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楽奈の過去
…ごめんなさい。こんな子で。
わたしはベッドの上のシーツをぎゅっと握りしめた。しみがぽつぽつ、染み込んでいる。
「|楽奈《らくな》、まだ学校行けないの?」
「…うん。」
お母さんの“まだ”というひとことが耳に染み付いてガンガンする。
ドアが開く。もう、こんなことは当たり前だった。いつものこと。
「ねえ、なんで行けないの?」
「…分からない。」
「はあ。もういいわ、仕事行くね。」
呆れ顔のお母さんは、ドアを強くしめた。
お母さんが去ったあと、わたしは階段を降りてダイニングへ向かう。
そして、テレビのリモコンをつける。
「午前9時、午前9時をお知らせします。次のニュースは__。」
時刻が読み上げられると、わたしはますます不登校だと思わされる。
ほんとなら、こんなはずじゃなかったのに。
ほんとなら、「普通」の人生を歩めたのに。
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「楽奈!!」
「…やってるよ、集中力が切れる。」
わたしの親は、教育熱心だった。それも、狂ったほどに。
小学生の頃から1日5時間の勉強を強制。その合間を縫って学習まんがを読むが、大して面白くなかった。
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前に、子供を産んでいたらしい。でも、テストの成績が悪く、非行に走って、自殺した。
それが、わたしの姉らしい。
きっと、わたしと同じように、苦痛を抱え込み、必死に耐えていたと思うけど。
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わたしは逃亡するため、図書室の生活を送った。本の世界でなら、逃げ切れると思った。
そして、一冊の本『アマモアイ』にハマった。完全なる「オタク」になった。
でも、それを話すことはできなかった。
バカにされた。
親からも殴られた。
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チャンネルを変えた。
「続いては、学生調査のコーナー!不登校について__。」
チャンネルを変えた。
友達、いなくなったな。
わたしは冷凍ごはんを食べた。『アマモアイ』のアニメドラマを見て、パソコンに向かって。
こんな日々が、続いていたのに__
リアル人狼のサイドストーリー的な。
本田楽奈の過去を描きました。