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ぼくらは青春ボディーガード②
天空ちさゆ
ぼくボディの②です!
できれば①を読んでから本編をお楽しみいただけるとなお良いです(o^―^o)
では、本編へどうぞ(*・ω・)/
第2話「出会い」
チャイムが鳴り、LHRを終えて下校時間となった。
「颯ー、一緒に帰らない?」
「あ、ごめん。やることあるから先帰ってて。」
「そっか。じゃあ、バイバイ」
「うん、また明日」
今日俺は日直だったので、凛空には先に帰ってもらった。
みんなの分の書類を職員室に提出しなければならない。
職員室はここから少しだけ遠いから、めんどくさいと思いつつも。
今朝の優空の全く反省してなさそうな顔を思い出すと、思わずにやけてしまう。
かといって、雰囲気は全然堅苦しくなかった。
笑いを必死にこらえている子もいたし、先生の後ろで変顔をして、優空を笑わせようとしている子もいた。
むしろ、楽しそうだった。
やっぱ俺のクラスだな、と思う。
職員室に書類を提出すると、つっぱしって家に帰った。
クラスや学校から離れるのは寂しいけれど、早く明日になってほしいから。
前へぐんぐんと進み、さらにスピードを上げて、もうすぐで着きそうってころに。
「あっ……」
教室に、宿題に使う教科書を忘れてきてしまった。
わーん、なぜ思い出す、俺の頭!
……いや、思い出した方がマシだったかもしれない。
俺は、教科書を忘れて宿題をできなくなったことをみんなに知られて、笑いものになっている俺の姿が目に浮かぶ。(決していじめられているわけではない)
まあ、それはそれでみんなにとっていいかもしれないけど、俺からしては成績が下がるかもだし、恥ずかしいし。
「よしっ!」
俺は迷わず方向を変えた。
いきをきらしてしばらく走っていると…
「?」
地面に、奇妙に光るものが落ちていた。
「…コイン?」
そのコインは学校のほうから右の分かれ道に点々と続いていた。
「……」
颯は、吸い寄せられるようにコインを拾いながら歩いていた。
いつもの俺の好奇心もあるけど。
もしコインが落とし物だったら、交番に届けるか、戻しとけばいいかだけだし。
俺は、そのコインをなんとなく太陽にかざしてみた。
「なんかすげー……」
そのコインは、なにかと不思議な模様だった。
文字らしき模様が彫られてあったが、それはサビていてよく見えない。
数分ぐらい拾いながらたどっていくと、だんだんと森の中に入っていくようだった。
…………だけど、俺はまだ気づいていなかった。
こんなことになるとは———
「ん…?」
一か所にコインが三枚置かれていることに気が付いた。
そこには、観葉植物のように青々とした落ち葉が一点に置かれてあった。
まるで、何かを落ち葉で隠しているようだ。
気になって、慎重に落ち葉を掻きわけると……
人が入られるような穴があった。
「もしかして……モグラ?」
いや、モグラがコインを落としていくわけがない。
かといって、人がこんなに深く掘れるわけがないし。
まさか——コビト?
もっと奥を見ようと顔を近づける。どうやら、この穴は奥深くまであるらしい。
そこまで見て、ハッと気づく。
「こんなところに落ちたら、ひとたまりもないな」
いくら好奇心でも、こんなところには入ったりしないしな。
もうひきかえそうと立ち上がって方向を変えたとき。
ズシャッ
「っ!」
俺は落ち葉ですべり、深い穴に落ちてゆくのだった。
「う……」
体がズキズキと痛むのにも関わらず、目を見開いた。
どうやら、俺はビックリしすぎて気を失っていたみたいだ。
さっきまで森の中にいたから、まぶしく見えるな。
俺の視線の先にあったのは————
「は……?」
そこには、大きな大広間があった。
床はガラスみたいに光っていて、上には大きな宝石がたくさんついたシャンデリアがあった。
周りには、花が活けてあった。
「これって……完全に屋外!?」
その前には、どーんと男の人が革張りの椅子に座っていた。
男の人と向かい合わせになってうつむいた少女もいる。
その少女は俺と同じ年ぐらいの背だった。
年齢までは分からなかったけれど。
「どうして———なんだ!」
「ごめんなさい——————」
会話からすると、少女はどうやら男の人に怒られているみたいだ。
あ、もしかして、あのコインはお城のものだったのか?
俺はしばらく考えを巡らせながら、周りの景色に目移りしていた。
少女がぱっと俺のほうを見た。
「え…?」
目が合った瞬間少女は、小さい奇麗な声を出した。
頭の奥がキーンとして、クラッとなった。
不思議すぎるほど青く澄んでいて。
床のガラスよりも光がおさめてあるような目だった。
女の子は、髪は少しグレーをおびていて、シンプルな白いワンピースを着ていた。
俺は、時がとまったように見とれていた。
男の人が気付いたのか、男の人もこちらを見た。
…………ああ、違う、時は正常に動いているんだ。
その人は顔色を変えて、俺を見てすぐさまこう言った。
「侵入者だ!侵入者だぞーっ!!!!」
「えええぇぇぇ~~~~~!?」
「すみません、急にお邪魔して……」
そのあと俺は、兵隊みたいな人に捕まりかけたけど、少女がそれをとめてくれた。おかげで、おわびとして中に入ってくれと少女に言われたのだ。
男の人はまだ怒っていたけど……
だから今俺は、とっても可愛いメルヘンな部屋の中にいた。
「いえ、いいの。なんだかごめんなさい。お父様が…」
俺は、なんだか一般人の俺がこんな部屋にいていいんだろうか…と、思った。
なんだか…ものすごく申し訳ない。
俺が好奇心でコインをたどって。
しまいには中に入ってしまって。
男の人を怒らせてしまって。
優空に『必ず失敗する』と思ったやつがこんなことをしてしまった。
俺がうんうんとうなっていると。
コンコン、と、知らないおじさんがドアの隙間から顔をのぞかせた。
「お邪魔してよろしいでしょうか、お嬢様」
「いいわよ、カゼオ。」
少女が、ちらっとドアの方を見て、言う。
改めて思ったけど、このお城って、警備が厳重すぎて科学の域を超えていると思うな。
なんだか秘密がありそうだ————
ん?
少女の言葉が心に引っかかる。
かぜお?
カゼオ?
「「あーっっ!!!!」」
すっとんきょうな声が、部屋中に響く。
声の正体は、俺と、カゼオと呼ばれたおじさんだった。
俺は一人のおじさんを指さした。
おじさんも、俺のほうを指さした。
「ど、どうしたの、カゼオ?」
少女がおどおどして、おじさんと俺を順番に見る。
「あ、お嬢様、実は————」
おじさんが、お嬢様に説明しはじめる。
おじさん——風夫おじさんは、俺のお母さんのお兄さん————
つまり、おじさんだったのだ。
「つまり、颯はわたしの甥っ子ですよ。」
風夫おじさんってちゃんと敬語使うことあるんだな。
あ、別にばかにしてるってわけじゃないけど。
なんだかいつもおしゃべり好きでズボラなおじさんが、意外だなぁ~って思っただけ。
聞いていると、風夫おじさんは少女の執事らしいのだ。
聞いたことはあるけど、ずっと冗談だと思ってた。
風夫おじさんが少女に説明し終えると、少女は納得したようにうなずいた。
「まさか風夫の甥っ子だったなんて……あっ、自己紹介!」
少女は気を取り直すようにして、自己紹介をはじめる。
「私の名前は、|夜桜楓《よざくらかえで》です。お互い、風っていう漢字が入ってますね。」
夜桜さんは、ふふっと小さく笑う。
俺の胸が、ドクンと高鳴った。
これが、ときめきというのか、運命というのか。
今俺は、どんな顔をしているだろうか。
はっ、ホワンとしてる場合か!
俺はブンブンと首を横に振る。
「あの、ここにたどり着くまで、コインが落ちていたんですけど、夜桜さん、のものじゃないですか?一応、拾っておいたんですけど。」
手汗まみれになったコインを差し出しながら、名前で呼んだら失礼かな、と思った。
気にするとこそっちか!と、うつむきがちに自己ツッコミを入れながらも。
「わっ、これお父様が………ありがとうございます!颯さんって優しいですね!」
夜桜さんに、手をぎゅっとにぎられる。
一瞬、ドキッとした。
「颯のいつもの好奇心でたどってきたってわけだね。はっはっは。」
「ちょっとおじさん!」
好奇心はまちがってないけど、夜桜さんの前で言うのはちょっと遠慮してほしい。
こっそりと夜桜さんのほうを見ると、肩を震わせて笑っていた。
……『お嬢様』って、こんなに温かい人もいるんだ。
しばらく夜桜さんと風夫おじさんでしゃべっていると。
「あっ!」
俺は、手くびの上にある腕時計を見た。
もうとっくに、5時過ぎをさしていた。
ああ~……宿題を取りに行くの忘れてた!
今まで現実逃避していた俺は、ひとり、絶望していたのだった。
その後俺は、夜桜家の黒塗り高級車を借りて送ってもらった。
しかも、家までついてきてくれて。
なにからなにまで、申し訳ないなっていう沈んだ気持ちが中にあった。
こういうのを、「いたれたりつくせり」っていうんだな。
でも、嬉しいこともあったのだ。
それは、風夫おじさんに『また遊びに来てくれ!ただし、夜桜家のことはみんなに内緒だぞ!』
と、メッセージが送られてきた。
それと、夜桜さんに会えたこと。
なんだか、気持ちがふわふわした。
今あのことを思い返すと、本当に不思議な感じがした。
あれが、秘密の館…っていうか、むしろ城だったかもしれない。
でも、秘密も分からないし、優空のマネージャーの友達も、あの風夫おじさんとは限らない。
俺はベッドにあおむけにダイブした。
明日、優空に聞いてみよう。
メッセージアプリを優空とつないでいるけれど、それでは物足りない気がした。
反応が見てみたかったのだ。
もちろん、凛空の反応も。
どんな反応をするかな…———
俺は、おじさんから送られてきたメッセージを読み返す。
明日も、相変わらずの毎日。
でも、それが今は嬉しく感じられたのだった。
次回、城の秘密が明かされる!?
コメントよろしくお願いします( `・∀・´)ノ