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#13
--- H歴 ---
「あれ? 琥珀さん、そこでボーッとしてますけど、大丈夫ですか?」
と、心配そうに合歓(ねむ)が声をかけた。
「……う、うん、大丈夫。少し昔のこと思い出してただけ」
琥珀はそう言って、曖昧に笑う。
「そうですか? あまり無理はしないでくださいね、あなたは」
「えぇ、わかってるよ。合歓ちゃんも無理しないでよ」
そう言葉を交わし、二人はそれぞれの道へと去っていった。
--- 一方遠く離れたオオサカでは ---
「いいや! 琥珀は死んでへん!」
「じゃあ、急に消えた理由とか知ってんのか!」
リビングに簓(ささら)と盧笙(ろしょう)の怒鳴り声が響き渡る。
「でも、消えたのは事実やろ!」
「そう、やけど……琥珀はとにかく死んでへん!」
「ったく、いつまで言い争ってんだ」
呆れたように零(れい)が二人の間に入った。
「こいつが琥珀が死んだっていうんや!」
「死んだまで入ってへん!」
簓の剣幕に、盧笙が言い返す。
「|盧笙《こいつ》が琥珀が死んだとか言い出すんや!」
「死んだまで言うてへん! ただの現状確認や!」
零が煙草に火をつけながら、冷めた声で呟く。
「ま、どっちにしろ、あいつが何の連絡もなしに消えたのは事実だろ」
その言葉に、簓と盧笙の表情が凍りついた。
「琥珀が、なんの連絡もなしに消える。そりゃ普通は、裏切りか、始末されたかのどっちかや」
「……零、それは言い過ぎや」
盧笙が呻くように言った。
「琥珀はそんなこと……」
「俺は事実を言うてるだけだ」
🔚