公開中
恋人じゃないよね!?
ふわふわの綿菓子もどき
約6年ぶりに再会した彼は、
当時の面影が残りつつも
かなりのイケメンになっている。
動揺と緊張が同時に私を襲う、
言葉が全く出てこないというか
何を話したら良いのかも分からない。
「少年……??」
6年ぶりに再会してその第一声が
「少年」は流石にダメだろう。
「あげはさんお久しぶりです、
……こっち見て下さい。」
と親指と人差し指で俗にいう
「顎クイ」をされる。
長い前髪の奥にある瞳が
私を真っ直ぐに見つめ
「会いたかった、」と一言。
私の心臓は打ち上げられた魚の
ように暴れ始める、
いやでも待てよ、
恋人でもない女性に顎クイはどうなんだ
ルックスが良いから許されるとでも?
この「無自覚女タラシ」とでも
呼んでやりたい。
しかも「会いたかった」なんて
言われたら、意識してしまう。
狡い、この男は狡い。
子供扱いされて不機嫌になる可愛い
ツバサくんはどこに行った、
私は頑なに少年呼びを崩さない
方針でいくことにした。
腕時計の時間を確認すると
18時を指している、
外は冷えるしツバサくんを
自宅に招くことにした。
「少年、とりあえず私の家に来てよ」
「少…年呼び、まぁ分かりました、」
若干ムッとしているツバサくんに
私は心の中でガッツポーズを取る、
とりあえず愛車ピヨちゃんの
助手席に座らせエンジンをかけ
アクセルを踏む、
少し気まずい空気が流れるので
車の窓を少し下げる、
冬の冷えた空気が車内に流れ込み
ツバサくんが少し震える、
「寒い?温かいコーヒーならあるよ」
「じゃ…貰います。」
私は先ほどコンビニで購入した
コーヒーを手渡した。
キャップを開けてそれを口に入れる、
「う…、これ苦いですねこれ……。」
ツバサくんは顔を少し歪ませ
それを飲み込んでいた、
「大人になってもまだ飲めなかったんだね少年は、」
「スカイランドにはこういうのないですから。」
「そっかそっか…、今日夕飯どうせなら餃子作ろっか、好物だもんね!」
「いいんですか!!」
とツバサくんは目を輝かせ返事した。
交差点の信号を右に曲がり
いつもは行かないスーパーに向かう
その間に沢山の話を聞いた、
賢者として国に貢献している事
エルちゃんが私達に会いたがってる事
6年分の話をこの数分で聞かされ
脳が処理落ちしそうだ。
でも話してる時のツバサくんは
とても楽しそうでこちらも嬉しい。
「で!プリンセスがボクの為に
クッキーを焼いてくれて!!」
「本当に楽しそうだね、少年。」
「あ…、ごめんなさい!」
「ううん、聞いてて楽しいから
続けて?」
「続けたいですけどもう着いちゃいましたよ?買い物終わってから続き話します、」
「そうだね」
シートベルトを外し車から降りロックを
かけて買い物に向かった、
先ほどまでの気まずい空気はどこへやら
6年前と同じように話している。
そして何よりツバサくん距離詰めすぎてない!?肩ぶつかるよ?
私達さ恋人じゃないよね!?
距離感バグってるよ!!
ドキドキしつつも冷静を装い
買い物をする。
「あとはー、ひき肉!ましろんのレシピにハズレはないからね!」
「確かに…、」
安売りされている大容量パックを
一つカゴに入れレジで会計を済ませ
再びピヨちゃんに戻ってきた。
「よーしじゃあ帰るか!」
「ですね」
私は法定速度厳守で帰宅した、
比較的ましろんの家の近くに
アパートを借りた、広すぎず狭すぎず
独り身の私にとっては程よい部屋だ、
上着をソファに投げ捨てる。
「疲れたねぇ…、」
「お疲れ様です、」
今すぐにでもベッドにダイブしたいが
グッと堪えてキッチンに立つ。
ふと視線に入ったカレンダー
来月はクリスマス、
恋人も遊べる友人もいない私は
今年もテレビの前でお酒を飲みながら
来るはずもないサンタを待ち続けるのか
思わずため息が出る。
スーパーの袋から食材を取り出し
水道の水で軽く洗い、
まな板の上にのせ包丁で切る
その作業をしばらく繰り返す。
「手伝いますね」
袖を捲り水道で手を洗うと
私の隣に立ち食材を切り始めている。
俗に言う「スパダリ」とは
ツバサくんの事ですか?と
聞いてみたくなる。
「いてっ」
「大丈夫?」
ツバサくんは人差し指をじっと見る、
じわぁと赤い血が垂れる。
私は急いで救急箱を開けて絆創膏を貼る。
「ごめんなさい、慣れてなくて」
「大丈夫、私も最初は切りまくってたから」
「え?怖いですよ、」
「いやそう言う意味じゃなくてさ」
何だかんだで餃子のタネが出来た。
ここからは皮に包むだけ
「少年不器用?」
所々皮から肉がこぼれている。
それを救い上げボウルに戻す、
「慣れてないんですよー!」
「なんだ賢者様はなんでも出来ると
思ったのに…」
「その言い方は酷いですよ!」
とじとっとした目を私に向ける。
私は「にゃはは」と笑って
フライパンを取り出す、
全て包み終わった餃子を
熱したフライパンの上にのせ
焼いてる間はとても暇だ、
沈黙が続く。
「あの」
それを破ったのはツバサくん、
私は「なぁに?」と返事をする。
「好きです。」
何て言った?もう一回言って、
「好き」!?「好き」!?
「好き」って言った!?こんなサラっと
言える?普通!
「はい?」
思わずぎこちないな返事を
してしまった。
「貴女の事好きです、ずっと前から」
「え、えええええ!?」
近所迷惑レベルの大声が出てしまう。
「そんな大声出さないで下さい!」
「ごめんごめん、」
「というか貴女気づいてたでしょう、」
「なにが?」
「ぼ…ボクが貴女に好意を向けてた事」
「そ…そんなぁね?」
まぁ6年前からなんとなく
そうかなー?とは思っていたけど
まさか本当だとは思ってなかった、
するとツバサくんの腕が私を
ホールドする。
「貴女の答え聞かせて下さい。」
本当は分かってるクセに
言わせるとかズルすぎ、
「イエスに決まってるじゃん、」
「良かった、…、なんか焦げてません?」
「え?あぁ!ヤバい!」
慌てて蓋を開けると
若干焦げてしまっていた。
「あちゃー、」
「まぁいいんじゃないです?」
「だよねー」
お皿に盛り付け食卓につく、コンビニで
買ったお酒を手にして
6年ぶりに二人で食事するはずが
さっきの事もあり全く食事が
喉を通らない。
「あげはさん食べないんですか?」
心配そうにこちらを覗いてくる。
余計にドキドキして身体中熱くなる、
「え、あ、食べる」
「あの……やっぱり帰ります、なんか突然押し掛けてごめんなさい。日を改めて来ますね久しぶりにお会いできて良かったです。」
ツバサくんの表情が曇る、
玄関の方へ小さくなっていくツバサくんを
リビングからただ突っ立って見てるだけの 私がムカつく、いてほしいのに
行かないでほしいのに、
足が動いてくれない。
机に置いたままのアルコールの強いお酒
一気飲みすれば明日に必ず影響が
出るがこうするしかない。
私はそれを一気に飲み干した、
視界がぐわんぐわん揺れてふわふわ
浮いてるような気がする、
お酒の力で私の足が動いて
玄関から出ようとするツバサくんを
思い切り抱いた。
「いからいで…、」
「あげはさん!?」
「こっちむけしょうねん、」
「向きましたけども何か…むぐっ!?」
私はツバサくんの唇を酔った勢いで奪った
舌を押し込んで絡めていくうちに
ツバサくんの全てを知れる、
「ん__、」
「ツバサくんっ…、」
君から送られてくる甘い蜜を全て残さず
飲み込む。
「ぷは…」
酸素が足りなくて苦しくなった所で
キスをやめた
「ひとりはいや、となりにいて。」
「…分かりました、」
「ちゅばさくん…すき、」
そこで私の意識が途切れてしまった、
「貴女無防備すぎますよ、」
翌朝私はソファーで目を覚ます、
仕事着のまま寝ていて
慌ててシャワーを浴びる為に
洗面所へいくと
私のデコルテや首筋にかけて
2つキスマークがつけられていた。
「あやつ…、私の寝込み襲って…、」
ソファーの下ですやすやと眠って
いるであろうツバサくん、
今日の夜やり返してやろう。
私はシャワーを浴び、服に着替え
寝ているツバサくんを起こす。
「寝込み襲うとはかなり度胸があるようで?」
「貴女が無防備すぎるからですよ
それに」
私の方をニヤりとしながら指をさす
「まんざらでもないクセに」
そうこの男には全てお見通しだ
まんざらでもない事がすぐにばれた。
「次はキスだけじゃ終わらせないですよ」
笑みを浮かべてるけども
獲物を狙うような目付きのツバサくんに
私は少しビビる、
「お手柔らかに、」
「はい、」
終わりかた適当でごめん
疲れた。