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1-8 再会
児童養護施設に移り約3カ月。
転校先の学校にもそれなりに馴染めたと思う。
自然豊かなためか、穏やかな人が多く、グループや陽、陰キャラなんてものも無い。
そのお陰か、女性恐怖症のようなものも、段々とマシになってきた。
あまり関わることがない、大人の女性はまだ苦手だが。
そんな私の姿を見てか、職員の沢田から、少し遠出をしないか、と聞かれた。
「県内だったら多分どこでも行けるも思う。行きたいとことかある?」
沙絢は即答した。
「家!家行きたいです」
普段あまり感情を出さない沙絢の大声に、沢田は少し驚いた。
「…家って前住んでたとこ?」
沢田の顔が少し暗くなるのが見て取れる。やはりダメなのだろうか。
「そうです。正確には前の前の家だけど…。駄目ですか?」
「んーと、理由によるかも。聞いても良い?」
沢田にそう聞かれると、紗絢は頷き話し始めた。
「警察の人が家に来た時、横の部屋のベランダから入ってきて。私の部屋、角部屋だから、入って、きたとしたら、幼馴染の部屋から、で。きっと聞こえて通報してくれたんだと思うんです。…だから、お礼を伝えたくて」
どうしても行きたい。拙いなりに言葉を紡ぐと、沢田に響いたのか。上に掛け合ってみると言った。
1週間ほど経っただろうか。
再び沢田に声をかけられた。
「紗絢ちゃん、行けるって。次の土曜日にでも行く?」
「良いんですか、?行きます!ありがとうございます!沢田さん!」
喜びのあまり頬が緩む。
久しぶりに隼人に会える。
土曜日当日。
興奮してしまい中々眠れなかった、と沢田に伝えると、
「紗絢ちゃんにもそういうところあるんだね」
と笑われた。
電車に揺られ数十分。
時間にするとこんなに短く感じるのに、何故今まで会えなかったのだろうか。
自分の非力さを痛感する。
電車を降りると、懐かしい風景。たった半年にも過ぎないのに、10年居た場所が懐かしくなるなんて、少し不思議な気分になる。
小さな頃、一緒に遊んだ公園や、一緒にアイスを食べながら帰ったコンビニからの帰り道。そして、10年もの間、隣でそれぞれの生活を送った団地。
団地に一歩入り、大きく深呼吸をする。古ぼけて入るが、落ち着く好きな匂いだ。
エレベーターに乗ろうと歩いていくと、少し先で井戸端会議をしている一人の主婦と目が合う。
「…紗絢、ちゃん?」
一人がそう口に出すと、さっきまでパート仲間の離婚に夢中だった二人も、紗絢の方を向く。
三人はドンドンと近づいて来た。
まるで新しい獲物を見つけたかのように。
「紗絢ちゃん!?何でここに来たの?」
「ここに来て大丈夫なの?トラウマとか」
グイグイと聞いてくる主婦たちに久しぶりに女性恐怖症を発動しそうになる。
そんな紗絢を沢田は自分の身体の後ろに隠す。
「すみません。紗絢ちゃん、少し驚いちゃっているので…」
沢田の言葉により、少し静まった主婦たちに向かい、、沢田の体から顔だけだした状態で口を開く。
「…あの、隼人、似合いに来た、んです」
そう言うと、三人は少しの間目配せをした後、一番最初に紗絢に気づいた主婦が口を開く。
「隼人くんって、佐藤さんところの隼人くんよね?」
念の為の確認のように発された言葉に頷くと、気の毒に、とでも言いたげな表情で口を開いた。
「…隼人くんね、ひっこしたよ。夏休み中だったから、紗絢ちゃんがここを出たすぐ後ぐらいかな」
一人が言うと、他の二人も次々と口を開く。
「そう言えばその頃から、紗絢ちゃんパパも見なくなったわよね」
「知らないの?紗絢ちゃんパパは隼人くんママと不倫してたんのよ。だから紗絢ちゃんママが怒ったって聞いたわよ」
「ちょっと2人共、紗絢ちゃんの前でそんなこと…」
頭が真っ白になった。
ここで、第一部終了となります!
来週から第二部が始まる予定ではあるのですが、まだ書けていなくて…。
というかこのお話も、1週間前に書き終わったばっか。
なるべく公開できるように頑張りますが、もしかしたら今週ないかもなぁぐらいに思ってもらえると助かります!