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物心ついたときから魔法少女だった。3
美知なんて嫌いだ。何があっても許さない。
そう思っていると身体の中に黒いものが疼く感じがする。不快感に顔をしかめていると、
「真歩、どうしたと?怖い顔しとーよ?」
博多弁で話しかけてきたのは友達の水川春菜。入学式の日、教室で急に『友達になろう』と話しかけてきた子だ。いい子なのは分かっているんだけど、好きじゃない。明るすぎて話しているだけで疲れる感じ?
「大丈夫。ちょっと体調が悪いだけなので。」
「敬語じゃなくていいって。体調悪いなら保健室連れて行こうか?」
「大丈夫ってば。」
「顔色悪いし、きつくなる前に保健室行っとったほうがいいよ?」
「ほんとに大丈夫なんだってば!」
自分でもびっくりするぐらい大きい声が出てしまった。クラスのみんなが私の方を向いた。その瞬間、身体の中の黒いものが一気に冷えて体に広がり、それが鳥肌となった。数年前のトラウマが蘇る。
――驚いた顔をする美知や周りの人。そしてありとあらゆる罵詈雑言を投げつけ、汚いものを見るような目で私を見る人達。明らかに私を避ける人達。その人達の視線が一気に注がれた気分。
私は急いで通学カバンを棚から乱暴に取り出し肩に掛けて、
走って、走って、走って、ひたすら走った。階段を駆け下り、靴箱で靴に履き替え、ひたすら走って家に帰った。テレポートも使わず、ひたすら走った。
あの人達の視線が自分に絡みついて離れない。振り切ろうと走っても振り切れない。運動もろくにしていない自分が視線から逃れることなんてできないと頭では分かっているけれど、ひたすら走った。
家につき、鍵を開けようとした。でも、全力で走ったことと精神的なショックから手に力が入らず鍵が開けられない。やっとのことで鍵を開けて――
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目が覚めると私は布団に寝ていた。頭を動かすと姉が料理をしているのが見えた。
「お姉、、、ちゃん」
「起きた?帰ってきたら扉が少し空いていたんだよ。急いで開けたら玄関に真歩が倒れててびっくりしたんだよー。」
「お姉ちゃん、危機感なさすぎ、、、」
「今は、ね。」
「そっか。」
「何が起きたか話せる?」
「う、、、ん。」
「無理しなくていいよ。」
「大丈夫。」
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今日の出来事を話した私は少し小さな声でこう付け足した。
「あと、『来た』かも。」
「話からしても、可能性はあるよねー」
「うん。」
「じゃあ、今から空き地に行く?」
「そうしよう。」
私は、魔法を使えるためにストレスが溜まったりすると一気に|爆発《魔力暴走》するのだ。
空き地に来ると私は魔法を使う準備をする。魔力暴走するときはディストラクションしか使えない。それも、手加減の一切できない。被害を少なくするために空き地の小石に魔法を使っている。
「あれ、、、?」
「どうしたの?」
「ディストラクションが発動しない、、、」
――プログレス。その言葉が唐突に頭に浮かんできた。そして、私は気付いた。
「新しい魔法、、、」
「え?」
「今日の異常な足の早さ、体力は魔法によるものだった、、、?」
「どういうこと?」
「今日、魔法をすでに使っていたと考えれば辻褄が合う、、、」
「?」
「つまり、知らない間に新しい魔法を覚えていたってこと、、、?」
「、、、、、、! そういうこと!?」
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五月上旬、新しい魔法〈プログレス(体力向上魔法)〉習得。
姉、里歩との仲直り成功。