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愛と蛆
注意喚起しましたよ!本当にいいんですね!?
それでも読んでくれる、そんな貴方が好き!
違う。違う違う違う。私はただ、あの子のために…
響き渡る大声は脳の奥底に沈み、不快なこの感情は32秒前に灰になった。
つまりは、もう何も考えられなくなった、ということである。
頭は私の意思に反して眠りにつき、そのくせ二つの目は一心に正面を見つめている。肌の上でだくだくと汗をかいて、それは冷たくなって汚れた服と同化する。
どうして、こうなってしまったのだろうか。
「彼〜〜て〜〜〜!〜〜、〜〜〜死〜〜〜理由が〜…!」
途切れ途切れに脳が音を拾う。誰かが話をしているようだけど、私には関係ない。関係ないと思いたかった。頭のどこかで、正反対のことを考える自分がいた。
ああ、どうして?どうしてだろうか。
私は「愛」を以てあの子を埋めただけ。ただそれだけじゃないか。
無論、あの子の意思を尊重してのことだ。
あの子は私が産んだのだから、私がどうしようと自由。骨しか残らないなんて、そんなの可哀想だ。勿論これも、私があの子を愛していたから行ったことに決まっている。
脳が、口が、勝手に言葉をあげる。目の前、いや、少し見上げた場所に座っている男は、私の暗く沈んだ顔を見て目を細めているように思えた。
なんだ?今更?私の苦労に知った気になっているとでもいうの?
あの子が死んでしまったことが君たちにバレたら、あの子は跡形もなく焼かれてしまうのでしょう?あはははは!なんて穢れた考え方を持った奴らだ、馬鹿馬鹿しい!君たちは自分の大切な存在が勝手に炎の中に入れられるのが我慢できるというの?少なくとも、私は出来ないね!
口を大きく開けて大声を出すうちに、汗がだんだんと顔を出さなくなり、私の体が内側から熱くなるのを感じた。目の前は不可解な涙で滲み、もう目の前の男の顔も見えない。周りの人達の姿も見えない。
見えない、見えない、見えない。見ないふりをしてきた。分からない気になっていた。
あの子が死んでから、ずっと一人で頑張ってきたのに。あの子は五日もしないうちに、何処から貰ってきたのか、家の空気を一変させた。
暫くすると傷口には蛆が纏わりつき、傷口を荒らし、匂い…いや、空気はより悪くなった。
そんな姿になっても、私はあの子のためだと思って、必死になって君たちから隠した。もう焼かれるのと変わらないと思う時さえあった。それでも、今までの苦労を思うと、辞めるわけにはいかなかった。
あの子の頬を撫でる。青白い肌は冷たくなって、唇からは完全に水分が抜け、頭には虫の卵が植え付けられて、一年もすれば体を食い破った蝿があたりを飛び回る。
それでも、それでも、あの子のために。愛を以て、あの子のために。あの子を愛しているから、愛しているから…こんなにも、醜い姿でも、私の口角は下がらないのだと思う。
ああ。愛しているよ。×××××。
彼女は最後に愛と蛆を天秤にかけ、まさしく前者で勝利した。
けれど彼女の考えは世間には理解されず、華々しく散った。
彼女のやり方がどうであれ、考え方が間違っているとは一概には言えない。けれど、
世界が綺麗になるなら、それもいいんじゃない?