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第一話 人生万事塞翁が猫科(?)
お茶漬けおいしい
黒衣の少女side
こんにちは、皆さん。
今僕がどこで何をしているかというと…
「ねぇ、『彼』見てて楽しい?」
「そうだね。まぁ…面白いかな」
「悪趣味だね」
河の対岸で少年の決意を見ている。
「うるさい…うるさい!うるさーい!よし!この次に通りかかった奴を襲って、そいつから金品を奪ってやる!」
「「……」」
どうやらこちらには気づいていないようだ。
「…前言撤回。二度目でも面白い」
隣りで普が呟いた。
…面白いなぁ、あの少年。
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謎の少女side
相変わらずのボロい服を着た敦。
あれだ、不景気だわ。
アマネは彼を見ているのがおもしろいらしい。
確かにリアクションは面白いけどね。
にしても…荒れてんなぁ、敦。
成る程、金に目がくらむと人間ってああなるのね。新しいことを学んだわ。
前は見られなかったからなぁ。ここ。
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黒衣の少女side
「あ」
「ん?…げ」
犬神家じゃん。…犬神家じゃん?
「溺れ方が?」
うん。
「ええい!」
あ。
少年飛び込んだ。
人命救助だな。
…本人が望んでるかは別にして。
対岸からうっすら声が流れてくる。
「川に流されてましたけど…大丈夫ですか?」
「助かったか…ちぇっ」
ちぇっつったぞ。
「ちぇっ?!」
人に助けられておいて。
「何度見てもクズね」
「『ちぇっ』ってとこだけすごい鮮明に聞こえたな」
「君かい?私の入水を邪魔したのは」
「自殺?!」
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謎の少女side
「そう!私は自殺をしようとしていたのだ!それなのに君が余計なことを…」
声高らかにぐだぐだと文句を言う『奴』。
「そうだ」
「?」
隣りの彼女がいきなり歩き出した。
道の方向でも橋の方向でもなく『川に』
「…へ?」
「そろそろ向こうに行きたい。しかし橋まで行くのは面倒だ。だから飛び込む。」
「え、ちょっ」
私の手は虚しくも空を泳いだ。
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黒衣の少女side
思い出した。
そういえば僕…最後に泳いだの何時だ?
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少年side
「え、また人が?!」
「おや」
「た、助けないと!」
その時頭の上で少女の声が響いた。
「大丈夫。私が行くわ」
「っぇ?!」
「おー」
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黒衣の少女side
「…助かった。普」
「ほんと馬鹿ね」
「おやおや、二人揃ってスヰミングの練習かい?」
「五月蠅い。第一お前が悪いんだ。仕事をサボって川を流れたりするから…」
「そう!いっつも回収させられるのは私なんだ。いい加減にしろ」
「え、もしかして僕に言ってる?」
「えっ…と」
少年が話に入れなくて困っている。
「あ、僕は…」
ぐぅぅ……
「…空腹かい?少年」
「じ、実はここ数日何も食べていなくて…」
ぐぅぅぅぅ……
「奇遇だな。私もだ。」
「そ、それじゃあ!」
「ちなみに財布は流された。」
「え…そんな…」
二人の視線が僕に集まる。
は?なんで
外套のポケットに手を突っ込む。
「…あ」
そういえば基本的に財布は持たないんだった。
買い物の予定はなかったからな。
「ということだ。ちなみに僕も空腹だ」
すると今度は普に視線が集まる。
「彼女は異能生命体。財布は持ってないよ。」
「そういうこと」
「わぁ!じゃあ全員で餓死するまで…」
「は?」
「あ"?」
「え?!」
「…誰か奢ってくれる人を探そうじゃあないか」
「こんなところに居ったか!唐変木!」
「あー国木田君!お疲れ様」
あ、財布。
「国木田さんお疲れ様でーす(いろんな意味で)」
「何がお疲れさまだ!疲れるのはすべてお前のせいだ!この自殺嗜好!お前はどれだけ俺の計画を乱せば…」
全然聞こえない。素晴らしい川のせせらぎ。
「財布…あ、そうだ!よいことを思いついた。彼は私の同僚だ。彼におごらせればいい!」
「人の話を聞け!」
…ほんとになんにも聞こえなーい。向こう岸の金髪の男の声なんてきこえないな。
「君、名前は?」
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異能生命体の少女side
「中島…敦ですけど」
「ではついて来たまえ敦君!何が食べたい?」
「あの…できれば…」
「なに遠慮はいらないよ(私の金じゃないから)」
「茶漬けが食べたいです」
…彼らしいね。
「ふふふ…はっはっは!餓死寸前の少年が茶漬けを所望か」
いいじゃない。30杯くらい食べさせてやれ(私の金じゃないし)
「俺の金で太っ腹になるな!普!おいアマネ、お前の異能だろう!管理しろ!」
「えー無理だよ」
然うね…彼女には私を管理できない。なぜなら彼女の異能じゃないからね。
「あ、アマネ…?」
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黒衣の美少女アマネside
「あぁ、僕の名前だよ。そして彼女は普。異能生命体。」
「名前一緒じゃ…」
「表記が違う」
「メタ…?」
「(⌒∇⌒)」
「な、何でもないです」
「で、このクズが太宰だ」
「あ、どうも―クズでーす」
「え・・・・?」
「別名わかめ脳よ」
「えへへw」
「え・・・・・・?」
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「あ~食った~…もう茶漬けは十年は見たくない…」
「お前💢人の金でこれだけ食っておいてよくもぬけぬけと!」
まぁまぁ国木田さん。禿げるぞ。
「いや本当に助かりました。孤児院を出てヨコハマに来てから、食べるものも寝る所もなく、あわや餓死するかと…」
「君、施設の出かい」
「出というか…追い出されたんです」
「それは薄情な施設もあったものだね」
「おい太宰、俺達は恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる篤志家じゃない。仕事に戻るぞ」
「そういえばさっき軍関係の依頼とおっしゃってましたが、何のお仕事を?」
「なァに…探偵だよ」
「…異能集団、武装探偵社と言えば聞いたことがあるのではないか?」
異能集団武装探偵社。軍や警察には頼れないような危険な仕事を請け負う、昼の世界と夜の世界、その淡いを取り仕切る薄暮の武装集団…。
そして僕の所属している会社だ☆((
「おお!」
…びっくりした。
「あんなところに良い鴨居が!」
「立ち寄った茶屋で首吊りの算段をするな!」
「違うよぅ。首吊り健康法だよ」
「何だそれは」
「ええー!?国木田君知らないの!?すごく肩こりにきくのに!」
…胡散臭い。
「何!?そんな健康法があるのか!?」
いや信じるなよ。
「ほら、メモメモ」
「くびつりけんこうほう…」
「ま、嘘だけど」
あーあー敦君引いてるねぇ…
ふと視線が合ったのでにっこり笑っておいた。
あ、引かれた。
え、待ってなんで?
「お疲れ様、アマネ」
ホント疲れたよ。普…
「あの…今日のお仕事と言うのは…」
「あァ!」
「ほらほらぁ国木田さんそんな少年に八つ当たりするな。ビビってんじゃん。」
「…すまん。軍の依頼で、虎探しをしている。」
「近頃街を荒らしている、噂の人食い虎だよ」
その時ガタン、と隣で椅子の倒れる音がした。
横目に見ると少年が床に転がっている。
「どうした?敦君」
「ぼ…僕はこれで失礼します」
「待て小僧。貴様何か知っているな?」
「無理だ!奴に人が敵うわけがない!」
「貴様、人食い虎を知っているのか?」
「あいつは僕を狙ってる…殺されかけたんだ!この辺に出たんなら早く逃げないと!」
おっと、国木田がスタァになってしまう。
「っ?!」
「悪いね。あまり目立ちたくないから」
「…茶漬け代は腕一本かすべて話すか、だな」
「ハァ…アマネ。もう少しおしとやか~な制圧方法はなかったのかい…?」
「…腕を後ろ手に捻り上げるor床に少年が叩きつけられて腕を折られる。さァどっちが目立つ?」
「…はぁ…さて少年。君はあの虎の何を知っている?」
「ウチの孤児院はあの虎にぶっ壊されたんです。畑を荒らされ…鳥小屋も壊され…それに倉庫も……死人こそ出なかったけど、貧乏孤児院がそれで立ち行かなくなって、口減らしに僕は追い出された。あの人喰い虎…僕を追いかける様に僕の行く所の先々に現れるんです。この間も…」
そこまで言うと少年は一度言葉を切った。
その姿を思い出したのだろう。
「施設を追い出された2週間前から、何度もあいつの影を見た」
「その虎を最後に見たのはいつの話だい?」
「鶴見の辺りであいつを見たのが、確か四日前です」
「確かに、虎の被害は二週間前からこっちに集中しているな。それに四日前に鶴見の辺りで虎の目撃証言もある」
「敦君これから暇~?虎探しを手伝ってくれたまえ」
「いやですよ!」
「国木田君は社に戻ってこのメモを社長に」
「おい、二人だけで捕まえる気か?まずは情報の裏を取って…」
「いいから。ほらぁアマネちゃんも行こうよ」
「…めんどくさそう」
「普は?」
「また囮にされそうで厭ね」
「信用ないなぁ…しないよそんなこと―」
「ぼ、僕は嫌ですからね!それってつまり、餌ってことじゃないですか!誰がそんな」
「ハァ…報酬出るけど」
「報酬!?報酬って…そんなものじゃ釣られませんからね!」
「時給こんくらいじゃあないかい?」
「んーっと。危険性もあるからこれにこれを足して…それから…」
「そうだな。…これくらいだけど」
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「太宰さん、何を読んでるんですか?」
「いい本」
「こんな暗い中でよく読めますね」
「目は良いから。それに内容は全て頭に入ってるし」
「じゃあ何で読んでるんですか?」
「何度読んでもいい本はいい」
「あ、アマネさんは何を…?」
「そうだね。本を読んでる」
「な、何の…?」
「んー…嫌いな本だよ」
「嫌いな本…?何故…?」
「嫌いな本でもね、役には立つんだ」
「…普さんは」
「国木田君と一緒に社に戻った」
「…本当に虎はここに現れるんでしょうか」
「現れる」
「心配いらない。虎が現れても私の敵じゃないよ。こう見えても武装探偵社の一隅だ」
…前回は彼女を囮にしたそうだけどね。
「すごい自信ですね。なんか羨ましいです。僕なんか孤児院でもずっとダメな奴って言われてて…その上、今日の寝床も明日の食いぶちも知れない身で…確かにこんな奴がどこでのたれ死んだって誰も気にしない…いや、いっそ虎に食われて死んだ方が…」
「さて、そろそろかな」
…僕が虎の囮にされるのが、か?
「今奥で物音が!きっと奴ですよ太宰さん!人食い虎だ!僕を食いに来たんだ!」
「落着きたまえ敦君。虎はあんな所からは来ない。そもそも変なのだよ。経営が傾いたからって、そんな理由で養護施設が児童を追放するかい?第一、経営が傾いたのなら一人二人追放した所でどうにもならない。半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋だ。」
…彼がこの町に来たのが二週間前。虎が町に現れたのも二週間前。
彼が鶴見の辺りにいたのが四日前。同じ場所で虎が目撃されたのも四日前。
「国木田君が言っていたろう。武装探偵社は異能の力を持つ輩の寄り合いだと。」
あまり知られていないが、この世には異能の力を持つ者が少なからずいる。そして、その力で成功する者もいれば、力を制御できずに身を滅ぼす者もいる。
「多分施設の人達は虎の正体を知っていたが、君には教えなかったのだろう。
君だけがわかっていなかったんだよ。
君も異能の力を持つ者だ。
現身に飢獣を降ろす月下の能力者」
わーかっけぇ。
現れたるは、白虎。
身軽に攻撃をかわしていく太宰。
「アマネちゃんパースッ!」
「はぁっ??!」
結局こうなるのかよ!
うーわつよい。
でも、
「獣に食い殺される最後というのも、なかなか悪くないけどね…君では僕を殺せないよ」
『人間失格』
「…セクハラだ」
…ビタンッと音がした。
大丈夫かな。…大丈夫だよね。
「おい太宰!」
「遅かったなぁ国木田君。虎は捕らえたよ」
…お前の手柄にするな。
「まさかこの小僧が」
「虎に変身する能力者だ」
「まったく…何だこのメモは」
「“15番街の倉庫に虎が出る。逃げられぬ様、周囲を固めろ”…実に完結で良いメモだ」
自己満足するな。それに…
「要点が抜けてるわ。次からは事前に説明してよ。おかげで非番の奴らまで借り出す始末だよ。後で皆に酒でも奢ったらどうかな。…賢治君はジュースね」
おや、普。
「あ、アマネ」
「なんだい、怪我人は無しかい。つまんないね」
「中々できるようになったじゃないか太宰。まぁ僕には及ばないけどね」
「でもこの人、どうするんです?自覚はなかった訳でしょ?」
「どうする太宰?一応、区の災害指定猛獣だぞ」
「実はもう決めてある」
「やめてよ?『うちの社員にする!』とかいうの」
「うちの社員にする!」
「はああああ!?何の権限があって貴様は」
ぐだぐだと小言を言う国木田。
「起きろ少年!」
うっわ寝起き最悪ぅ
「敦君、変身中の記憶は全く無しかい?」
「何の事です?」
「あ、でもまだ右手に残ってる。アマネーちゃんと無効化してよー」
うるせ。
「右手?…うわあああああああ!なにこれなにこれ!やだやだやだやだ!」
白くてふわふわで肉球…いいね。
「中島敦!」
太宰が声高らかに名を呼んだ。
無論皆ビクッとする。
「これより君は私達の仲間になれ。今日から君は武装探偵社の一員だ」
「はい?」
…はぁ。
ということであとがきのアマネだ。
なんかキャラ崩壊とか口調迷子とかやばいらしいな。
どうした?作者。
「いやぁ今テスト前日で」
じゃあやるなよ
「だって海嘯さんが楽しみにしてるって…」
お世辞だよ馬ァ鹿
「そ、そんなバナナ…」
そんなくだんない冗談言ってる暇ありゃあ勉強しやがれ
「うっ…いいから早く次回予告してよ」
はいはい、次回『或る爆弾も元はメンヘラの仕事道具』
自殺嗜好のセンスなんて僕は欲しくないね。
てかこの題名何だ?
「結構こだわってんだよ。題名」