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玖
みつばに出される飲み物には、いつも大量の幻覚剤が仕込まれていた。みつばはそれを毎回回収し、夜中にみんなが使うウォーターサーバーに飲み物を混ぜていた。
そして3日目から4日目に日にちが変わる。いよいよ明日は運命の決断を迫られる日だ。
みつばはこの日、料理の中に高濃度の睡眠薬を混入させていた。真夜中、全員が寝静まったことを確認し、みつばは行動を開始した。
みつばの左手首は手錠で繋がれている。みつばはこっそり持ち出した拳銃で手錠を撃った。
バンッ!ガチャリ!
みつば「切れた!」
しかしその音で、ないこ達も起きてきた!
みつば「やばっ、早く逃げなきゃ!」
みつばはドアの後ろに隠れ、ないこ達が全員小屋に入るまで待った。
みつば(今だっ!)
みつばは全速力で小屋を飛び出し、城から逃げた。
ないこ「逃げられた!くに!いるま!アニキ!追って!」
ものすごい形相で幹部が追ってくる。みつばは裸足で死に物狂いで走った。
川を渡り、茨の上を駆け抜け、木の根につまずきながら森を走った。
幹部達の声は聞こえなくなっていたが、みつばは足を止めなかった。転んで血が出ても、服が破れても、走り続けた。
不思議と疲れは感じなかった。
やがて時の国の城が見えてきた。
みつばは安心すると同時に疲労が爆発。そのまま力尽きて倒れてしまった。
日が昇り、夜が明ける。
ボロボロになったみつばの姿を、朝日が照らした。
幹部候補生の花音は、当番制の城の見回りをしていた。
花音「手紙はきてない。不審者もいな・・・ん?」
花音は城の庭の隅で倒れている少女を見つけた。近寄ると、少女の指に光るものが付いているのに気がついた。
花音「指輪だ。恋人がいるのかな?」
花音はしばらく指輪を見ていたが、指輪についている宝石を見た瞬間、悲鳴をあげた。
花音「か、かなめ様!かなめ様〜っ!みつば様らしき人が、倒れててっ・・・!」
それを聞いたかなめ達は、少女を見にきた。
かなめ「姿が全然違うけど・・・?」
花音「あの子がつけてる指輪、エメラルドですよね?しの様が渡していた指輪もエメラルドでした」
しの「僕が渡した指輪だ・・・。S&Mって彫ってある」
かなめ達は変わり果てたみつばを見て、呆然としていた。
左手には千切れた手錠が付いていて、服はあちこち破れ、足は血だらけ、アザや擦り傷があちこちにできている。
れむ「とにかく、診療室に運ぼう!このままじゃみつばが死んじゃう」
うるみや「せやな、しゃる!みやび!頼んだで!」
しゃるろ「わかった!」
みやび「お任せください!」
しゃるろ達はみつばを診療室に運んだ。