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15.神殿1
すこしグロテスク描写あり
わたくしが11歳になる年のはじめ、わたくしは通例通り神殿に1年間住むことになった。
はじめのころは…
この世界の神々…5柱のことを説明され、お祈りし、自らの手で作業をして過ごした。
どんな内容でしたっけ…
この世界は5柱の神々が暇に飽きて、気まぐれに作った。だから、楽しませるために「神々のいたずら」を起こす…いや、これはわたくしがいたずらをされた時に説明されたこと。あとは…神々のおかげで魔法が使えること。心の神は例外で、魔法ではなく呪いをつくる。
神殿は、神々が気まぐれでつくったこの世界を神々の気まぐれによって壊さないことを祈り、感謝を伝えるために存在する。
神殿で育てている作物は神々に供えられ、神々が気まぐれで作った聖女を守る。
それくらいだったかしら?
そういえば…わたくしは自らの手で作業することは嫌いだったわね。
なぜでしたっけ?
確か…汚れるのが嫌いで、神々が嫌いで、そのためにしなければならないことも嫌いだったのでしょう。
神々が嫌いなのは今もだけど、汚れるのが嫌いなのはくだらなかったわ。もう少しマシな理由もあったでしょうに、なぜかこれを他の人に言っていたのよね。
他のことは、あんまり覚えていない。
これも「神々のいたずら」のせいなのか、はたまたわたくしが覚えていないだけなのかは分からない。
仲がいい子…そんなのいたかしら?
確か、神殿で一緒に過ごしていた子たちとは関わっていない気がするのよね。
でしたら、神殿で一緒に住んでいるわけではない子かしら?
神殿では…森に行くとき、孤児を保護するとき、など、外に出かける機会はあった。そこで出会ったのかしら?
あの様子だと、何回もあったことがありそう…孤児?
あぁ…思い出してしまったわ…。
孤児とは何回も喋ったことがあったはずよ。
公爵令嬢として、不自由のない暮らしをしていたからかしら?彼らのことが気になり、孤児院には何回も遊びに行った。
…けれど、彼女はきっといなかった。あんな純粋な少女は、いなかった…はず。まだ思い出せてないからかもしれないけれど。
「クラン様、今日も一緒に遊ぶ?」
「いいわよ。何をしたい?」
「私はね、鬼ごっこ!」
問いかけると、また別の子が答えてくれる。
「じゃあわたくしが鬼になるわ。10,9,8…」
あぁ、大人げないこと。孤児にまでわたくしと言い、クラン《《様》》と敬称をつけさせている。
孤児に…彼らとわたくしは、少なくともあの時は、対等だったはずなのに…
そう、ある日、大人が孤児院を襲ってきた。
「孤児にお金を使うな!」
「そうだそうだ!」
「俺達が稼いだお金が入っているんだぞ!」
「どうして…?」
「なんだこの女。こいつも孤児か?」
「あなた達が親に無償で育てられているのと一緒じゃない!なぜ、彼らだけが救われないの!?」
無我夢中で叫んだのだと思う。
けれど、大人たちは襲撃をやめなかった。
「孤児を殺せ!」
「神殿に無駄なお金を使わせるな!」
「どうして!ここは神殿よ!神々が見ておられるわ!その面前で神殿の行いを…神々へのお礼を…否定するの!?神々への冒涜じゃないの!?」
もう、何もかも無我夢中だった。
大人たちは、一瞬勢いが弱まったように見えた。安心した。
「けっ、神々などいるわけねーだろ。」
「あんなもん、神殿が金稼ぎのために言っている戯言だ。」
「あんなもん信じるな。」
どうして…どうして…!
神殿は、不思議な場所だった。神々の存在を証明してくれた場所だった。
なのに…!なぜあの大人たちは、信じないのよ!信じれないのよ!
「それはね、彼らには余裕がないからよ。」
巫女さんが教えてくれたわ。
「そっか、わたくしたち貴族とは、やはり違うのですね…。」
「あなたは貴族。しくみを変えることができる者。もし、将来、この経験を悔やむことがあったら、民に余裕がある政治を行いなさい。」
「そっか…ありがとうございます、頑張りますね。」
何で、忘れていたんだろう。
彼らは…孤児たちは、あの後、
「やめなさい!」
「うるせえなぁ。」
その一言に、我を忘れてしまった。
「風!」
暴れた。大人たちの皮膚を、切った。
人殺しは…怖い。だから、表面を何回も切った。
あたりには…血が散らばった…。
「ごめんなさい…。」
「いいのよ。クランはみんなを助けるために立ち上がったのよね。片付けもクランがやってくれた。それなのに、なぜ、謝るの?」
「だって…みんなを…助けられなかったわ!」
「クランが何もしなかったらみんな助からなかった。十分よ。」
「もっと早く自分が力を使っていれば良かった!そしたらみんな…!」
「クラン、もう気にするのはやめなさい。」
「無理よ!」
「ここは神殿、懺悔する気持ちがあるなら、神々に祈りなさい。」
目の前が明るくなった気がした。
さてと、少しずつ過去を解明していきます。
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