公開中
不可出せ♡ 不可出せ♡(未完成)
本作品はアーケード版太鼓の達人を遊んでいない・詳しく知らない引退ざこドンだーが書いています。設定との齟齬が生まれた場合はゴメンナサイ。
この作品は「単語変換推奨」です。また、両性に対応していますが若干男性向けに偏っているかもしれません。
単語の内容は「マキナちゃんに呼ばれたい性器の名称(xxx)」「プレイヤー名(xx)」です。
あと♡の使用、夢主の汚喘ぎあります。苦手な方は回れ右です。
プレイヤー名を入力してね!
#xx#
---
彼女との出会いはある動画サイトからだった。何気なく開いたときのおすすめ欄に出てきた、かわいらしい女の子のサムネイル。
ちょっと生意気な八重歯、紫のショートヘア。学生服の上に羽織ったような白衣……でももっと特徴的なのは……。
「ざぁこ♡ ざぁこ♡」「不可出せ♡」「※太鼓の達人です」
……あまりにも過激なセリフと「太鼓の達人」の文字!!
再生せずにはいられなかった。こんなのサムネバキュームにもほどがあるじゃないか。動画再生前のCMすら煩わしくなるくらいに心臓を鷲掴みにされた感覚がある。本当に太鼓の達人のキャラなのか、あんな過激なセリフが公式なのか。その謎を探るべく我々はアマゾンの奥地へと向かった。
あれからハマった。見事にハマった。彼女のかわいらしい見た目に、歌声に、ちょっと小生意気で小悪魔なセリフに。正直、ゾクゾクしていた。でもそれ以外の……太鼓の達人自体の進化にも驚かされている。
「今じゃなんでもありだな……」
彼女、「マキナ the DARK」の実装がエイプリルフールの限定キャラらしいというのもそうだが、マイバチが公式で売られているとか、AIバトル演奏とか、鬼の裏とか……学生時代にワンコインでちょっと遊んでいただけの自分には知りえない情報がネットの海に転がっていた。自分の太鼓の達人への知識は疎いが、確かにアーケードに備え付けてあったバチはやけに丸っこくて……握りにくいし叩きづらかったような記憶がある。
「不可出せ♡」「しゅっ♡ しゅっ♡ しゅっ♡」「ざぁ~こ♡」
スピーカーから今日も過激な声が流れる。
マキナ関連の動画を漁った。テーマ曲のこともそうだし、ボイスも……なるべく調べた。彼女が登場する動画のコメント欄はお決まりの「分からせたい」で埋まっていた。まあ当然だろうなと思いつつも、自分の反応としては逆だった。そう、「負けたい」「分からせられたい」派だ。
もうこれからしばらくはこの子で興奮することになるかな——今日もこれでいいや。動画をそっと閉じ、ティッシュへと手を伸ばす。伸ばそうとしたが……背中に何か柔らかいものが当たる。布団か何かだろうと思ってティッシュを手に取った。箱をシーツに置こうとした。瞬間。
くすくす……くすくすくす♡
---
「!?」笑い声が、響いてきた。人を馬鹿にするような挑発的な笑い声。先ほどまで聞いていた動画と同じ声。耳に当たる、吐息。
「ざぁこ♡ ざぁこ♡」
スマホのスピーカーからじゃない。もっと近くで、ありえないほど近くで音の反響がする。それに……ふっ、と、耳に息が吹きかけられる。
「やっほー♡ ねえねえ、ビックリした?」
小さな腕。抱き寄せられる感覚。生意気なのにどこか甘い声。柔らかくて……甘い。
「ウチは『マキナ the DARK』。って、言わなくっても分かってるよね? ドン魂プルプルさせちゃってるざこドンだー♡ んしょ♡」
小さくて可愛らしい女の子が、マキナが、目の前に映り込む。紫色のショートヘア、アンテナの立ったカチューム、これまた紫の縁取りをした白衣、ギザッとした八重歯……本物の「マキナ the DARK」……! 彼女は膝の上に乗った状態で愛らしく、それでもどこか小馬鹿にしたような笑顔を向けていた。
「アンタのドン魂、奪いに来ちゃった♡」とん、と。彼女の指先が胸元に触れる。底の魂を見抜くような危険な視線に撫でられる。
「な、で、でも、太鼓はもうやってない、よ?」何故彼女がここにとか、どうやって入ってきたとか、そんな疑問がどうしてか口に出ない。直接触れれていることが幻でない証明になっている気すらある。
……いや、妄想でもいい、幻でもいいと。彼女に触れられているのならと……無意識が委ねているのかもしれない。
「関係ないよ♡ 引退ざこドンだーでも、一応は叩いてたみたいだし?」
マキナが膝の上から更に身を寄せる。身体がくっつき、香りがふんわりと強くなる。ぶどうの菓子のような……ちょっと甘ったるいけれどいい香り。軽いはずの彼女の体を押しのけることすらできず、どんどん自由を奪われていく。
ふんわりと、マキナの腕が、頭を抱き寄せてきた。あの香りが、体温が、柔らかさが、下腹部を溶かしていく。甘えるためでも甘やかすためでもない抱擁。明らかに、誘惑のためのスキンシップだ。
「ねえねえ、ウチと遊んでかない? 久々に叩きたくなるようにしてあげるからさ♡」吐息混じりの声が囁いて、耳にまた息が吹きかけられる。心臓が喉元にすら律動を送る。全身が熱い。呼吸すらも止まり、彼女の声だけが頭に響く。
……断れない。もう、何も考えられない。
「……んふふ。お目目とろっとろ。お顔あっつーい♡ こんなの、ハイ、って言ってるようなもんじゃない♡」
返事ができない。恥じらいとときめきと、身体の熱で……動くことすら適わない。ふ、とマキナが緩く笑う。耳をくすぐる吐息にまた、感じてしまう。無言の肯定。ただ眺めることしかできない。
「じゃあ……ウチのリズムに、ついてきて? まずはぁ、深呼吸からぁ♡ あつーくなっちゃった身体、ちょーっと落ち着かせよっか」
吸って~……吐いて。彼女のナビゲートに無意識が従う。呼吸が繰り返される。抱擁の中で、新鮮な空気と甘い匂いが混じって……さきほどまでの緊張や興奮から少しずつ熱が遠のいていく。むしろ安心が包み込んでくる。
身体の力が抜けていく。手足がだらん、と垂れ下がって、もう背中が倒れそうだ。
「そう、上手♡ 身体だら~んってして、イイコだね。じゃあ……倒れよっか。はーい、だらーん……♡」
ごくごく自然に、脱力したままの身体が倒れた。受け止められる感覚、沈んでいく感覚……一日のやることを終えた後のため息のような、温泉に浸かっているかのような、筋肉の繊維からゆるゆると解けていくような解放感。
「そのまま、ゆっくりのラクな呼吸で聞いてて。ウチの世界に……ドン魂が響いてくる世界に、招待してあげるからね♡ 1から数えて~、10で入る。ドン魂、ウチに預けるの。でも大丈夫、アンタの魂は賢くって、イヤな命令は全部弾くから。だから安心して、魂ちょーだい♡」
彼女の言葉は巧みに意識を誘導する。催眠術のように、ゆらゆらと意識が揺れる。催眠そのものなのかもしれない。
いーち……。にーい……。シンプルな数の繰り上がり。無駄な思考を全て捨て去り、ただ浸るだけ。
さーん……。よーん……。優しい声。煽るようなものではない静かな囁き。
ごーお……。ろーく……。読み聞かせをされているかのような安心。
なーな……。はーち……。他にはなにもない。まどろみ。
きゅーう……。
じゅう。
---
意識が落ちる。暗闇の中に沈んでいく。けれどこの闇は眠るときに必要な、危険と情報の遮断だ。そこに脅威はない。
「お疲れさま♡ ウチの世界によーこそ♡」
マキナの声が響いて聞こえる。彼女の姿は見えないが、存在を感じることはできる。脳の中に直接入り込むような、心地よい音。
「ねえねえ、見える? ウチの世界……演奏の世界♡」
未来って感じの、まっしろな宇宙ステーション。紫のライト。曲を選ぶ画面……。彼女の言葉通り、囁かれると浮かび上がる色彩。ステージのようなのにそこに居るのは自分と彼女だけ。二人きりの世界。
「んふ。さすがウチ。ナビゲートだいせいこう♡」
マキナの愛らしい笑みが浮かび上がる。今度は目の前で。彼女はくるくると回りながら目の前まで躍り出て……ふと、ふー……♡ と耳元で吐息を吹きかけてきた。
「……~っ」唐突な刺激に肩が跳ねる。マキナの笑みは純粋なものから意地悪さを滲ませたものに変わり、自分の胸をそっと、指を置いて撫でてくる。
「ねえ、覚えてる? ウチは……アンタの魂を奪いに来たの。でもただ取るだけじゃあもったいないから……きもちよーく、負けさせてあげる♡」
マキナの口角がまた、意地悪く上がる。ふと手の甲をくすぐられると、心臓さえも軽く飛び跳ねた。
「アンタがウチに『負けたい』のは知ってるから。だからドスケベ催眠メニューでぇ……た~っぷり分からせてあげる。引退したけどまだまだ叩き足りない……ウチに惹かれて魂ぷるってしちゃう変態なんだって♡」
マキナの言葉に艶が増し、耳元で囁く声すらも耳朶を甘く撫でてくる。言葉の情景を想像するだけで、期待に下腹部がじんわりと熱くなる。マキナはするりと臍下をなぞり、ねっとりとした笑みで、囁きで、堕とさんとする。
「ふふっ。じゃあ、ざこざこドンだー? 今もちょっと疼いてるみたいだけど、その疼きをもっと本格的なものにしてあげる。そうしたらね……」
不可、いっぱい出させてあげる♡
なんでもないような言葉がぞくりと突き刺さる。背筋、脊髄、首筋、臍下、心臓の……魂の表面をそわそわと愛で回される感覚。少しでも息が詰まると、マキナの吐息交じりの嘲笑がまた耳朶を刺激する。
「今ので興奮するなんて、ほんっとへんたい♡ ざぁ~こっ♡ ……でもいいよ。いっぱい興奮しちゃえ♡ 興奮して、もーっとよわよわになっちゃえ♡」
再び、嘲笑。マキナの声が微かな息継ぎの中で転がる。美しい音色を少しでも聞いていたくて息が詰まる。
「今からアンタの体の芯、ドン魂、どろっどろに疼かせてあげる。……催眠ってぇ~、心の防御外しちゃうからさ。いつもより発情エグいかもね♡ いくらざこな反応見せてもいいよ~。ウチがぜぇ~んぶ、ざこスコア記録してあげるから♡
んじゃ、いっくよー。はい。パチン♡」
合図と同時に彼女が指を鳴らした。何が来るのかと反射的に身構えるが……その身体を、肩を、何かに押さえつけられる。
「ざぁ~こ。こっちだよ♡」「こっちも♡」両耳から、マキナの声が注がれた。
新たに現れた……二人の「マキナ」に、肩を腕を絡めるように抱きとどめられた。宙にふわふわと浮きながら、彼女たちは。煽るためだけの言葉を紡ぎ始める。
「ざぁこ♡」「ざこ♡」「ねえねえ、きもちい? 煽られてきもちい?」「うわうわ、こんなので感じるとかヤッバァ♡」「とろっとろじゃん♡」
左右から声が絡みつく。心に絡みつく。耳を塞ぎたくても塞げない。体に力が入らない。腕に触れる細長い指の感触。耳朶に掛かる甘い吐息。
「不可、いっぱいウチらと出そうね?」「ぴゅっぴゅ~って、不可出そうね?」「しゅっしゅ♡ しゅっ♡ しゅっ♡」あの声で、愛らしい声で、過激な言葉が耳を刺す。思わず唾液を飲み込むが、その反応すら目の前のマキナにじっと見つめられている。彼女はいつの間にか椅子に腰かけていて、足を組みこちらを見下ろしながらロリポップを食べていた。
くち。キャンディを舌が覆い、ぬるつく唾液が包み込む。赤い粘膜の上に広がる、ぬめった飴。ねち、ねち。マキナが舌を動かす度に唾液の音が広がる。優しく裏面を舐める舌は、明らかに「弱点」を舐める時のねちっこさを持っている。ねっとりと追い詰める時の、緩慢に撫でるときのあの焦れた痺れを想起する。
舌から菓子が離れると、透明なつゆが淫靡に糸を引いていた。彼女の笑みは……変わらず、意地悪なまま。目を細め口元を歪め、舌を出したまま見下ろしている。
優しくも意地悪な笑み……甘やかな支配に満ちた表情に見惚れていると。
「しこ、しこ。しーこしこ♡」「しこしこしゅっしゅ♡」「しゅっしゅ、ちゅこちゅこ、ずりずり♡」
「よちよち、よしよし♡」「よちよち……こちょこちょ♡」「ドン魂、よちよち♡」
「ぁ……っ♡」より過激になった囁きに声が出る。想像してしまった。性感帯を擦るような擬音……そこに彼女の指が這い回り、言葉が責め立てる様を。いや、それだけではない。
彼女が自分の下半身を舐めている様を。
「鼻息ヤバすぎ♡」「脚もぞもぞしてかぁわい♡」
「ぃ……あ」ついには二人のマキナの手が、身体の表面を優しくなぞり始めた。
首筋、鎖骨、頬、脇腹、胸元……腹部、臍下、腰……尻肉。太腿の内側にすら、ふわふわと指が這い回る。だが、最も敏感な性感帯には、触れない。
「声出ちゃったね~♡」「いいこだねぇ。いいこのざこ♡」
嘲笑混じりの意味のない褒め言葉。本物の――、
「へんたい♡」「マゾ♡」
〝罵倒〟。
「~~~っ♡♡」
囁きでゾクリと神経が浮き立ち、腰を前に突き出してしまった。下着が汚れている。布を濡らす不快以上の興奮が下肢を満たしている。とぷん、と、発情が揺れる。
めちゃくちゃに性器を擦り回したい。今触ってしまえば獣のような声を上げながら直ぐ様果てを迎えられそうな気がした。いやらしく粘つく汁を垂らして……彼女に見られながら、全身から汗を噴き出すような絶頂を迎えられる気がした。
けれど、今の自分は自慰行為すら許されない。
「ふふっ、イイ感じになってきた?」
目の前のマキナが問いかける。だが返事などいらないと言うように、彼女は次の暗示を示す。
「次は~、不可いっぱい出すための練習。不可出したら気持ちよくなる暗示かけちゃう前の予行練習ってトコ。はじめはとーぜん、ゆっくりにしてあげるからさ。着いて来れるよね? まっ、着いて来れなくっても——」
---
「無理やり導いて、堕としちゃうケド♡」
パチン。彼女が再び指を鳴らす。軽快なスナップ音。その刺激に驚いて、暗示に身体が警戒して、びくんっと肩が跳ねる。だが何も来ない。
遂に来た不可という言葉に微かに動揺するが、彼女がその程度で止まってくれるはずもない。……きっと、期待していることを見抜かれているからだ。
「フフッ、びっくりしててかわい♡」彼女が再びスナップを利かせる。……なにも、ない。
「ねえねえ、今からアンタはね。このパチンって音に反応するようになるの。指が鳴ると、音が鳴ると……ビクン、ビクンッて。これでチュートリアル♡ だよ?」
彼女が手を差し向ける。フィンガースナップの形になっている。今さっきの音は、ただ合図となる刺激を覚えさせるためだったか。彼女の暗示を理解する。理解してしまう。いつ鳴らされるかと、目の前に吊るされた餌を見つめる動物のように……食い入る。
「今から三つ数えると、アンタはこの刺激で感じる。音で感じる。リズムで気持ちよくなる♡」その言葉がどこか遠くで、けれど確実に奥まで届いている。自分の無意識すら、彼女に隷属しているのだから。
さん、にい、いち。
「えいっ♡」パチン。
「っ!?♡」身体が従うことは、当然だ。
指が鳴る。と同時に……股間が甘やかに弾かれる感覚。触れられるのとは違う。恐らく舐められるのも……。けれど、確実に〝快感〟を与えられた。思わず押さえようとするが、まだ左右のマキナが腕を拘束し続けている。
「ふふっ。いいね、じゃあ……もっと♡ ほら……」パチン。
「ほらっ♡」撫でられる。
「気持ちい?」擦られる。
「きもちいね?♡」敏感な窪みを這い回る。
「ざ~こ♡」つぅ〜……っと筋をなぞって。
「ざあぁこ♡」揺さぶられる。
身体が熱い。目を瞑っても、声から支配されているせいで逃れられない。息を整えている暇もなく、性感帯をじっくりと撫でられ、高められて……段々と身体の力が入らなくなってくる。何度も、何度も、パチン、パチンッ、と響く。時に甘く、時に鋭く、確実に感度を上げて……。
「あははは♡ いいねいいね、イイ調子~♡ じゃ、次はこれ♡」
「しゅ……しゅっ♡」「なーで、なぁ~で♡」猫撫で声で、左右からマキナが囁きを再開する。
先ほどのような発情を誘う音。だが、明らかに。擬音語に快楽が上乗せされている。緩慢に、だが確かに性感帯を〝触って〟いる。
指先が握って、撫でて擦って……追い詰めてくる。
「しこしこ、しこしこ♡」「不可出せ、不可出せ♡」腰から微かに力が抜ける。股間が熱い。でもどうしてか……座り込むことができない。タイミングを見透かしたようにマキナが命令じみた言葉を下した。
「フフッ、まだ座っちゃだぁめ♡ まだチュートリアル。勝負に負けるまではぁ、立ったまんま♡」
「しゅっしゅ♡ ざこざこ♡」「不可♡ ふ~か♡」
不可。気付いてしまう。そのタイミングで感じていることに。
……書き換えられていく。リズムが、囁きが、〝不可〟が。快楽に置き換えられている。まだバチすら握っていないというのに、不可という言葉だけで撫で摩られているような快感が滲み出る。
「不可♡」「不可不可♡」「ふかっ♡」「不可♡」
巧みなリズムが左右からバラけて囁かれる。不可のリズム。判定不能、予測不能のリズムが狂わせてくる。まるで彼女の楽曲だ。バチで当てるように、狙い撃つように。確実にミスを誘発する。
不可を当てる度、判定を外す度、股間に甘い電流が迸る。
「良……良、可♡」「ドンドンカッ、ドドンがドン……『不可』♡」
「っあ♡」
不意打ちで、見えない手に撫でられる。敏感なところに唇で吸い付かれる。舌の温かさに犯される。一瞬だが、隙をつくような快感。
通常の判定に試されるかのように混じる〝不可〟。もう不可の囁きだけで反応する。
この囁きの酷いところは、不意打ちであるだけではない。……時間経過で発情が解けないところだ。平常時に性感帯に触られると、快感よりも微かに驚きだったり不快感だったりが勝るはずだ。
それが……ない。ただ純粋に、快楽として与えられる。甘い快感に絡め取られ、一方的に犯されるだけ。
左右に居るマキナの横顔が、ちらと見えた。獲物を捉えた猫。遊びだけで相手を蹂躙できる、危険な魔性。
「アンタ、負けたいもんね?」マキナがまた囁く。
「不可、不可♡」「不可出せ♡」言葉に操られる。
「つよっつよドンだーのウチに」譜面で踊る。
「不可でイけ♡」「ざぁこ♡ しこしこ、しこしこしこ♡」リズムが狂う。
「リズムふらっふらにさせられて負けたいざぁこマゾだもんねぇ~?」判定は全て、彼女次第。
股間が弄られる。指先で、音で、言葉で……単純な発音が却って思考を奪う。
「しこ♡」擦られ、
「しゅっ♡」なぞられ、
「不可♡」弾けて、
「イーーけっ♡」擽られ。
「っ♡ っ……っ♡♡」煮詰まっていく。被悦が滲み出る。
目に涙が浮かぶ。快感が溢れ始める。もう、身体が限界へと近付き始めている。いじめ抜かれた股間は服の中で体液を垂れ流し、尻たぶや太ももにすら塗り付けられそうなほど。いじめ抜かれた股間の突起はひくひくと打ち震え、限界を訴えている。
〝もう赦してください、解放してください――〟涙でどろどろに汚れて、恥辱に濡れたまま。
「あはっ、もうお顔もドン魂もとろっとろ♡ もうイっちゃいそ~? イかせてほし~?」
「……い、いかせ、て、ほし」震える声で強請る。
彼女はスマートフォンを手にしてこちらを見つめる。組んだ足、太腿の隙間から……ちらりと、下着が見える。思わず視線が釘付けになる。靴下の柄と同じ、紫と黒のストライプ……。曲がり角にちょうど良くふんわりと肉が乗った膝裏、柔らかくも細い太腿。挟まれたら……気持ちいいだろうな。そんなことを考えていると。
ぱしゃ。カメラのシャッター音が鳴った。思わず顔を背けようとするが……。
「だぁめ♡」「ウチのこと、ちゃんと見て?」二人の「マキナ」に顔を押さえつけられ、正面を向かされる。わざとらしくレンズを向けながら、マキナは続ける。
「んー、どーしよっかな~」
「~っ♡」
ぱしゃ。ぱしゃ。写真を撮る音は一定で、リズムを刻んでいるようで、ゾクゾクした快楽が迸る。マキナが脚を組み替えると、下着がより目立って見える。無慈悲な発情が襲い掛かり、与えられる快楽が増す。視界が潤む。微かに潤んでも滲むことは許されない。
「ウチの下着、見た?」「うわぁ〜♡ へんたぁい♡」「下着見ながらイきそうになってる変態♡」
咎めるような言葉が、左右から囁かれる。頭が……蕩けていく。涙が両の目から溢れ出す。マキナに股間をいじめ抜かれたまま、すんすんと鼻水すら垂れてしまう。
「あはっ。責められるの気持ちいね? ざぁこ♡ ざこすぎ♡」彼女はにやにやと笑いながらこちらを見下ろした。細い指先がこちらに向かってくる。「でも、良い顔見れたし?そろそろ、一回イっちゃおっか♡ あんたの負けイき、ドン魂に刻みつけてあげる♡」
するり……伸ばされた指先が頬を撫でた。
「ねえ? アンタはどんな言葉で負けたい? どんな曲で負けたい?」
マキナの問いかけに、想像してしまう。頭の中に浮かんでしまう。
「おにでぇ、鬼畜譜面でいーっぱい不可出してバチボコに負けたい? 不可不可♡ って囁かれて、リズム狂わされたい?」
「んちゅ……ん♡」「んれぇ……、ちゅっ♡」マキナが囁く。左右のマキナが舌を出し、音を奏で始める。耳を舐めるのではない。ただの音。触れられていないのに感じるように、改造されたのだと、理性に理解させるように。魂と身体の感じている感覚と、触れられていないはずと頭で飲んでいる理解をすれ違わせるように。
「それともぉ……簡単な、打てるはずの譜面で。ウチの誘惑で、自分から負けたい?♡」
「ちゅっちゅ♡」「んちゅ、ん♡ れるれるれる……♡」
ぐちゅぐちゅ、ねち、ねと。じゅ、くちゅ。ぬる……♡ ぬ゛るるっ……♡♡
粘膜の音が響く。どこを舐められているか明示されていないのに、性感帯が甘く響き合う。耳が、首筋が、胸が、乳首が、腰が、足裏が、足の裏が……。手のひらも指先も、指の股も。皮膚の皺も。臍下も。膝裏、太腿、鼠径部……尾てい骨。
うじゅる、ぐじゅる。ぢゅうぅ……ッ♡ ぢゅぽ、ぐぽ。
――性器が、股間が、熱い。まるで彼女が舐めているロリポップのように舐られていく。無くならないロリポップ。溶けているのに無限に舐められ噛み砕かれていく飴。優しく舌が撫でてくるのに、頬の裏がぢゅうっと強く吸い付いて離れない。時折見せつけるように広げてくる真っ赤な舌がいやらしい。そのまま軽く頭を揺すっては……自分に多大な快感を与えてくる。唾液すら温かくてぬるついていて……きっとマキナの唾液が性器についているというだけでも、自分はそこを擦り倒してしまうのだろう。
気持ち良すぎて何も考えられない。興奮で息苦しい。彼女の問いかけが遠い。イきそうになる突起が今もいじめられているのにイけない。ただ惨めに震えているだけ……。
どうやら終わり方すらマキナに握られているらしい。
「あれ。おーい? 聞いてる?」
「んふ……聞いてないよね♡」「どうでもいいもんね?♡」
「……ふぅん……?」
「アンタは」左右から、「気持ちいコトだけ大事」声が、「負けることが大事♡」揺れる。
ずちゅ、ぐちゅ。ぬ゛ちゅ、ぴちゃぴちゃ……ずるるっ♡
弄ぶマキナの声に、舌の音に、意識が引っ張られる。大事。彼女だけが大事。負けることが大事……。
ありとあらゆる負けを体験したい。理不尽な難易度で溶かされるのも、自ら降参してぐちゃぐちゃにされてしまうのも……どっちも欲しい。
「だからぁ……」ぐぢゅ。「音に犯されて」とろ。「負けちゃお?」ねとぉ……♡
何も言っていない。それなのに、マキナが呆れたようにため息をつく。浮かべた想像を、見通している。
「……はぁ。そこまで変態とは思わなかった♡」目の前のマキナがため息を付き、しゃがんだ。視線が合う。目が合う。宇宙に似ている美しい虹彩。闇の色。
「じゃあ――」
マキナが言葉を切る。次に処刑宣告が来ることしか、今の自分には、理解できない。
「負けイきしろ、マゾ♡」
「っ! っ………〜〜〜ッ!!♡♡」
ああ。壊れて。しま、う。
こわ、れ、る。
彼女が悪魔のような笑みで見下ろしている。毛穴から噴き出す汗の粒すら見逃さないような目をしている。愉悦。総てを握る者の愉悦。支配。掌握。いつでも、相手を徹底的に折ることが出来る。言葉だけで操ることができる。
浅はかな自分に、魂を預けるとはどういうことなのかを、身体から教え込まされる。
「イけ」「イっちゃえ」「イかないの?」「我慢しても無駄なのに?」「不可♡」「マゾ♡」「しこしこ、しこしこ、シコシコシコシコ♡」「ざぁこ♡」「壊れろ♡」「壊れちゃえ♡」「しゅっしゅ、ぐちゅぐちゅ♡」
「へんたい」「へんたいマゾ♡」「負けろ、マゾ♡」「負けイきしろ♡」
マキナが二人なのか三人なのか、どこから囁かれているのかすら分からなかった。股間が……耳が、ぐちゃぐちゃに犯されている。壊されている。指で撫でられ、擦られ、唇でキスをされ、敏感な部分を舐められ、吸い付かれ……濃厚な快楽が何重にも塗り重ねられる。恐怖に近い感情が湧き上がる。絶頂の予感が襲いかかる。今までのどの経験よりも、破滅に近い崩落。きゅう、と。下腹部の奥底が収縮した。
だが、感情よりも。心の障壁よりも。
「我慢するの、やめちゃお?」「負けたかったんでしょ?」
左右のマキナが。
「だから――」
目の前のマキナが。
「「無様に腰ヘコ敗北アクメ、キめろ♡ ざぁこ♡」」
「ド変態#xxx#イき狂っちゃえ♡ ざぁこ♡」直接的な単語が、同時に、耳鳴りのように響いた。
パチン。
「――あ」
開け放つ音に心が塗り潰される。快楽の濁流に呑まれる。あまりに大きな衝撃に防波堤が打ち砕かれる。熱が膨れ被虐の歓びに打ち震え、崩れた瓦礫の下に埋もれる。
足腰が、身体を支える力を、失う。膝から崩れ落ちても、エクスタシーは止まらなかった。
「あ……あぁ……♡♡」
遂に、股間の奥でどろどろに溜まった疼きが放出を始める。絶頂。壊れるような、絶頂が。来る。狂う。狂う狂う狂う。
「ぁ゛あぁあ゛あ゛ぁあ゛!!!♡♡♡」
「びゅっびゅ、びゅー♡」「びゅるるるっ♡」「ビュクビュク♡」「ドクドク♡」
「ざぁこ♡」「よわよわざぁこ♡」
「不可、不可不可不可♡」
「ひ、ぎぃい゛ぃ!!♡♡ や゛、め゛……ぉ゛♡ や゛め゛でっ♡♡」
「不可♡」「ざこざこ♡」「不可ぴゅっぴゅ〜♡」
「や゛ぁあ゛あァ゛!!♡♡」
下半身が暴れ狂うような快楽。あまりに激しいエクスタシーにどれだけ暴れようとも、拒絶の言葉を投げようとも、マキナから流し込まれる快楽は終わらない。
ぢゅるる、ぢゅぷ、ぐぽ。
「い゛――ッ♡」
れるれる、れぇ……じゅるるる♡
「ぁ゛、ぐうぅう♡♡」
ぢゅぽぢゅぽ……、ぬ゛ちゅ。ぬ゛るるるッ♡
ぞり、ぞりゅ、ずりゅずりゅずりゅ〜〜……ッ♡♡
「い゛や゛だっ、や゛だッ!!♡♡ や゛め゛ッ、だすげでッ……!!♡♡」
ぐぽっぐぽっぐぽっ♡ ぢゅるるる、ずにゅ、れろれろれろ♡ ぢゅ、ぢゅーーッ♡
絶頂の最中でもマキナはお構い無しに全てを搾りにかかる。音で、魂からの支配で……意思を徹底的にへし折るように。息ができない。イきっぱなしの突起を犯されて、脳からの射精命令を下されて真っ白に染め上がる。出ないはずなのに出ていく。脈打ちながら震える突起が泣き叫んでもいじめ抜かれる。
まるで独房の中で罰されているようだった。快楽による懲罰。もしくは享楽のための悪魔の宴。マキナは変わらずクスクスと笑みを浮かべて自分を見下ろしていた。
「助けてあげませーん♡ だってアンタ、すっっごく――」
マキナが何かをチラつかせる。
「気持ちよさそうな顔、してるもん♡」
それがスマートフォンの画面だということに、遅れて気が付いた。
見せてきたスマートフォンの画面。だが、アプリの画面ではない――インカメラが映し出す自分の顔。涙と唾液、汗と鼻水で汚れた、酷く醜い顔。その隣で笑う二人のマキナ。
……酷い顔。それなのに。
「……ふふっ♡」
画面が動く。二人のマキナが自分の耳朶に唇を寄せる。そうして、息を、吹き込んで。
「「きもちーい?」」
「あ……あ、は……はっ……」
それなのに。笑っていた。
心底幸せそうに壊れていた。映し出されていたのは、苦痛ではなかった。
認めた途端、ゾクゾクしたものが湧き上がる。まだ絶頂の最中なのに、絶頂に絶頂を重ねるような、深くて、酷くて……無慈悲で。でも。
「じゃあ……負けたっていいよね?」「イきっぱなしのココ、もーいっかいイこ?♡」
「あ、あう、あ……う、うん……♡」
それでも……一番望んでいたとすら錯覚するような、崩楽。
「いいこだね♡」「いーこいーこ♡」「負け認めれて偉いねぇ♡」
悪魔のようだったマキナが天使のように囁く。
「またイけ、まーぞ♡」「イき狂え、まぁそ♡」
「何度も、ウチが赦すまで♡ 無様に♡」
「「#xxx#負けっぱなし♡♡」」
「ひっ、ぃ゛……ぁ゛あぁっ……!!♡」
びしゃ……、びしゃ。どぷ、どぷっ。
今度は暴発ではなく、漏らすかのような絶頂だった。
不可を量産する。頭が融け落ちていく。声色は天使のようなのに……同時に悪魔じみた囁き。嫌だ嫌だと言っていたのに気持ちいい。壊れてしまいそうなまでの快感に不可を漏らしていく。服を脱いでいないというのに、太腿がどろどろに汚れている。
「ふふっ。出た出た♡ えらいえらい♡」
マキナが自分を抱きしめて優しく頭を撫でてくる。絶頂の余韻に浸りつつも、意識が遠のいていく。目を瞑ればそのまま眠ってしまいそうだ。
マキナはそれを咎めることなく、ただいつものように笑いかけてくる。
「くすっ。流石に疲れたよねぇ。じゃあちょっと、きゅーけいしよっか。……お休み、#xx#♡」
自然な眠気と柔らかな抱擁に従って、自分は目を閉じた。
---