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エピローグ
数十年後の、ある春の日。 中学校の校庭は、満開の桜色に染まっていた。
新入生の喧騒の中、一人の女の子が、校庭の隅でぼんやりと空を見上げていた。 彼女は少し内気そうで、友達の輪に入るのをためらっているようだった。
「――ねえ、君! そんなところで固まってたら、もったいないよ?」
聞き覚えのある、陽だまりのような声。 女の子が驚いて振り向くと、そこにはシャツの袖をまくった、明るい笑顔の男の子が立っていた。
「あ……」
二人の視線がぶつかった瞬間、なぜだか分からないけれど、モノクロだった風景が、一気に鮮やかな色を取り戻したような気がした。
「俺はレン。君の名前は?」
女の子は、少しだけ戸惑ったあと、自分でも驚くほど自然に、花が咲くような笑顔で答えた。
「私は、ハル。……ずっと、あなたを待っていた気がするの」
二人の手が触れ合う。 そこから始まる物語は、もう灰色なんかじゃない。 光と色に満ちた、新しい「青春」の始まりだった。