公開中
琥珀色の暴走(続き)
嬢/姫宮
「……っ、この飴、変な匂いしやがって……」
杉元は忌々しげに、床に転がった包み紙を睨みつけた。だが、その指先には、うっかり口に含んでしまった一粒の飴が転がっている。
「ペッしろ、杉元さん! 毒かもしれないんでしょ!?」
楓が慌てて彼の顔を覗き込むが、杉元はゴクンと喉を鳴らして、それを飲み込んでしまった。
「……あ。……飲んじゃった」
「……あ。……あー……」
沈黙が流れる。
一秒、二秒。
杉元の顔が、見る間に耳の付け根まで真っ赤に染まっていく。心臓の鼓動が、隣にいる楓にまでドクドクと伝わってくるほどに。
「杉元さん? 大丈夫!? どこか痛いとか、苦しいとか……」
「……痛くねぇし、苦しくもねぇ」
杉元の声が、これまでに聞いたことがないほど低く、そして熱く掠れた。
彼はガシッと楓の両肩を掴むと、そのままチセの壁際まで彼女を追い詰める。その瞳は、もはや理性の色が風前の灯火だ。
「……ただ、……体が熱すぎて、どうにかなりそうだ」
「っ……!? 杉元さ……ん」
「白石の野郎……ッ。……これ、本当にヤベェ薬だ……」
杉元は荒い呼吸を楓の鎖骨に吹きかけながら、彼女の細い首筋に深く顔を埋めた。
彼の体から発せられる熱量は、まるで焚き火そのもの。重ねられた彼の手が、震えているのが分かる。それは恐怖ではなく、溢れ出しそうな「情熱」を必死に抑え込もうとしている武士の矜持(と理性の限界)だった。
「楓……、俺、もう『不死身』じゃいられねぇ……。……全部、お前のせいだからな」
彼は楓の唇を、今度は「お返し」の時よりもずっと強引に、貪るように奪った。
飴の甘い香りが二人の間に広がり、外の吹雪の音さえ遠ざかっていく。
「……逃がさねぇ。……絶対、離してやんねぇから」
杉元の大きな手が楓の背中に回り、彼女を壊れ物のように、けれど決して拒めない力強さで抱きすくめた。