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「さよなら」は言わない
Attention
本作品は、「ヘタリア」の二次創作です。西ロマのお話です。(やや腐向け)西ロマは今回初めて書いてみたので、違和感・解釈不一致を感じる箇所があるかもしれません!ご了承ください。
※実際の国、歴史、公式関係者様とは一切関係ありません。一部史実を参考にしていますが、政治的意図は一切ありません。無断転載等の著作権侵害に値することは、いかなる理由があっても認めません。59名表記です。
以下、多くの独自解釈・特殊設定が含まれます。苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
• 歴史的背景(独立・別れ)を元にした、捏造・独自解釈を含みます。
• 前半は少し切なめの、ハッピーエンドストーリーです。
なんでも許せる方のみ、お進みください。
荷造りを終えた部屋は、驚くほど広くて、がらんとしていた。
かつては足の踏み場もないほど散らかっていたロマーノの部屋も、今はいくつかの家具が埃をかぶって佇んでいるだけだ。
「やっとお前のむさ苦しい家からおさらばできるぜ。せいせいするわコノヤロー!」
いつもと変わらない、むしろいつも以上に威勢のいい怒鳴り声が、誰もいない部屋に響く。
ロマーノはわざとらしく鼻を鳴らし、これ見よがしに重いトランクをドスンと床に置いた。
「ははは、そんなに嬉しそうに言わんでもええやん。寂しくなるなぁ」
スペインは笑いながら、ロマーノの頭を撫でようとした。あの、くるんと跳ねた癖毛に触れようとした瞬間、ロマーノは「触んじゃねぇ!」と鋭い音を立ててその手を叩き落とす。
「馴れ馴れしくすんなバカ野郎! 俺はもう、お前の物でもなんでもねーんだよ!」
「おう、分かっとるよ。これからは一つの『国』として、対等やな」
叩かれた手のひらをさすりながら、スペインはただ優しく微笑んだ。
かつて、小さくて、泣き虫で、ちっとも言うことを聞かなかった男の子。
世界中の誰もが「出来損ない」と突き放しても、スペインだけは「俺の可愛いロマーノや」と抱きしめ、トマトを分け合って育ててきた。その子が今、自分の足で立ち、弟のヴェネチアーノと共に新しい時代へと歩み出そうとしている。
「新しい家でも、トマトいっぱい食べや? それと、イタちゃんと仲良くするんやで」
「何回言うんだよ! お前に言われなくても分かってんだよコンチクショー!」
ロマーノはぷいっと顔を背けた。その横顔は、出会った頃よりずっと大人びていて、けれどどこか、幼い子供のようにも見えた。
「おい、もう行くからな!」
ロマーノはトランクの取っ手を強く握り締めると、足早に玄関へと歩き出した。
振り返ったら、どんな顔をしていいか分からなかったのだろう。あるいは、引き返したくなってしまうのを恐れたのかもしれない。
その小さくなっていく、けれど精一杯に背筋を伸ばした背中に、世界で一番温かい太陽のような声で呼びかけた。
「ロマーノ!」
ピクリ、とロマーノの足が止まる。スペインは、胸の奥が引き裂かれるような痛みを堪えながら、最高の笑顔を浮かべた。
「いってらっしゃい!」
支配者と被支配者ではなく、本当の家族として、笑顔で送り出すこと。
『親分』としての最後のプライドと、彼への最大の愛を込めたその言葉に、ロマーノは背を向けたまま、しばらくじっと佇んでいた。
やがて、絞り出すように小さく「……おう」とだけ返すと、今度こそ一度も振り返ることなく、扉の向こうへと去っていった。
ロマーノの姿が完全に見えなくなった後、スペインは静まり返った家に戻った。
ドアを閉めた瞬間、家の中の空気が急に冷たくなったような気がした。
食卓の上には、ロマーノが毎朝使っていたコップが置いてある。
それを見つめた瞬間、笑顔の仮面が、音を立てて崩れ落ちた。
「……あかんわ」
誰もいない、広すぎる部屋。スペインは食卓に両手を突いて、そのままがっくりと頭を垂れた。
「笑顔で、かっこよく送り出すって決めてたのになぁ……。ロマーノ、寂しいなぁ……っ」
抑え込んでいた涙が、堰を切ったようにぽろぽろと零れ落ちる。本当の一人になってしまったのだと、胸の奥がキリキリと痛んだ。
その時だった。
――バァン!!!
「おいスペイン! 忘れ物した……って、」
玄関の扉が勢いよく跳ね返り、息を切らせたロマーノが飛び込んできた。
涙で視界を濡らしたスペインと、目を見開いたロマーノの視線が真っ向からぶつかる。
ロマーノは一瞬固まったが、すぐに顔を真っ赤にして大声を張り上げた。
「な、なんで泣いてんだよチクショー!!」
「えっ、いや、これは、その……」
「 永遠の別れじゃないんだぞコノヤロー! 俺はこれからも、普通にお前んとこに会いに行くし、お前も俺に会いに来い!!」
まくしたてるロマーノの瞳は潤んでいて、怒鳴り声の裏には必死さが滲んでいた。
その言葉を聞いた瞬間、スペインの胸の奥で、頼りなく揺れていた何かがすとんと腑に落ちた。
(――ああ、そうや。何を勝手に、一生の別れみたいに絶望してたんやろ。)
涙を袖で大雑把に拭うと、ゆっくりと立ち上がった。
さっきまでの弱々しさは消え失せ、纏う空気が一瞬にして変わる。
「……そっか。ロマーノから会いに来てくれるんや」
「あ? 当たり前だろコノヤ――うわっ!?」
スタスタと長い歩幅で距離を詰め、驚くロマーノの言葉を遮るように、正面から力強く抱きすくめた。
トランクが床に転がる高い音が響く。
「な、何すんだバカ! 離せっ!」
「離さへん。……ロマーノが、これからも俺の可愛いロマーノでいてくれるんやったら、絶対に離さへんよ」
がっしりと背中に回された腕の強さに、ロマーノは心臓が跳ね上がるのを感じた。抵抗しようともがくが、完全にホールドされてビクともしない。
「な、生意気言うんじゃねーよ、俺はもうお前の……」
「ああ、俺の所有物やない。俺の大事な、世界で一番愛しい『ロマーノ』や。……せやろ?」
抱きしめたまま首筋に顔を埋められ、悪戯っぽく笑う親分の気配に、ロマーノは耳まで真っ赤になって言葉を詰まらせた。結局、いつだってこの男の一枚上手な包容力には敵わないのだ。
「ちぎぎぎ……っ、うるせー!さっさと忘れ物取らせろコノヤロー!」
「ごめんごめん、じゃあ、駅までついてってええか?」
「……ふん。ついて来たいなら、勝手について来いコンチクショー」
ぷいっと顔を背けたロマーノの手を、ぎゅっと力強く握りしめて歩き出した。
いかがでしたでしょうか!私自身、今まで西ロマの作品をあまり見たことがなく、皆様の作品を拝見させていただいたのですが…めちゃくちゃいいですね…ハマりそうです!一生懸命執筆したので、ぜひご愛読ください!