷が…?」
瑞希「んー…例えば、いきなり包丁で襲われて…咄嗟の防御として模擬刀で受けたとしたら…」
瑞希「刀を鞘から抜く暇なんてないはず…」
絵名「つまり…最初に模擬刀が使われたのは、包丁の攻撃に対する防御のためだった…」
みのり「ってことは、先に襲いかかったのは包丁を持った人物だったんだね!」
司「つまり…犯人はあの部屋に訪れた直後、そこに隠してあった包丁を見つけ…」
司「その包丁でいきなり、朝比奈に襲いかかったわけだ!」
司「そして、朝比奈は咄嗟に模擬刀で応戦したが、その模擬刀すらも奪われてしまい…」
司「それで…模擬刀の一撃で骨折された後……とどめに包丁で…」
瑞希「いや…模擬刀で応戦したのがまふゆだとは考えられない…」
彰人「はぁ?なんで考えられねーんだよ?」
瑞希「まふゆは模擬刀を手にしてない…それは、まふゆの体のある部分を見ればわかるはずだよ」
まふゆが模擬刀を手にしてないとわかる…まふゆの体のある部分って…
模擬刀を使えば、必ず触れていたあの部分のこと……だよね…
奏「…それって、まふゆの手の平だよね…?」
奏「まふゆの手の平って、綺麗なままだったし、模擬刀を手にしたとは思えないよ」
寧々「どうして手の平を見ただけでそんなことがわかるの…?」
奏「さっきも言ったけど、あの模擬刀の金箔って、ちょっと触るだけでもすぐ手についちゃうんだよ」
奏「あの模擬刀の柄の部分は、かなり塗装が剥がれてたでしょ?」
奏「きっと、あの模擬刀を使った人の手に金箔がついたからだよ」
奏「だから、もしまふゆが模擬刀を使ってたなら…まふゆの手の平がきれいなのはおかしいよ…」
絵名「ん〜……シャワールームに逃げ込んだ時に、洗い流したとか…?」
奏「ううん、それも考えられない」
奏「事件発生の時間を思い出してみて…午前1時だったよね」
奏「夜時間の間はシャワールームの水は出ないから、洗い流すのも無理なんだよ」
司「む……朝比奈が一度も模擬刀を手にしていないという事は…」
司「模擬刀を使ったのは、犯人の方だったのだな!」
司「………待て…だとすると…その模擬刀の鞘に、包丁で傷を付けたのって…」
奏「…!まふゆ…?まふゆが…包丁で…?」
こはね「で、でも…確か…最初に襲いかかったのって…?」
類「初めに包丁を持った人物が襲い掛かり…その咄嗟の防御として模擬刀が使われたんだったね」
絵名「じゃあ…最初に襲いかかったのも…!!」
奏「まふゆってこと…?」
瑞希「…これでわかったよね…?」
瑞希「まふゆは…単なる被害者じゃなかったんだよ」
類「被害者どころか、まるで自らが殺人を行おうとしてたようだねぇ…」
奏「…え…」
類「朝比奈さんは厨房から包丁を持ち出し…そして自分が泊まる部屋に犯人を招き入れている…」
類「さらに、先に包丁で攻撃を仕掛けたのも朝比奈さんだとすると…」
杏「むしろ…加害者みたいな行動…?」
愛莉「そういえば、宵崎さんに部屋の交換を頼んだのって、朝比奈さんだったわよね…?」
愛莉「もしかして、朝比奈さんが宵崎さんに部屋の交換を頼んだのって…」
みのり「か、奏ちゃんに…罪をなすりつける為…だったのかも…!?」
奏「まふゆが…私に…?」
瑞希「…………」
遥「でもそう考えると、ネームプレートの件もしっくりくるね…」
遥「朝比奈先輩は、標的にした人物を、自分が泊まる宵崎さんの部屋に呼び寄せたかった…」
遥「その部屋で殺人を犯すことによって、疑惑を宵崎さんへ向けようとしたんだね…」
こはね「でも、その為には部屋の交換を隠したまま、標的を呼び出さないといけなかった…」
冬弥「そうか…部屋の交換がバレると、間違いなく怪しまれるからな…」
寧々「その為に…ネームプレートを交換したの…?」
一歌「で、でも…その計画は危険すぎる気が…」
一歌「たとえ標的を殺す事に成功しても、そのあとに宵崎さんが部屋の交換をバラしてしまったら…」
類「それはどうかな…?こんなに朝比奈さんを思っていた宵崎さんに…朝比奈さんを切り捨てるような事はできないと思うよ」
類「朝比奈さんもそう思っていたからこそ、部屋交換に宵崎さんを選んだんじゃないかな」
奏「…………」
志歩「超高校級の優等生と超高校級の作曲家……普通なら、どっちの主張を信じると思う?」
一歌「そ、それなら…朝比奈先輩は、そのことも計算にいれて…?」
えむ「そう…だったんだね…」
遥「でも、そんな朝比奈先輩の計画も失敗に終わった…」
遥「包丁で襲いかかった際、先輩は模擬刀の反撃を受けてしまい…」
遥「そこで右手首を骨折して、包丁落としたんだろうね」
杏「それで…標的だった人物に、逆に殺された…」
奏「ちょ、ちょっとまって…」
奏「そんなはずない…だって…だって…ッ」
モノクマ「ねぇねぇ!なんだか議論が脱線してない?」
モノクマ「ほらっ!早く犯人を決めないと…」
モノクマ「時間切れで全員おしおき…なんて事になったら嫌でしょ?」
奏「……」
瑞希「…奏、今は謎の解明に集中して」
瑞希「まふゆを殺した犯人を特定できなければ…全てが終わるんだよ…」
奏「全てが…終わる…?」
でも…もうこれ以上の証拠なんて…
もう……どこにも……
彰人「犯人を決めろっつっても……」
彰人「もう新しい手掛かりはないだろ?」
奏「…あ…!それは違う!」
奏「手掛かりなら…まだ残ってるかもしれない…」
奏「まふゆが残した…ダイイングメッセージだよ」
彰人「…はぁ?」
瑞希「ダイイングメッセージ…まふゆの背中の壁にあったでしょ?」
瑞希「ほら、これだよ…メモを取っておいたんだ」
--- 0_IZIV ---
一歌「なにこれ…読めない…」
志歩「…その前に聞いておきたいんだけどさ、」
志歩「それって、本当に朝比奈先輩が書いたものなの?」
奏「うん…まふゆで間違いないよ」
奏「まふゆの左手の人差し指が血で汚れてた理由…」
奏「きっと、その指で血文字を書いたからだよ…」
司「朝比奈はその前の争いで右手首を骨折していた……だから左手で書いたんだな…」
みのり「でも…結局これってなんの意味があるんだろう…?」
遥「ん〜…これ…なんなんだろう…」
瑞希「分からないだろうね…だって、ほとんどが文字として機能してないから…」
穂波「あれ…?」
穂波「これ…アルファベットに見えないかな…?」
こはね「アルファベット…?」
愛莉「たしかに…最初の0はOとも読めるわね…」
絵名「でも…Oがわかったとしても、やっぱり意味は通らないし…」
奏「…………」
だめだ…分からない…
瑞希「……」
瑞希「………時計回りに…ひっくり返すんだよ」
奏「え…?」
時計回りに…?
そっか…ここに書かれてるのって…
奏「そうだ…ここに書いてるのは…犯人の名前だったんだよ…!」
絵名「え!?手掛かりをすっ飛ばして、犯人の名前!?」
みのり「だ、だれ…?誰の名前が書いてあるの…?」
このダイイングメッセージを…時計回りに180度回転させれば…
見えてくるはず…
奏「謎を解く鍵は…時計回りの回転にあったんだ…」
奏「このダイイングメッセージを、時計回りに180度回転すると…」
奏「『AKITO』っていう文字が見えてくるんだよ…」
奏「…東雲さんの名前だよね…?」
彰人「なっ…!!」
彰人「な、何言ってんだよ…たまたまだろ…」
彰人「たまたま!!そう見えただけだろ!!」
瑞希「いや、偶然なんかじゃない…」
瑞希「まふゆは壁にもたれかかった体制で、背後の壁にメッセージを書いた…」
瑞希「多分、手だけを後ろに回した、後ろ手の状態でメッセージを書いたんだろうね」
瑞希「そんな体制で書いたせいで…正面から見ると、180度ひっくり返った形になったんだよ…」
瑞希「実際に自分で試してみてよ、その状態で書くと、字が反転するはずだから」
遥「ところどころ字が掠れてるのって、残りの体力がなかったから…ってことだよね」
えむ「でもでもっ!そうやって意識して見ると…確かに読める…!」
彰人「んなもん…ただのこじつけだろ……」
彰人「俺が犯人だぁ!?適当な事言うなって!!」
瑞希「弟くんが犯人じゃないなら、なんで証拠を処分しようとしたの?」
彰人「は……?」
瑞希「奏も知ってるはず…弟くんが処分しようとした証拠のこと…」
奏「それって…トラッシュルームの焼却炉の前に落ちてた、ワイシャツの燃えカスの事だよね」
瑞希「多分、犯人はまふゆを刺し殺した時に、返り血を浴びたんだろうね…」
瑞希「その返り血を浴びたワイシャツを処分するために、それを焼却炉に放り込んだんだよ」
寧々「その時に、燃えカスを残したんだ……」
瑞希「犯人も気づいてなかったはずだよ。気づいてたら、もっと慌ててるはずだし…」
瑞希「そうだよね…弟くん?」
彰人「……!!」
雫「でも…そのワイシャツだけで、彰人くんを犯人だと決めれるのかしら…?」
愛莉「そうね…袖口が白いワイシャツを着てる人は他にもいるし…」
彰人「そ、そうだ…!ワイシャツを着てるやつは俺の他にもいる…!」
彰人「そんな燃えカスだけじゃ、誰のものかなんてわかるわけねーだろ!!」
奏「いや…証拠品自体から割り出さなくても…他の点から割り出すことができるかもしれない…」
瑞希「見えてきたみたいだね…全ての謎の答えが…」
奏「うん…なんとなく、だけど…」
奏「そのワイシャツを処分した方法…そこに注目すれば、犯人を割り出せるはずだよ」
彰人「そうか…わかったぞ…」
彰人「トラッシュルームの鉄格子を開けないと焼却炉には近づけねーし…」
彰人「あの焼却炉のスイッチも押せねぇはずだろ…?」
彰人「で…そのトラッシュルームの鍵は…掃除当番が持ってたんだよな…?」
彰人「なら…掃除当番が犯人ってことだよな…!!」
みのり「ふぇ!?」
そうじゃない…掃除当番以外でも、あの焼却炉でスイッチを押す方法はあったはず…
そしてその方法こそ…東雲さんが犯人だということを示しているんだ…!
彰人「トラッシュルームの鍵は掃除当番が持ってんだよなぁ?」
志歩「つまり、焼却炉に近づけたのは…」
絵名「掃除当番だけ…ってこと?」
彰人「焼却炉に近づけなきゃ、証拠隠滅なんてできねーだろ!」
奏「それは違うよ」
奏「掃除当番じゃなくても、証拠隠滅する方法はあったはず…」
愛莉「でも、鉄格子を開けないと…焼却炉の火をつけることはできないのよ?」
奏「いや…それが可能だったんだよ…これを使ってね…」
冬弥「割れているが…色のついたガラス玉…?」
こはね「これを使うって…どうやって?」
奏「犯人は、鉄格子の隙間からこのガラス玉を蹴ったんだよ…」
奏「焼却炉のスイッチ目掛けてね…」
奏「そうやって焼却炉のスイッチを押すことで、焼却炉に火をつけたんだよ」
みのり「て、鉄格子の隙間から…!?」
奏「鍵を持っていた花里さんの知らないうちに、焼却炉がついていたのは…」
奏「犯人が、鉄格子を開けずに焼却炉のスイッチを押したからだったんだ」
奏「それで焼却炉の火をつけたところで、そこに丸めたワイシャツを投げ込んだんだよ」
彰人「お、おい…何言ってんだよ…?」
瑞希「犯人が鉄格子の中に入ってないことは、証拠隠滅後の状況が物語っている…」
瑞希「割れたガラス玉、付けっぱなしの焼却炉の火、燃えカスが残ってしまったと言う雑な処分方法…」
瑞希「掃除当番が犯人なら、もっと丁寧に証拠を隠滅してるはずだよ」
彰人「い、いや…ちょっと待てって…!」
こはね「でも…鉄格子から焼却炉までは、10メートル以上は離れてたよね…?」
こはね「そんな距離からガラス玉を蹴って…ピンポイントでスイッチに当てるなんて…」
こはね「そんなこと、本当にできるのかな…」
彰人「そ、そうだ…そんなの不可能に決まってるだろ…!」
奏「難しいかもしれない…でも、不可能じゃなかったはずだよ…」
奏「いや…犯人にとっては難しくなかったかも…」
杏「ど、どういうこと…?」
奏「…東雲さんの、超高校級はなんだったのか…思い出してみて…」
奏「そうすれば、きっとわかるはずだよ…」
冬弥「彰人の超高校級…」
冬弥「それって、『超高校級のサッカー選手』…か?」
奏「うん、そうだよね、東雲さん?」
彰人「ば、ばか言ってんじゃ…ねーって…!」
愛莉「たしかに…超高校級のサッカー選手なら、10m先の的なんて大したことないでしょうね…」
彰人「ふざ…けんなよ…!!」
彰人「俺は犯人なんかじゃねーよ!!」
彰人「つーか!今の推理だって全部間違ってんだよ!!」
瑞希「…まだ分からないんだね…だったら…」
瑞希「奏…もう一度事件を振り返って、弟くんの犯行の全てを明らかにしよう」
瑞希「それで…終わりにさせよう…」
彰人「だ、だから!何が終わりなんだよ…!?」
奏「東雲さん…あなたがなんと言おうと、全ての謎はもう解けてる…」
奏「…最初から事件を振り返ってみるね」
奏「昨日の夜、犯人はまふゆがいる部屋…つまり、交換した私の部屋に行ったんだ」
穂波「多分朝比奈先輩は、その人物を殺すつもりで部屋に呼んだんですね…」
奏「そしてまふゆは、あらかじめ用意しておいた厨房の包丁で、犯人に襲いかかった…」
奏「そこで、事件が起きた…」
奏「犯人は、私の部屋に置いてある模擬刀に気づいて、反撃してきたんだ」
奏「その時…模擬刀の攻撃によってまふゆは右手首を骨折してしまう…」
絵名「あ…そっか、そこで包丁を奪われたんだ…」
奏「追い詰められたまふゆは、急いでシャワールームに逃げ込んだ。」
奏「犯人はすぐ後を追ったけど、なぜかシャワールームのドアは開かなかった」
奏「私の部屋のシャワールームは、ドアの建て付けが悪かったから、コツを知らないと開けることができなかったんだ」
類「…朝比奈さんは、宵崎さんが教えたから知っていたけれど…」
遥「もちろん犯人は、建て付けのことを知らなかったんだね」
奏「それでも犯人は、なんとかドアをこじ開けて、奪った包丁で…まふゆを…刺したんだ…」
奏「だけど、まふゆは残った力で、壁にダイイングメッセージを残した。」
奏「犯人からも気づかれにくい、背中側の壁にね…」
奏「でもそこで…まふゆは力尽きてしまったんだ…」
奏「まふゆを殺したあと、犯人は慌てて証拠隠滅に取り掛かった」
奏「まず、返り血を浴びたシャツを脱ぎ…」
瑞希「そして、奏の部屋にあったクリーナーで、部屋中を徹底的に掃除した…」
こはね「自分が部屋に訪れたっていう痕跡を消すために…」
奏「そのあと犯人は、脱いだワイシャツを処分するためにトラッシュルームへと向かった」
奏「そこにある焼却炉で、返り血のついたワイシャツを燃やそうとしたんだよ」
志歩「でも、トラッシュルームは鉄格子で塞がれてて…焼却炉に近づけなかったんだよね」
奏「そこで犯人が使ったのは、絵名がランドリーに置いていった、ガラス玉だった」
奏「犯人は、鉄格子の隙間からガラス玉を投げることで、焼却炉のスイッチを入れたんだ」
奏「普通の人なら不可能に近い発想だけど、犯人にはそれを可能にする自信があった」
司「犯人は超高校級のサッカー選手だったから…か?」
奏「うん、正確なコントロールで投げられたガラス玉は焼却炉のスイッチに当たって、焼却炉は稼働を始めたんだ」
奏「こうして証拠を隠滅した犯人は安心して、すぐにトラッシュルームを後にした…」
奏「でもそこには、誤算があったんだ」
杏「投げたワイシャツの一部が、焼却炉から焼け落ちたんだよね、」
奏「そう、それが決定的な証拠になる事に、犯人は気づけなかった…」
奏「そうだよね?東雲彰人さん…」
彰人「…ッ」
奏「あのガラス玉は、絵名がランドリーに置き忘れた物らしいけど…」
奏「東雲さんは、シャツの血を洗い流そうと向かったランドリーで、それを見つけたんじゃないの?」
奏「そしてその時…今の方法を思いついた…」
瑞希「どうなの弟くん、何か反論はある?」
彰人「反論が…あるかって?」
彰人「あるに決まってんだろ…!!」
彰人「つーか、今のって全部推論だろ!!」
彰人「証拠がねーだろ!証拠が!!」
彰人「証拠がなけりゃ、ただのでっち上げだろ!俺は認めねー!!」
瑞希「…奏、教えてあげて…弟くんが犯人だという証拠を…」
瑞希「奏は、その証拠を持ってるはずだよ…」
瑞希「犯人がシャワールームのドアノブからネジを外すとき…一体なんの道具を使ったんだろうね?」
えむ「ねじを外すなら…ドライバーかなっ?」
司「それなら、配られた工具セットの中にあったぞ!!」
類「それを使ったんだろう…他にドライバーらしき物も無かったからね」
奏「それなら犯人が使ったのって、誰の工具セットだったんだろうね?」
奏「きっと犯人は、自分に配られた工具セットを使ったはずだよ…」
彰人「な、なに…言ってんだよ…」
奏「東雲さん…あなたの工具セットを見せてくれないかな?」
奏「もし私の考えが合ってるなら、その工具セットには…使われた形跡が残っているはず…」
類「もし別の用途で使ったのなら、どこでどんな使い方をしたのか説明してほしいね」
瑞希「先に言っておくけど…」
瑞希「無くした。なんて言い訳は無しだからね」
彰人「……ッ!!」
類「……反論はできないみたいだね」
寧々「これで終わり…か…」
---
モノクマ「うぷぷ…議論の結果が出たみたいだね!」
モノクマ「では、そろそろ投票タイムといきましょうか!!」
モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票してくださーい!」
モノクマ「あ、必ず誰かに投票してねっ!つまらない事で罰なんか受けたくないでしょ?」
モノクマ「はいっ!では!張り切って参りますよー!」
モノクマ「投票の結果、クロになるのはだれか!?そしてその答えは…正解なのか!不正解なのかー!」
モノクマ「さぁ…どーなるんでしょー!!」
---
モノクマ「あららっ!大正解!」
モノクマ「今回、朝比奈まふゆさんを殺したクロは…」
モノクマ「東雲彰人くんでしたー!」
彰人「……………」
彰人「ちょ…ちょっと、まてよ…!」
奏「東雲さん…本当に……東雲さんが…」
奏「まふゆを…殺したんだね…」
杏「なんで…」
絵名「なんでそんな事したの…!?」
彰人「し、仕方ねーだろ…?」
彰人「俺だって…殺されそうになったんだよ…」
彰人「だから…その……」
彰人「お、お前らだって…!一歩間違えればこうだったんだぞ…!!」
彰人「たまたま俺が…朝比奈さんに狙われただけで…!」
彰人「運が…悪かったんだ……」
冬弥「………ッ」
彰人「それともなんだよ…?大人しく殺されてればよかったってのかよ…?」
…これではっきりした…
私たちが出した答えは正しかった
それが何?
むしろ、間違ってくれれば…私は救われたかもしれない…
だって…そうじゃないと…
まふゆが私を陥れようとしたことも…真実になるから…
でも…悪いのはまふゆじゃない…
奏「全ての元凶は…あの……映像のせいだ…」
奏「家族のために…私を……裏切った…」
モノクマ「それにしても…やっぱり人間って怖いね〜!」
モノクマ「たかが家族をきっかけに、人を殺そうとするなんてさ!」
モノクマ「あんなに綺麗で性格も良さそうなのに…」
モノクマ「裏の顔は狂気に満ち溢れてたんだね!!」
奏「は……?」
モノクマ「うんうん、わかるよ。わかるわかる」
モノクマ「自分を裏切った朝比奈さんに絶望してるんでしょ?」
奏「…!ふざけないで!!」
奏「全部…全部あなたのせいでしょ…?」
奏「あの映像だって……全部……!!」
瑞希「落ち着いて…奏…」
奏「みず…き……」
瑞希「今はやめておこう……」
奏「………ッ」
モノクマ「あードキドキ。殴られるのかと思っちゃった!」
モノクマ「てなわけで、学級裁判の結果!オマエラは見事にクロを突き止めましたので…」
モノクマ「クロである東雲彰人くんのおしおきをおこないまーす!」
彰人「おしおき…って…」
冬弥「処刑のことか……!?」
彰人「は…?ちょっと待てって…!!」
彰人「仕方なく殺したというか…!」
彰人「せ、正当防衛だ!!」」
遥「…ううん、正当防衛とは言えないよ」
遥「あなたはシャワールームの鍵を壊す時、自分の工具セットを使ったんだよね」
遥「つまり、朝比奈先輩がシャワールームに閉じこもったあと、わざわざ自室に戻り…」
遥「そこから持ってきたドライバーで鍵を壊して、とどめを刺したんでしょ?」
遥「その間…何度も立ち止まるチャンスはあったはず。」
遥「でもあなたは、立ち止まらなかった…それは…」
遥「あなたに、明確な殺意があったからじゃないの?」
彰人「いや……それは…」
奏「もういいよ…」
奏「もう…やめようよ……」
遥「…いいの?」
遥「朝比奈先輩は宵崎さんと一番仲が良かったでしょう?」
遥「その朝比奈先輩が、東雲さんに殺されたんですよ?」
奏「私は…東雲さんだけを責めるつもりはない…」
奏「もちろん、まふゆを責めるつもりもない…」
奏「だって…悪いのは、あいつだから…」
モノクマ「にゃぽ…?」
奏「あなたがいなければ…まふゆも東雲さんもこんな事にはならなかった…!」
モノクマ「……ま、いいや。さっさとクロのおしおきを始めちゃおー!みんな待ってるんだし!」
彰人「頼む…やめてくれ……!」
モノクマ「今回は!超高校級のサッカー選手!東雲彰人くんのために!スペシャルなおしおきを用意しましたー!」
彰人「いやだ……!!」
---
冬弥「あき…と……」
絵名「もう嫌……!」
杏「こんなこと…まだ続けないといけないの…!?」
こはね「何が目的なの…!?」
モノクマ「だーかーらー!絶望が見たいだけだってば!」
モノクマ「それじゃ!またね〜っ!」
奏「………」
瑞希「…奏、ちょっといい?」
奏「…瑞希?」
瑞希「まふゆは死に際…奏のことを考えてたはず…」
奏「なんで…わかるの?」
瑞希「まふゆがわざわざダイイングメッセージを残したのって、奏のため…そうとは考えられないかな?」
奏「あ……」
瑞希「だから…奏……」
瑞希「一緒に乗り越えよう…乗り越えないと…」
奏「……そう、だね……」
奏「…でも……やっぱり…」
奏「せめて……救ってあげたかった…」
瑞希「奏……」
奏「う……まふゆ……」
--- 一章 完 ---