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無能と言われ勇者パーティから追放された俺は最強になって見返すことにしました。
3年前…。
俺は王様から直属に選ばれ、俺は勇者パーティに専属された。
「聖剣に選ばれし者、勇者ベルクよ!其方には魔を討つ使命を与えられた。よって、この世を脅かす魔を討ち倒し、ここに戻りなさい。使命を果たすためならば、己が良き道に進むために、考えて行動することも忘れぬように。」
聖剣に選ばれし男…ベルク。
白くて気高い重厚な服を身にまとい、大層ご立派なマントを地面につけ、ひざまづいていた。
「では!ここに居る皆が無事帰すように!勇者御一行の出陣を讃えよ!」
一斉にトランペットやらの楽器が演奏されて、魔法の花吹雪が舞い降りた。
列を成して赤いカーペットの道の横を並んでいた鎧の傭兵も、その音を聴いた途端に、一斉にカーペットの方を向いた。
俺の名はレウザ。この国1番の僧侶だ。
…自分で言っていても、恥ずかしいが。
こうして、俺は勇者パーティの一員として、旅を始めたのだが…
まさか、こうなってしまうとは、想像もつかなかった。
「財政カツカツ〜。高い武器とか買いすぎよ?ベルク。」
「そうだよ。いくら勇者とて、何事にも崇拝されるわけじゃないんだから。」
「そうそう。特に私たちとかね、あんたの使いっぷりには冷や汗が出るわ。」
「もう少し節約してくれたまえ。」
手持ちの路銀は、とっくに銅貨15枚と、底をつきかけていた。
ちなみに、さっきまで勇者のお金の使い方にケチをつけていたのは、魔法使いのレーナと、大剣使いのゴルフの2人である。
「仕方ないじゃない。いよいよ危険地帯ゴルゾーに入る。その為の安全確保に武器の買い替え、そこの生物への耐性をつけるアクセサリーに…あと、毒でやられない武器となると、相場がぐんと跳ね上がるからね…」
危険地帯ゴルゾーでは、毒を持った魔物がわんさか発生している。その毒は人体や金属に多大な影響をもたらし、原型を留めないほどにしてしまう。
だけど最近、ゴルゾーに生息する魔物への耐性がついた武器が開発された。相場は本当に高い。
「そうね。冗談よ〜。でも、もう食べ歩きとかはろくにできないわね〜。」
レーナがそう茶々を入れる。
左手にとても豪華に彩られた魔法の杖をしっかり握って。
「ハッハ!まぁそうだな。我も善戦するよう心がけるな。」
ゴルフもそう意気込んだ。
両手に強そうな大剣をもって…
って、あれ?俺の武器は?
「あ、あの〜。」
一斉にみんなが俺の方を向く。
「俺、の武器は…」
「お前は留守だ。」
「…へっ?」
「今回は毒を持った敵…いやただの敵じゃない。人体はもちろん、金属も溶かしてしまう猛毒だ。まだこの毒に対する完全な回復魔法は確立されていない。」
「でっ、でも!怪我したら大変じゃないか!ただの回復魔法でも軽い処置はできる!」
俺は必死に講義をした。
するとレーナが割って話に入ってきた。
「回復魔法なら、私も使えるよーん。」
「魔法使い如きが!回復魔法を語るな!」
バゴン。
気づけば俺は、レーナを押し倒していた。
「いったぁ…いってて…」
「おい!何すんだよ!」
ゴルフが勢いよく俺に殴りかかってきた。
するとベルクが襲いかかってくるゴルフを取り押さえてくれた。
「レウザ、さっきの発言は…」
ベルクは俺が魔物みたいに見つめてくる。
「言葉通りだよ。…俺が生涯をかけて献身した回復魔法を、いとも容易く使えると言われて、腹が立って…」
「レーナがいけないんです!俺を馬鹿にするから!…俺は国一番の僧侶、なのに…」
ゴルフが激しく鼻息を立てて、俺の方をギロリと睨んでくる。
レーナも左腕を押さえながらゆっくりと這い上がり、俺に拘束魔法をかけてきた。
「おいっ!何すんだよ!」
「勘違いしてるみたいだから言うけど、君は優秀なんかじゃない。」
ベルクが唐突にそう言う。
「ベルク?勘違いしてるのは君じゃない?ただ最後の方でみんなが頑張って引き抜こうとした聖剣を、緩み切った聖剣を抜いて、俺が選ばれましただ?君は運が良かっただけだろう。違うか?違わないよな?」
「確かに僕は運が良かった。でも、それを言うならば君もじゃないか。」
「…何を言いたい。」
「今までの戦闘で、君が魔力を消費したのがどれくらいだったと思うか?」
魔力を消費した量は、普通ならわからない。
だが、勇者は聖剣のお陰で、パーティの中の誰がどれほど魔力を使ったのか可視化することができる。
ベルクは聖剣に手をかざし、呪文を唱えて、魔力の消費量を映し出した。
「これが君の魔力消費量。14だね。簡単な回復魔法を一回使った程度だ。もしかしたら君が特別で魔力消費をしにくい体質だったとしても、レーナが478、ゴルフが154。実は、パーティの中の誰に回復されたか、僕メモを取ってたんだけどね。レーナがダントツだったよ。」
「…おかしい。」
「そして、君に留守をしてもらいたかった理由だけど、言っちゃ悪いが君は足も遅いしパワーもあまりよくない。護身術も使っているところも見たことがない。ハッキリいって、国一番の僧侶の実力とは思えなかったんだ。」
「足手纏いになるっていいテェのかよ!」
「そうだよ。」
ベルクは俺の目を痛いほどにじっとみつれられる。
額に冷たい雫がつたーっと流れるのを感じてしまった。
「でも、さっきのことは頂けない。だから、君にはパーティを抜けてもらいたい。」
「あーわかったよ!どうせ俺は無能だ!言われなくたと抜けてやるよ!」
勢いのまま、俺は勇者パーティを抜けた。
でも、俺はレーナの言葉を思い出す。
回復魔法を使えるだ?たったそれだけのくせに俺を煽りやがって。
クソが、クソがクソがクソが…!!
そもそもあんなパーティにいたのがいけないんだ。俺が間違っていた。
俺は勇者パーティに選ばれた国一番の僧侶だ。勇者パーティという小さなハコに収まるには勿体無い。
…よし!この村で回復魔法を使って、英雄として讃えられよう。
そうすれば勇者どもも俺を認めてくれるだろう。
土下座させて足を舐めさせよう。俺はそう決心した。
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「…僕に合わせないと罪を吐いてくれないと聞いたけど、まさか、ね…」
ここの村の人たちから手紙をもらい、僕はここに来た。
どうやら元勇者パーティのメンバーで、僕が来ないと話にならないと喚いて、取り調べがろくに進行しなかったみたいだ。
名は____、レウザ。
勇者パーティの僧侶だった。
「罪状は?」
「通りすがりの村人を刺して、回復魔法を使っていた。だけどね、血がダバダバ出てたし、出血死しちゃったの。つまるところ殺人。人殺しだよ。」
僕の横に立っている、中年の警察が目撃者からの情報を読み上げる。
「国一番の僧侶だーとか、俺が英雄だとか言っちゃってねー、本当困りましたよ。」
面会室で、俺はクタクタの顔になったレウザと向き合った。
「…話は警察さんから聞いている。なぜそんなことをしたんだい?」
レウザは、下を向いたまま答えた。
「英雄になって、お前らを見返したかった。」
「回復魔法を使って、死にかけの人を救えば、英雄になれると思ったんだ。俺は人殺しじゃない。英雄になるべき人材で、国一番の僧侶だ。お前みたいな凡夫とは違う。」
「レウザさん、貴方は国一番の僧侶なんかじゃありません。」
「…お前、何を。」
「よく聞いてください。国には教会がありますよね?」
「それが俺の居場所だな。あそこ以外教会はない。」
「教会では、僧侶がいます。それも数多く。しかも教会の上の人は激務です。なにせ教会の様子、怪我人の数。ぜーんぶ見ないといけませんし。」
「…」
「そもそも、貴方が本当に国一番の僧侶であれば、パーティにいることは
ドンッ
「うるせぇぇぇぇぇえ!!」
「さっきからごちゃごちゃごちゃごちゃ屁理屈を!俺は落ちぶれじゃない!無能じゃねぇ!謹んで言えよ!勇者のくせに勇者のくせに勇者のくせに____。」
「吐かせましたよ。…もう、帰ってもいいですか。彼のそばには居たくないんです。」
「いいですよ。さぁ、気をつけてお帰りください。」
わざわざすみませんと、中年の警察官は少しお辞儀をして、ベルクを出口まで案内した。
ベルクが出るまでずっと、怒り狂う男の声は、ずっと鳴り響いていましたとさ。
なろう系では追放ものとかがよくありますよね。
でも大半やらかして終わりな気がする。