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白い袋と黒い角
「良い子にはサンタがやってくる」
そんなもの、信じてはいけない。
ずっと悪い子でいた私にも、プレゼントは届くのだから。
「夜に爪を切ると―――」
「茶柱は幸運で―――」
大人たちのそんな|嘘《デマ》。
他のみんなは信じているけど、きっと迷信だ。
大人が絶対正しい、なんてあるわけない。
大人はそう言う私を見て、困ったように口を閉じる。
この瞬間が一番楽しい。
そんな私は、悪い子なんだって。
人が嫌がるするのは悪いこと?
でも、楽しいんだもん。しょうがないよね。
去年もその前も、ずっとサンタさんからのプレゼントをもらってきた。
ママとかパパに「これほしい」っていったら枕元に置いてある。
サンタさんが来るってことは私はいい子?本当は悪い子なの?
そして、今年もクリスマスがやってきた。
「今年もサンタさん来るかな?」
「いい子にしてたなら、きっと来てくれるわよ」
「でも、私は悪い子なんでしょ?」
私が聞くと、ママは小さく笑った。
「あら、そうなの? ならブラックサンタが来ちゃうかもね」
ブラック、は黒だよね。黒のサンタってこと?
「真っ黒のサンタさん? サンタさん来るの?」
「悪い子にお仕置きしちゃう、こわーいサンタさんよ。」
「そんなのいるわけないじゃん。見たことないもん」
パパはちょっと怖い顔で言った。
「お前もいい子にしてないと、食べられちゃうかもしれないぞ」
パパはそうやって私を脅かそうとする。
私が信じないからって、ちょっとずるい。
「今日は早く寝なさい。サンタさんが待っているよ。」
「はーい」
適当に返事をして、自分の部屋に戻る。
ドアを開けても、当然誰もいない。
黒い服のサンタもいないし、赤い服のサンタもいない。
カーテンをしめようとすると、視界の端で何かが横切った。
目で追うと角をはやした、悪魔のような何かがいる。
黒い霧をまとっていて、いかにも「悪い」やつ。
宙に浮かびながら、探し物をしているような仕草。
意味がわからない。
喉からヒュッとかすかに音が出る。
なんでこんなところに、化け物がいるの。
大きな音を立てて膝から崩れ落ちた。
この音のせいか、悪魔と目があう。
「あぁ、お前だ。やっと見つけた。」
私の本能が危険信号を鳴らし続ける。
目は潤み、体が震え――――
視界が暗転した。
---
目を開くと、私の目の前にはあの悪魔が。
「ねぇ、ここから出してよっ! 私、何もしてないから!」
椅子に縛り付けられ、動きを制限された私にできることはほぼない。
どうか命だけは、と懇願する。
「いやぁ? お前には用があってきたんだよ」
悪魔が指を鳴らす。
その瞬間、私の心のブレーキが壊れた音がする。
薄っぺらい理性が剥がれ落ち、全身の血が駆け巡り、疼く。
枷が外れて自由になった気もするけれど、よくわからない。
「ずぅっと、言われ続けてきただろ?」
**「いい子にしろって」**
間違いない、私にお仕置きしにきたんだ。
悪い子な私をいい子にするために。
心のどこかではそんな恐怖心を抱いている。
ただ、この気持ちは何?
悪魔が指を鳴らしてから止まらない、胸の高鳴りは何なの?
どこかで感じたことのあるような、そんな感覚に陥る。
――――あぁ、思い出した。
大人たちの困っている顔を見たときの、あのときの――――
「っはは、いいな。人間の、しかも小さな子どもの悪意は!」
悪魔が何か言っている。
こいつが、「|私の中の怪物《パンドラの箱》」を解放したことをなんとなく察した。
その証拠に、どろりとした欲望が溢れ出しているのを感じる。
心臓の鼓動が高まる。壊したい、悪いことをたくさんしたい。
うっすらと抱いていた恐怖心なんてどこかに吹き飛び、欲のままに叫ぶ。
「|大人《嘘つき》なんて、みぃんないなくなればいいんだ!」
「いいねぇ。こんな活気、久しぶりだぜ。最高の悪意だな」
悪魔が舌なめずりをする。
「改めて、頼みを言うぜ? 俺と一緒に世界を壊そう」
この問いに、何かを言う必要もない。
私は、差し出された手をしっかりと握り返した。
それは氷のように冷たく、それでいて私と同じ熱を持っていた。
ご閲覧ありがとうございましたー!
ちなみに、主人公が見た悪魔とはクランプスというもので
日本で言うなまはげみたいな存在らしいです。
興味がある方はぜひ調べてみてください。