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夏夜に咲いたその花は
夏夜に咲いたその花は
永遠の恋を灯しだし
決して忘れぬ思い出と
永遠の光輝いた
―賭博師視点―
真夏日。
その日は、本当に暑い日だった。
あのクレンでさえ、上着を脱いで制服の袖をまくっているし、ボカロファンは液体になりかけてるし···。
そう言う俺も、この暑さには参っていた。
何なら、ボカロファンみたいになってた((
そんな感じでグダグダしていると、スマホをいじっていた狐が、こんな事を言い出した。
作者「みんな?今日、自由ヶ丘で夏祭りやるみたい!花火大会とか最高じゃない?」
奏者「え?マジ?行きたい!!」
―夏祭り。
俺が楽園にいた頃も、毎年やっていて、兄さんと参加しに行ったっけ。
兄さんが追放されてから行く事もなくなったけど。
兄さん、何処で何してるだろう···。
魔狼「···夏祭り。楽しそう!ねーえ〜、ライ?一緒に行こうよ!あ···ところで···"ハナビ"って何?」
···え?
クレンは、花火を知らないのか?
奏者「知らないの?花火。」
魔狼「うん···。」
···どうやって説明しようか···。
あ、そうだ。
賭博師「クレン。"ハナビ"っていうのはな?夜空に、すごく大きな光の花が、ぱあっと咲くんだよ!とっても綺麗な花なんだ。」
俺が説明をしてあげると、ボカロファンが付け足しをした。
奏者「だけど、すぐに枯れちゃうんだ。花火はね、魔法の花!」
魔狼「なにそれ···すっごくいいね···✨」
クレンは、目を輝かせながら話を聞いていた。
奏者「よし!早速準備しよー!!」
ボカロファンが言い終わる前に、クレンは、「準備してくる!」と言って部屋から出ていった。
狐も「クレン1人だと不安だから」と言って退出。
部屋には、俺とボカロファンの2人が残された。
それを待っていたかの様に、ボカロファンはこんな事を言った。
奏者「今日がチャンスなんじゃない?」
賭博師「···あぁ。分かってるよ。」
実は、この夏祭りで、俺はクレンに告白しようと考えていた。
初めて会った時、一目惚れして、それから、思いを伝えよう、って思ったけど、中々勇気が出なくて···。
だから、この夏祭りがきっと、最初で最後のチャンスだと思っていた。
賭博師「クレン···なんて反応するかなぁ···。」
俺が呟くと、ボカロファンは微笑む。
奏者「OK、してくれるんじゃない?」
そうだったら嬉しいけど···。
奏者「あ、どうせだし、自由ヶ丘まで私運転する?」
賭博師「やめて。」
せっかくの雰囲気を壊される。
ボカロファンが車を運転すると、100%の確率で「危険」が発生するからやめて欲しいんだが?__それでどれだけ高級車&外車が犠牲になったことか···。__
魔狼「ライ〜!みてみて!狐さんが着物着せてくれたんだ〜!」
そうこうしているうちに、クレンが戻って来た。
翡翠色が基調の着物で、勿忘草色の千日紅の模様が描かれている。
着物を着たクレンは、楽しそうにはしゃいでいて、普段の「魔狼」の時とは違っていた。
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夜。
夏祭り会場の自由ヶ丘は、多くの人で賑わっていた。
夏祭りに参加するのは何年ぶりだろうか···。
案の定、夏祭りは初めてのクレンは、おおはしゃぎだ。
魔狼「ライ~!見て見て!」
賭博師「おーい、あんまり遠く行くなって。」
目を輝かせながら出店を見てまわるクレン。
その横では···。
奏者「見て~、狐さんとお揃い!」
ボカロファンが狐と似た色模様のお面をつけていた。
その横で、狐が笑って見ている。
どこで手に入れたのか、2人はお揃いの浴衣を着ていて、その姿はまるで大親友の様だった。
俺と目が合った狐が口を開く。
作者「···クレンには、"あの場所"で待ってて、って伝えてるから。心配しないで、ライも楽しんで。」
あの場所―。
それは、俺とクレンが初めて会った、思い出の場所。
あそこだったら、人混みも邪魔にならず花火を見れるし、告白には持って来いの場だし、まさに一石二鳥だ。
ボカロファンは「ガンバ!」と手を振って、再び狐と祭りを楽しみだした。
···兄さんがいない点、少し寂しい気もするが、俺も夏祭りを楽しもうか···。
---
―魔狼視点―
魔狼「···遅い。」
遅い。
さっきからずっと待ってるのに。
···せっかく、思いを伝えられるチャンスだと思ったのに。
狐さんに、「ライを呼ぶから待ってて」と言われて、先にここに来たのに。
···ライに、「好き」って言いたい。
それなのに。
魔狼「なんで···なんで来ないの···。」
ライが来る気配は一向にしない。
···嫌われてたのかな···。
そう、思ったら、凄く悲しくなってきた。
急に視界が潤んで、目から大量の涙が零れ落ちる。
魔狼「···ライ···お願い······。来てよ···っ···。」
賭博師「クレンッ!!」
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―賭博師視点―
賭博師「ハァ···ハァ···。ゴメン!!遅れ···て···!!」
ちょっとだけ遊ぶつもりが、あまりの人混みのせいで中々こっちに来れなかった。
慌ててあの場所に行くと、クレンは既に来ていて、うずくまって泣いていた。
魔狼「ライ···!もう、来ないかと···。」
賭博師「そんなワケないだろ。ホラ、花火···見るんだろ?」
そして、クレンの隣に寄る。
クレンは、俺の顔を見て言った。
魔狼「ねぇ···ライ。初めて、ここで会った時の事、覚えてる?」
賭博師「あぁ。忘れないよ。俺が楽園からおさらばして、堕ちてきたトコが此処で···って、どうした?」
心做しか、クレンの顔が紅くなっている気がする。
本人は「何でもない」と言っているが···。
そうこうしているうちに、花火が打ち上がり出した。
クレンはすっかり花火に気を取られ、目を輝かせて見ている。
···今だ。
魔狼「ねぇ、ライ···。······っ!?」
振り向いたクレンを抱き締めると、彼女は驚きの表情をして、俺を見た。
賭博師「あ、あの!!俺···初めてクレンと会った時から、ずっと伝えたいと思ってて···あ···俺、クレンの事が大好きなんだ···!だから···!!···俺と付き合ってくれないか···!!」
沈黙が訪れる。
恐る恐るクレンの顔を見ると、泣きそうな、でも、嬉しそうな顔をしていた。
魔狼「こんな私で···いいんですか···?」
震える声で言う。
魔狼「私も、ライの事···大好き。だから······。」
―これからも、ずっと一緒にいてくれる?
賭博師「あぁ。勿論だ。約束する。ずっと···ずっと、一緒にいよう。」
その瞬間、一際大きなスターマインが打ち上がる。
魔狼「ハナビ、凄く綺麗だね、ライ。」
クレンの言う通り、凄く綺麗だった。
夏夜に咲き誇る魔法の花は、たとえ一瞬で枯れてしまっても。
心の中では、永遠に咲き続けるだろう。
それは、俺とクレンの恋の様に。
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―奏者視点―
木の陰から全てを見ていた私と狐さんは、安堵の溜息を吐く。
成功してよかった。
前々から計画してたから、失敗したらどうなるかとハラハラものだった。
狐さんは、「先行ってるね」と言い残して、夏祭りの会場へ戻る。
···まだ、思い出してないよね。
そう簡単には、思い出せないか。
でも、いつか思い出したら、教えて欲しい。
夜に咲く貴方の花は、一体何色なのか。
もう少しだけ。
もう少しだけ、待っててあげるから。
―《《咲夜》》。
クレンの浴衣の模様の色は勿忘草色。
模様は千日紅。
勿忘草の花言葉は「私を忘れないで」「真実の愛」「誠の愛」
千日紅の花言葉は「不朽」「変わらぬ愛情」「永遠の恋」「色褪せぬ恋」「不死」