猫背

　猫背を直してみようと思った。元々、数年前に猫背を直していたのだが、なんだか再発してきてしまった。だから、直してみようと思った。 　背筋をピンと伸ばす。最初は慣れない筋肉を使って、背中が痛くなる。時間経過で、気付けば伸ばした背筋がたるむ。それを伸ばす、ただそれを淡々と繰り返すだけ。 　寝っ転がる時の心地よさが、猫背矯正を始めてから倍になった。ずっと背筋を伸ばしていると、背中を丸めていいうずくまりがなんだか癖になる。布団の上でうずくまって、思いっきり背中を丸める。それこそ、猫のように。 　にしても、猫背だなんて可愛い言葉、一体誰が思いついたのだろうか。ただ背中が丸いだけの様子を猫に見立てるだなんて、言葉を考えつく人は、やっぱり思考回路が天才的だ。ことわざや慣用句なんかにも、ぼくは同じ事を思う。昔の人は、どんな事を考えて言葉を世に出していたのだろう。感激するばかりだな。 　猫背を直す。それは一朝一夕で簡単にできる事じゃない。結構苦労もするし、筋肉も痛い。というかそもそも、姿勢を直すだけなのは付け焼き刃なのかもしれない。ストレッチだとか、そういうのをした方が良いとかも、どっかで見た。 　でも、ぼくはこれで良い。 「お、お前また猫背直してんの？」 「うん、不格好になるし」 「ふーん、そうなんだ。あんま無理はすんなよ」 　きみとの会話の種になるなら、ぼくは別に構わないんだ。