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幸せの数え方
いつも通りで愛おしい世界の、幸せを数える。
部活終わりの夕焼けを、美しいと思う。
友達とくだらないことで馬鹿みたいに騒いで、笑って。自転車を押す帰り道、ふと顔を見上げて、夕焼けの眩しさに目を細めるのだ。
隣には、同じように「綺麗だねえ」と呟く友達がいる。同じ夕暮れを見て、同じように綺麗だと感じる大切な人が、隣にはいる。
そんななんでもないことが、たまらなく愛おしく思える。
*
雨上がりの葉に乗る雫を、美しいと思う。
雨上がりの朝、葉の上で煌めく雨粒が目に入る。目に映る空は快晴で、あてもなくいい日になりそうだな、なんて思う。ペダルを踏み込んで、一緒に登校する友達のもとへ走っていく。
髪を揺らす風はどこまでも私に味方をしてくれて、このままどこまででも行けるような、そんな気がしてしまう。
そんな朝に、小さな幸せを感じるのだ。
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ひとり、音楽に身を委ねる夜を、美しいと思う。
ちょっとだけ落ち込むことがあった日。眠れない夜のプレイリストを流して、そっと目を閉じる。
大好きな音と揺蕩って、ぬくもりと微睡む。
ああ、このままこの夜が続けばいいのに。そんな憂鬱さえも、もやもやも、なんだか愛おしい痛みに思える。
ひとりきりの夜、孤独も寂しさも埋まらない心も、全部、抱きしめる。
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大切な友達との時間を、美しいと思う。
ふたりで好きなものの話をして、どうでもいい最近あったことの話を交わす。楽しそうな表情に、少し嬉しくなる。
日が暮れてきた頃に、ふたりで帰る。月が綺麗だね。そんなことを言う友達に、からかってやろうともしかしてそういう意味?と冗談交じりで聞いてみると、冷めた表情で違うんだけど、と返される。冷たいなあ、と私は笑った。
分かれ道でまたね、を交わして、君が機嫌がいいときによく歌っている曲の鼻歌を、私も歌ってみる。
大切な人が隣にいてくれることの幸せを、ちょっとだけ噛み締めてみる。
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大切な家族との時間を、美しいと思う。
私の両親は、誰よりもなによりも尊敬できる人だと、私は思っている。たくさんの愛を注いでくれた、世界で一番敬愛する両親を、誇りに思う。
何気ない学校であったことも、同級生の愚痴も、どんなにくだらないことだって、笑ったり、時には真剣に聞いてくれる。寂しい日にはぎゅっと抱きしめてくれる。
そんなかげかえのない家族のことが、私は大好きだ。
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余裕がなくなってギリギリになって、叫びだしたくなる日がある。なにもかも投げ出したくなる日がある。全部最初からやり直したい、なんてことを口にする日だってある。
でも、それでも。私は、私の生きるこの日々を、世界を、たまらなく愛おしく思っている。
そう思う心だけは、なにがあっても絶対に、私の片隅にあってほしいと思う。
美しさも愛おしさも、全部忘れてしまったら、私は私じゃなくなってしまうと思うから。
私の生きる世界を、日々を生きる自分のことを、愛していたいから。
だから私は、今日を諦めない。立ち止まっても、うずくまって歩けなくなったとしても。でも、絶対に「私」を諦めることはしたくない、と思うのだ。
世界の美しさを、優しさを、ぎゅっと抱きしめる。
そんな日々が、ずっとずっと、続きますように。
私は今日も、この美しい世界を生きる。
今日は誕生日だったので、色んなことへの感謝を込めて書いてみました。色々あるけど、毎日のちょっとした美しさは忘れたくないよねみたいな詩のようなものです。
幸せを数えながら、これからも毎日に感謝しつつ、のんひり生きていきたいな。