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あの日の続き
この作品は、恋愛系でして、欲を言うのなら最優秀賞とか優秀賞狙ってます。
「あのね、私」
私はその時その続きを言わなかった。
言わなかったじゃなくて言えなかったかもしれない。
ハヤトがなくなって1ヶ月。
私は私の隣にいたはずのハヤトの穴を塞ぐことができずにいた。
ハヤトは私の初恋で好きな人。
あの日、私はハヤトに告白しようとしていた。
「ハヤトのことが好き」という一言を続きとして言おうと思ったら
ズキッ
あの日のことを思い出すと頭が痛くなる。
あの日、朱色に染まった夕暮れの空、黒っぽく見える町並みの中、ハヤトは後ろ向きで私に話しかけ、手をつなぎながら車道を歩いてた。
ちょっと静かになった町並みの中で、私はハヤトに告白することに決めた。
「あのね、私」
と大声で叫んだ。
ちゃんと聞いてるんだか怪しいな。
すると、赤信号だったはずのハヤトの後ろから車の陰が見えた。
「ハヤトッ!!!!!」
ハヤトは
「何」
と大声で聞き返してきた。
「後ろっ!!!!」
でもハヤトが後ろを振り返ったときにはもう遅かったのだ。
ハヤトが振り返ったときに繋いでいた手が離れてしまった。
**キキーーーーーッ ガシャーン**
私の耳に鋭く聞こえたその2音でハヤトの命が奪われた。
車の運転手が自白した。
信号無視で猛スピードで突進して直前までハヤトに気づかなかったんだとか。
その猛スピードではねられたハヤトの体は傷と大量の血と骨折だらけだった。
私は泣いた。
泣いて泣いて泣いた。
1日中、朝が来ても夜が来てもまた朝が来ても泣いた。
ハヤトの人生が、命が、|車の運転手《あいつ》の信号無視と速度違反で、狂わされ、なくなったのがものすごく悔しかった。
きっとあの言葉の続きを言える日は来ないんだろうな。
そう思ってた。
スマホの中のやることリストには永遠に
「あの日の続きを言う」
という欄が残るんだろうな、死んでも。
数カ月後、あの日と同じ朱色の空。
ああ、**あの日の続きが言いたい。**
一人で俯いてトボトボと歩いていた。
目の前に人影が現れた気がして慌てて前を向く。
その人影はハヤトだった。
嘘だ。
「ハ、、、ヤト、、?」
私はおそるおそる聞く。
「おう」
ハヤトはそう答えた。
私の頬を涙が伝い落ちる。
「なんでここにいるの?」
ハヤトは顔をクシャッとさせ笑って言った。
「お前のあの日の言葉の続きが聞きたかっただけ。」
ハヤト、ちゃんと聞いてくれてたんだ。
「ハヤト、あのね、私」
あの日の続き。言ってみせる。
「ハヤトのことが好き」
ああやっと言えた、あの日の続き。
これだけがずっと言いたかった。
**「俺も大好きだよ。お前のこと」**
ハヤトは無邪気にそう言った。
唐突なことだったから私は一瞬でその言葉が飲み込めなかった。
そうか、ハヤトは答えを言ってくれたんだね。
私の目から涙がぼろぼろとこぼれ落ちた。
「やだ。止まんない笑」
止めようとしても溢れてこぼれ続ける私の涙。
「泣くなよそんなに」
アハハと笑いながら私の涙を拭うハヤト。ハヤトの指が肌に触れる。
ハヤトは温かった。
ハヤトが私の手を掴んで走り出した。
ハヤトが速くて転びかけたけど、ハヤトがいるから大丈夫だ。
ハヤトが連れ出したのは踏切だった。
「よくここで遊んだよな」
そうだっけ。小さい頃のことなんか忘れちゃったな。
私はハヤトと踏切の真ん中で追いかけっこをした。
少しすると踏切がカンカンとなりだした。
それでも私は外へ出なかった。
完全に締まり、私以外誰もいない、誰も私を止めない踏切。
向こうから電車が来るのが見えた。
ハヤトが私の手を握る。
スマホのやることリストの最後の1項目はもう消えていた。
一瞬電車の明かりが見えた。でもその一瞬だけで、あとは暗い深海に落ちたように何も感じなかった。
私はずっとハヤトと手を握っていた。
私はもうずっと一生、ハヤトの手は離さないだろう。