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真冬の調律師
凍てつくような寒さが襲う日の深夜三時。
僕は厚手のコートに身を包み、誰もいない公園にしゃがみ込んでいた。
僕の手元にあるのは、細い針が何本も並んだ真鍮製の器具。それを、冷たい土に何度も刺し、無言で霜柱の芯を仕込んでいく。
ただひたすらに延々と続くような作業。
この職に就いたときには何をやりがいとして仕事に臨めばいいんだと悩んだ時期もあった。もっと待遇の良い仕事に転職することだって考えた。
それでも、この仕事を続けるのは、守りたいものがあるから。街のヒーロー気取りか、なんて自嘲しながら、また、黙々と作業を続けていく。
日が上り始める。だけど、ギリギリまで仕込んでおきたい。人が活動し始める、ギリギリまでは。
七時三十分。真冬の澄んだ空気を朝日が照らす。
さほど大きくもない公園全体でも、全体に満遍なく芯を植え付けるのには骨が折れる。
それでも、自分の植え付けた芯が朝日と共に一斉に霜となる瞬間、これ以上ないほどの達成感に溢れる。
街の人々が完全に活動し始める前に作業を終える。
土曜日だからだろうか。雪だるまのように着膨れした子供達が公園へと走ってくる。
子供達が嬉しそうに踏みつけていくザクザクという音を聞きながら、自販機で買った少し暑すぎる缶コーヒーを片手に、僕はその場を去った。