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黄金に近そうなもの 【3】

星の核は、星の中心に必ずある、人間でいう心臓なようなものだ。 だが心臓とは違い鼓動はせず、星自体も呼吸をしたりはしない。 白い星も黒い星も、色づいた星々も、等しく生物的な活動は見られない。 星の核そのものは手のひらにおさまるほどの大きさであるが、その中には考えられないほどの量のエネルギーが詰まっている。その量は核爆弾一発分ほど、小さな街であれば、それひとつで20年分のエネルギーがまかなえると言われている。 エネルギーを取り出す方法はまだない。ただ、核にあるエネルギー量が大きすぎるため、無理に取り出そうとすればその場の環境を破壊しかねないため、調査は慎重に行われている。 そして星自体を信仰とする宗教も数多くあるため、それらの研究に対し反対の声も上がっている。
0時。辺りはすっかり闇に包まれている。 カラカラとランタンを揺らして、ひとりのおくりびとが星を探していた。 「…星が移動している?」 もしかすると、誰かが先に拾ったのかもしれない。ただ、もしかすると''クサリ''の可能性もある。 急いで星の方に向かって走った。気がつけば、そこには小さな男の子がうずくまっている。 「…ぼく?大丈夫かい?」 心配になって声をかけてみれば、男の子の方にランタンの炎が傾いているのがわかった。 男の子の方をまたしっかり見てみれば、ほのかに輝く星のかけらがあった。 …星を砕いている。信じたくなかったが、はっきりと気づいてしまった。 「…その星さま、おじさんにわけてくれないかい?」 「…い、いやです…」 男の子はぎゅっと体を縮こませ、星の明かりを閉じ込めてしまった。 「たのむよぉ、おじさん、お仕事で必要なんだ。…もしかして、核が欲しいのかい?よければおじさんの核と交換してくれないかい?」 男の子はこちらをゆっくりと振り向くと、どっと悪寒がこちらを襲ってきた。 「…たりない…た、たりないです…」 「じ、じゃあ2個でどうだ!」 「…まだ、もっと…ください…」 「じゃあ全部あげよう!それでいいだろう!」 男がそういうと、男の子はにやりとわらった。 「…いいです、よ。…うふふ。これで警備は…回避だぁ。」 黒星の核を受け取ると、男の子はサッと立ち去ってしまった。 「…''クサリ''かぁ…こんな少年まで…」 男は拳をぐっと握ると、後ろから誰かがぽんと肩をたたく。 「私たちは、''クサリ''なんかじゃないですよ…」 後ろを振り向けば今度は女性がいる。 男は驚いてひぃと声を出した。 「私たちにとって大事な使命なのです…今後、そう申すのであれば、覚悟をなさってください…」 気がつけば女性はいなくなっていた。 「…くそう、もう今日はやめだやめ…」 おくりびとはさっさと帰って行った。