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Tens:soleil 第4話
ガンバ ルヨ
魂
「それっ!」
バキィ!
凄まじい音を立てながら石の像は消えた。
「アポロンさん!も〜今まで何してたんですか!」
「ごめんごめん。それよりあの壁にめり込んでる男の子のことは?」
アリアははっとして壁の方に走りだした。
「カガリ君!大丈夫ですか?」
「アリア、ちょっと一旦どいてくれない?」
ニコはカガリの腰についた小さなポシェットに手を突っ込んだ。
「あった、薬!やっぱデメテル姉さんはそう言う人だ!」
ニコはデメテルが調薬した薬を水に溶かし、カガリの口に注いだ。
「カガリ…」
「カガリ君…」
しばらくして落ち着いたエウレカ博士が走ってきた。
「だ…大丈夫…だよね?だって神の子…でしょ?」
「ゴホッ!ゴホッ!はぁ…」
カガリは目を覚ました。
「カガリ君!」
アリアは少し泣きながら俺に抱きついた。
「はぁ…よかった…死んだかと思ったじゃないですか!うぅ…」
「ちょっとちょっと君たち。感傷に浸ってるとこ申し訳ないけど早く行かなきゃいけないよ。」
「後ろからまた何か来るかもしれない。早く先に進もう。」
アポロンはそう促した。
ゴォォ…
まるで廊下のような洞窟を風が吹いてる。
「ねぇアポロン。」
「どうした?エウレカ。」
「この遺跡いくらなんでも綺麗すぎない?近い年代に作られたと見られる遺跡はもっと寂れていたのに…」
「そりゃぁねぇ。この遺跡が作られたのは1億年よりもっと前の遺跡だからね。」
「え?どう言うこと?」
アポロンは話を続けた。
「この遺跡群は最初から地下に作られたものだから。保存が開始されたのもかなり前だ。」
「そもそもこんな洞窟状の遺跡なんて最初から地下に造られていないとそうないでしょ。」
「あの…話が変わるんですけどアポロンさんはどうやってこの遺跡の天井にいったんですか?」
アリアはアポロンに問いかけた。
「ああ…それは、正しいルートでいったからだと思う。そもそも君たちは入り口を間違えていたんだよ。」
「最初、ゲートが見えたでしょ?俺が発見したのはその横の隠し通路。そっちが正しかったらしいよ。」
「おかげで生き物とは遭遇しなかった。」
「とりあえずさ〜先に進もうよ。その正しかったルート、戻ろうよ。」
ニコがそう言った。
「そうだよ。ニコの言う通りだ。先のことは歩きながら話せばいい。」
俺の言動に皆は頷いた。
遺跡の探索も大変だな…。
「着いた…。ここが最深部のはずだけど…。」
アポロンは困惑した。
「この遺跡、守ってるやつは居ないのね。」
皆で最深部に続くドアを押した。
ゴゴゴ…
開けた瞬間、そこには人型の化け物がいた。
「だよねー。いると思った。」
ニコは呆れていた。
「これは一旦外に出た方がいいね。この遺跡には迷った魂が多すぎる。」
「迷った魂?」
俺は気付くと聞いていた。
「外に出て説明した方がいいですね。」
アリアは言った。
「アリアたちは外に出たら、ハーディスを呼んで来てくれない?」
「分かりました。とりあえず皆さん外にでましょうか。」
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俺たちは全員外に出て、エウレカ博士は少しほっとしていた。
「とりあえず館に戻りましょう。星術も使うことになりそうですね。」
アリアはニコと俺と一緒に館へ歩き始めた。
「あ、迷った魂と星術の説明を忘れていましたね。」
「そうだぜ、アリア。教えてくれ。」
「はい。まずこの世界で生きるためには魂が必要で、死んだらまず肉体は消え、魂はこの世に放り出されます。」
「普通、魂は冥界という場所へ悪魔と共に行き、次の自分の肉体ができるまで花の上でまちます。」
「しかし、強い憎しみなどでこの世に未練を残したままだと、一生この世を彷徨うんです。」
「それが迷った魂で、それが他の動物や物などに取り憑いたものが『ミイラ』と呼び、人などを襲うようになるんです。」
「さっきの石の像も恐らくミイラですね。あと人型のやつも。」
「へぇ〜。そうなんだ。」
なぜかニコが俺よりも頷いていた。
「なんで俺よりもニコが頷いてるんだよ…。」
アリアはため息をついたが、無視して話を続けた。
「次に『星術』です。これは一部の人間に覚醒する特異な能力のことです。」
「覚醒する能力は人の数だけあると言われていて、体のどこかにその能力を象徴する模様が浮かび上がるんです。ほら、私の背中にも双葉みたいな白い紋様、ありますよね。」
「アタシは手の甲に、ほら。青いやつ。」
2人は星術が覚醒した証である紋様を俺に見せてきた。
「カガリにもあるよ。右目の下に。黄色の。」
「エウレカ博士がカガリ君をみて神託受者と言ったのは、特徴が受者と全く同じだったからですよ。」
「あ。言ってたら着いたな。星霜の館。」
館を外から見るのは二度目だったが、やはり壮大だった。
3人は中へ入った。
「ハーディス様の部屋って、どこでしたっけ?あまり行くことはないので忘れてしまいました。」
とか言っていたが、割とすぐそこにあった。
コンコン
扉は遺跡のものより重いような気がした。
「おい。ハーディスはいるか?」
俺は遠慮なく聞いた。
「あれ?いませんね。しばらく待ちましょうか。」
しばらくすると。
「ねぇ。」
「「「うわぁ!!」」」
三人は同時に驚いた。
「びっくりした〜。あ、ハーディス様。」
アリアはすぐに気付いた。
「イーストスの所のお2人と、あ、神の子か。」
ハーディスは部屋にあった自分の椅子に座った。
「それで、3人はなんの用なの?」
今回は珍しくニコが説明した。
「この近くに最古の遺跡があるの知ってる?」
「知らない。そう言うの興味ない。」
「まぁそれはおいといて。そこにはいっぱい迷った魂があってね、もう時期最深部にある人型のミイラがヤバいの。だからまだ迷ったままの魂をハーディスの手で、冥界に送ってくれないかなって。」
ハーディスはしばらく黙ったあと、
「いいよ。確かに今は暇だし。私は悪魔だけど自分のこと悪魔だと思ってないから。私はただの善良な人間だって。」
「めんどくさいけど、付き合うしか無さそうな空気感だし。今。」
ハーディスはそう言いながら渋々承諾した。
「やった〜!じゃぁ頑張ってね。私たちも協力するから。」
「じゃぁちょっと待って。リリアンたち呼んでくるから。着いてきていいよ。」
ハーディスはめんどくさそうに椅子から腰を上げた。
窓から少し光が差し込み、ハーディスの角が少し光った。
専門用語解説
悪魔
冥界からの使者。
魂を持たないため死ぬことはなく、人間の姿になって死んだ時も輪廻転生を繰り返す。
人間の姿では、尖った角と先端が三角の形の尻尾が特徴。