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龍 第2話 反乱
朝倉孝景
朝倉家7代目当主越前朝倉では初代。応仁の乱で寝がえり、越前を拝領。しかし、彼の代での統一には至らず、二代目でどうにか統一。また、領内での仏教の布教を許可した為、越前一向一揆の温床となった。
評価は様々で大悪人と評する文書の他、善政を行ったと評する学者もいる。
年が明けた。
孝景は、
「のう小太郎、わしももう長くない。そう感じておる。どうじゃお主は秀才であるから、わしの後を継がぬか」
(もう父上は亡くなられるか。しかし)
「分かりました。しかし、もう少し待っては下されませんか。私はまだ8つ。継ぐには早すぎでございます」
早すぎたと思ったのだ。
「なるほど。お主はまだ8つ。継ぐには早い。しかし、お主の兄は、阿呆しかおらん。そう思わないか」
そう問うた。確かに兄たちはアホだらけだ。だが、自分と比べてである。
「私と比べればそうでございます。しかし、一般的に見ればかなりの優秀さ、非凡さ、柔軟な発想を持っております。彼を跡取りにしなければ世間の信用が地に落ちます。そうすれば美濃の土岐、若狭の武田、加賀の一向宗。彼らに見くびられましょう。危険が伴います」
小太郎がここまで理解しているのか。感心したように孝景はほほ笑んだ。
これより時が下り8月。秋が始まったとはいえ残暑が厳しかった。
ぼろぼろの伝令兵が孝景の屋敷に飛び込んできた。
「殿、殿!美山の市波にて二宮松王丸が挙兵!只今朝倉孫次郎(景豊)様が2000の兵をあげ鎮圧に向かっております。しかし・・・」
伝令兵はそこまで言うとうつむいた。
「しかし何とした!?」
「苦戦!」
伝令兵は最後の力を振り絞って叫んだ。
「この者の手当をせよ」
孝景は近くにいた小姓の蒼井宗兵衛に命じた。
宗兵衛は後ろの家来数名と伝令兵を持ち上げ下がった。
孝景はしばらく黙り、茶を持ってこさせ、飲み横になった。
戻ってきた宗兵衛が話しかけた。
「殿。寒うございます。毛布を掛けましょうか?」
「よいよい。それより、家臣ら全員と一門衆を呼べ」
「かしこまってござる」
宗兵衛はちらりと孝景を見た。
「殿?殿?」
頭を触っても冷たい。脈を診ても動かない。死んでいた。