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episode8
席順
おんりー MEN ドズル おらふくん ぼんじゅうる
ネコおじ先生
おらふくんSide
僕には不思議でたまらんことがある。
何で魔成語ってこんなにも意味わからへんのやろ。
先生の言葉、全部耳に入っとるはずやのに、全く理解できん。
みんなはなんでそんなペラペラ喋れるん?
隣のぼんさんは寝とるし……。
あかん。このままだとテスト赤点確定や!!
まだこの授業一時間目なのにもうわけわからんのやもん!
「ドズルさぁん、MEN〜!へるぷみー!」
「大丈夫?おらふくん。ショートしちゃってるじゃん。」
ドズルさんはめっちゃ優しい。
こういう時、真っ先に助けてくれる。
MENやおんりーもこっちに来てくれて、みんなで教えてくれた。
もちろん先生も!
「わかった〜!!」
「よかった〜。」
「一件落着!」
時間はかかったけど理解はできた。
けどテストで赤点取るか取らんかはその日の僕次第やな!
くかーっと寝息を立てているぼんさんを横目に、僕はノートを閉じた。
「ぼんさーんっ!!起きてください!!次の授業外ですよ――!!」
「ふぁぁぁ……。もう下校時間?」
「そんなわけないじゃないですか!寝ぼけてないで行きますよ。」
ドズぼんの二人はいつまで経っても変わらない。
何でやろ。僕らがちっちゃいときからこんな感じやった気もする。
ドズさんは小さくても赤パンだけやったし、
ぼんさんに関してはサングラス外しとるとこを見たことすらない。
「おらふくん?行くよ。」
「あー!おんりー!待ってやー!!」
何やろう。何かが起こりそうな予感がしたんや。
気の所為なら、いいんやけど。
---
「じゃあ始めましょう!三時間目は魔法実技です。」
「げっ………。」
ぼんさんがあからさまに嫌な顔しとる。
しゃーない。ぼんさんが一番苦手な分野と言っても過言やないもん。
「まぁまぁ。でも実技ってことは卑怯もありじゃないんですか?」
「じゃあやろう。」
「何でそれでやる気出すんすか!?」
卑怯でやる気出すんかい。本当にぼんさんっておもろいな〜。
ってかドズさん、狙ってたやんな?
ぼんさんのやる気の出し方心得てるやん。
「ただの卑怯じゃないのよ。新しいの思いついたからやりたくて!」
「それでも卑怯でやる気出さないでくださいよ。」
「はいはい、始めるよー、こっち向いてー!」
先生がパンパンと手を叩いて二人を止める。
そうでもしないと一生続いていくやろし……。
先生、ナイスプレーや。
「じゃあ今日は、敵と戦うときの練習をしましょう。
この魔人形たちを全員倒すまでこの授業は終わりません。」
何やって!?
先生、手に抱えとる数え切れん人形は何ですか?
それ全部倒さなあかんの?
「鬼畜ぅ………。」
「ドラゴン討伐のほうが簡単じゃない?」
「多っ!時間どんだけあっても足りひんやろ!」
嫌や〜!!下校時間すぎてもうたらまた執事さんに叱られるし〜!
ドズルさんニヤニヤするのやめてや〜!!嫌な予感しかせぇへんのよ!!
「先生!!これ何でもありですか?」
「もちろん!」
「ポーションも、卑怯もOK?」
「大丈夫!!」
やった、と二人がキラキラした目でこっちを見ている。
嫌な気しかせえへん。授業でひりつかんでええわ。
「やる気出すのはいいっすけど、何体いるんすかね。
数によっちゃ下校時間までに帰れるかどうかわからないっすよ?」
そや。そや。よう言うたわ、MEN。
けど、授業終わらんと帰れへんのも事実やし………。
やっぱやらなあかんの?
「大丈夫!困ったらこのぼんじゅうるが
魔力吸い取りポーションで解決してくれる!」
「なんすかそれ!?」
「めっちゃ卑怯やないですか!!」
「世界の理ってなんだっけ?」
「それはやめようか。」
あー、突っ込みの|四重奏《カルテット》が。
っていうかぼんさん、そんなのつくってたんや。
やっぱりぼんさんって薬学とか医学得意よな〜。羨まし。
「じゃあ始めようか!」
ぽぽん。魔力が込められた魔人形が大きくなって、僕らより大きくなっていく。
数多いよな、と前から思っとったけど、やっぱり多いやろ!!
数え切れんわ!!!
「あっちゃー。えーっと、200体くらいいるかな。」
に、200。しかもこいつら、結構強い。
これ、ただの魔人形じゃなくて強化版や!!強さが普通と桁違いのやつ!!
「とりあえず周りのやつ吹っ飛ばすから適当に逃げといてくれ。」
MENのTNTがぽんすかこっちに飛んでくる。
何体か吹っ飛んどるけどこいつら耐性でもついとるんとちゃうか、ぐらいに数は減らない。
「どりゃぁ!!!」
「ほいっ!」
おんりーとドズルさんが半分くらい相手にしてくれとる!
ありがてー!……って!そんなの言うとる場合とちゃう。
僕も加勢せな!
弓を作り出して構えて、何体かに命中させる。
弓は直撃すれば一発やな。
ただ、それにしても数多いわ。構えてる隙にやられてまう。
敵の少ない場所に走り込みながら、汗を拭う。
TNTにしろ、弓にしろ、一人で戦うにしろ、みんなで戦うにしろ、
単体にしかダメージは与えられなさそうやな。
「どうすればいいんや……。」
僕にできることは、ただ弓を引き続けることや。
おんりーとドズルさんの援護や。MENと一緒にな。………あれ、ぼんさんは?
ふと周りを見渡してみる。どこにもおらへん。
人一倍背の高いぼんさんや。やのにどこにも見当たらへん。
「ぼん、さん?」
不意に弓が引けんくなった。おんりーもビクッとした。
MENは正常に(?)TNTを発射してばかりだったけど。
「おらふくん!前!!」
だめや、手が震えとる。これは授業や、授業、授業!!
今は大魔法学校の一年Aクラス、三時間目の魔法実技の時間や!!
目を覚ませおらふ!!怖がってる場合とちゃうやろ!?
実践じゃこんな事考えてる暇はない!!
弓を引け!!目一杯!!僕は王子や!怖いものはあらへん!!
ドスッ……
相手の胸に矢が突き刺さった。
と思うと、相手は氷に包まれ、その氷が周りにまで広がって敵を足止めしてくれる。
「今や!!」
「おらふくんナイスっ!!!」
「MEN、周り任せた!」
「りょーかい!」
一気に戦況が動き出す。
ドズルさんとおんりーは2人で人形を一体一体倒していく。
MENはTNTで周りのやつをふっ飛ばす。
僕は弓矢で狙い撃ちや!
「ふぅ……だいぶ減ってきたね。」
チームプレイが功を奏し、数はだんだんと減っていく。
耐性も切れてきたのか、TNT一発で5体は倒せるようになってきた!
「よし!あとちょっと______」
「それを言うのは、まだ早いですよ?」
猫おじ先生がなにかのスイッチを持っている。
嫌な予感が蘇る。
先生から放たれる殺気。体が動かない。さっきとは違う感覚。
なんや、これ………。
「誰が、これだけだと言いました?」
ドンッ。地面からまた、数え切れんばかりの人形が湧き出てくる。
「嘘っ………!?」
「まだいんのかよ……。」
あかん。一回目より数倍、いや、十数倍いる。
無理や、こんなの。どうしろっていうんや。
僕の弓じゃ、一体一体しか倒せへんし。
おんりーやドズルさんの体力もこの数じゃつきてまう。
一回目以上に耐性はついとるやろし、火薬も難しい。
どうしよう。あぁ!!どうしよう!!
このままじゃ!授業でみんな死んでまう!
僕はどうすればいいんや!
「ぼーんさん。何してんすか。」
ドズルさんののんびりとした声があたりに響き渡る。
余裕たっぷりに、あの人は笑っていた。
「もう。最初からサボらないでくださいよ。
でも、今この数相手できるの、あなたしかいませんからね?ぼんさん。」
その瞳は、はるか上空、雲の上を見上げていた。
この心の高揚は、何なんや。
まるで幼い頃、ヒーロー物を見ていたときのような。
あの感覚が、蘇ってくる。
「もー!授業サボれる機会なんてそんなないのに〜!!」
空から、箒……改造ファンカーゴに乗ったぼんさんがおりてきた。
太陽と重なって、眩しい。
「言ってる場合ですか?僕ら死んじゃいますよ〜?」
「はいはい、わかりましたよーだ。」
ノリが軽い。命の危機だって本当にわかってるんやろか。
わかってないんやろな………。むしろこの状況ひりつきで楽しんどるやろ2人とも。
「ひりついてきたねぇ、ドズさん?」
「そうですね。結構面白かったり。あなたが寝てたらジ・エンドでしたけど。」
ほら。そういうところや。
変わっとらんし変わってほしくない。
そういうところが、二人なんやから。
とんっと地面に降り立ったぼんさんは、
僕らを守るようにドズルさんの隣に立つ。
「んじゃ、一発で終わらせちゃいますか〜。」
「久しぶりですね、やるの。では。」
「「御武運を。」」
二人は飛び回る。パリンパリンとガラスが割れる音がする。
ポーション?そう思ったら後は早かった。
「|粉砕魔法《パワー・イズ・ザ・ベスト》」
ドズさんの魔法で周りの人形が粉々に砕け散る。
それにしても脳筋が脳筋のためにつくったみたいな呪文やな。
それでも、残党はまだたくさん残っている。
すると次はおんりーが前に出た。
「置いていかないでください。
自分、まだ暴れたりないんですけど。」
そう言うとおんりーは目にも止まらないスピードで飛び始めた。
ヒュンヒュンヒュン。何度か風の音がした。
すると………残党の殆どがばらばらになって崩れ落ちた。
「すごっ……。流石おんりー!!」
「おらふくん、怪我ない?」
「うん!僕はピンピンしとるよ!!」
あれだけいた敵は、もう肉眼には映らへん。
先生が唖然としてるわ。
「せんせ、これで終わりでいいですか?」
「え、うん。」
ぼんさんは笑った。これで終わりなのが嬉しいのか。
ぼんさんらしいと言えばらしい。
……ぼんさん。この人が来てから戦況は一変した。
見た感じではポーションを投げただけに見える。
けれど、ドズルさんはぼんさんが来た瞬間、余裕を見せるようになった。
この人は一体、何者なんやろう。
「よっしゃ!!ドズさん、購買行こうぜ〜!」
「《《授業》》は終わってませんよ、まだね。」
ドズルさん自身、わかってへんのかもしれへんけど。
ぼんさんは、ドズルさんにとって特別な人なのかもしれない。
「そういえばドズさん。あの脳筋丸出しの魔法は何ですか?」
「あ、せや!|粉砕魔法《パワー・イズ・ザ・ベスト》!」
「あれ、笑ったほうがいいやつですか?大真面目な方ですか?」
「大真面目な方!!」