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遠くの蜃気楼 «1»
どんどん新作増やしてすみません。
※BLです! すみませんが苦手な方はお控えください。
頬杖をつく。
唇を触る。
机に突っ伏す。
耳たぶを引っ張る。
コロコロ変わる体勢に仕草。本人は無意識なのだろうか。
――可愛い。
至ってシンプルな感想を抱く。いや、少しおかしいのかもしれない。
俺、|上条《かみじょう》|楼《ろう》は、恋をしている。......男に。
「楼ー!」
いつもつるむ奴らが今日も、俺の名前を叫びながら近づいてきた。1人は金髪、1人はツーブロック、1人はピアス。バチバチの校則違反を堂々と勝手に正当化している、キチガイ集団。
一方俺は普通の短髪、普通の黒髪。なんの特徴もない。ただ陽キャのよしみということで仲良くしてるだけ。
正直絡みたくて絡んでいるわけでもないから、とっととどこかへ行ってほしい。
「何ボーっとしてんだよ?」
肩を小突かれようやく我に返った。「なんでもねぇよ」適当に返す。
「早く昼飯食おうぜ。腹減って死にそう」
昼休みの教室にはどこかダラダラとした雰囲気が漂っていた。
大きな輪を作り談笑しながら菓子パンを食べる女子たち。弁当にがっつく、猿みたいな笑い声を出す男子の集団。2・3人で隅によって静かに食事する大人しいその他大勢。
しかし、そのどれにも含まれず、孤島のようになった席で1人黙々と弁当を食べる人物がいた。
|日下《ひのした》|楪《ゆずりは》。よく言われる“陰キャ”の権化みたいな、暗くて意思のない気弱な奴。教室にいてもいなくても、気付くのは多分――
「......俺だけだな」
「は? なんだよ急に」
――うわ、心の声漏れた!? 俺キモっっ!?
「ってかお前、今日なんか変だぞ? 熱でもあんのか?」
キチガイ集団の1人が、少し苛ついたように顔をしかめる。俺はそんなに上の空だったのか。
「わりぃ。飯、売店に買い行くか」
俺が言うと、すぐ周りも動き出す。いつから俺はこの集団のリーダーになったのか、わからない。
――本当に話したいのは、アイツなんだけどなぁ。
---
俺が日下を気にするのには、至ってシンプルな理由がある。
好きだからだ(素直)。
実を言えば、日下とほとんど会話を交わしたことがない。
日下とは1年前、高校を入学してすぐ出会った。
最初は全くと言っていいほど意識しておらず、なんならその頃は日下の存在自体認識していたか怪しい。だから一目惚れではないはずだ。
では何故、俺とは無縁だったはずの日下に恋してしまったのか。明確なタイミングは俺にもわからない。
垣間見える彼の優しさ、友人と話しているときの無邪気な笑い声、普段はマスクで隠れるが、よく見たら結構可愛い顔......何気なく彼を観察していたら、どんどん惹かれて虜になってしまったのだ。
とはいえ、俺は告白する気など一切ない。
俺は男。日下も言うまでもなく男。
最近はLGBTや性の多様性が叫ばれているが、俺は正直――自分が男を好きになるなんて、信じたくはなかった。
この日下に対する恋愛感情は、他の人にしてみれば多分気持ち悪いんだろう。俺が密かに軽蔑するキチガイ集団の奴らだって、知ったらドン引きするに違いない。
――この気持ちは、一生心のどっか奥深くに閉じ込めておく。
これが俺の、最近作ったモットーだ。破ってしまえば、今の何もかもが静かに壊れる気がする。
一応、人のことを好きになったのは日下が初めて。言えば初恋なのだが、どうせ何事もなく散っていくのだろう。
そう思っていた。
(≧∇≦)/ ヤッホォォ
どうも〜日桜宵です。そういえば、明けましておめでとうございます!
そしてここまで読んでくださった方、長かったのにありがとうございますー!
とうとうBLを書いてしまいました。実は私、結構ちゃんと腐女子なんです。
それでは今年も頑張りますのでよろしくお願いします〜