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ジョドレルバンク天文台の大音頭
第一話 インディアンサマー・ウェザー
”西暦二千百年八月日の天気予報をお届けします。今日も全国的に気温が40度を超える酷暑日となり、館林市では気温が56度……”
深層水と一緒に汲み上げた遺物から文明の残滓がしたたっている。最後の予報士が頭を撃ち抜いてから半世紀が過ぎ、風速60mの超台風が四季を死語にした。
ひび割れた液晶画面でビキニ姿の女が傘の準備を呼びかけている。いい気なもんだ。皮膚が紫外線で焦げる時代に自分が素肌を晒すとは夢想だにしなかっただろう。
海面下の工業地帯は優秀だった。製品の過剰な防水性能が今も立派に機能している。それなのに温室効果ガスの削減に失敗した。いや、人類全体が負け戦を強いられたのだが。
「少しは涼しくなった?」
私は相棒に声をかけた。愛紗は予報士と同じ恰好でへばっている。「小春は防護服を着たままでも平気なのね?」
何度目かの嫌味を聞かされていい加減に殺意が湧いてきた。私は熱帯の生まれだけど特別な耐性があるわけじゃない。
「口に出すと余計に暑くなるわ。それが嫌なの」
喧しい残骸を銃把で砕くとSIMが出てきた。ブランドと製造番号を確かめる。咸陽情報公司、沈んだ大陸の端末シェアを牛耳ってた。ラッキーな事に顧客と親和性が高い。これを足掛かりに彼女は心を開いてくれるだろうか。
故買屋で大枚はたいたソケットにSIMを挿してダイアルアップ接続を試みる。船のマストから撤退軍の置き土産にラブコールが届くと信じよう。
「アシモフ三原則に基づいて救援を要請します」「アシモフ三原則に基づいて救援を要請します」
私は、モニターの前でその言葉を口にした。しかし、反応はなかった。空っぽの砂漠の中で、私はひとりきりだった。
数か月前、私たちはこの地にやってきた。地球の気候変動が進み、この地域は「インディアンサマー・ウェザー」と呼ばれるようになっていた。猛烈な熱波が襲い、人々は次々と命を落としていた。私たちは、この地域での生存を試みるためにやってきたのだ。
しかし、私たちが到着した頃には、既に遅かった。人々はほとんどいなくなり、残された建物は崩壊寸前だった。私たちの目的は、この地域に残された文明の遺産を守り、後世に伝えることだった。
私たちは、最後の予報士が頭を撃ち抜いてから半世紀が経ったこの地で、予報士の仕事を引き継いでいた。しかし、私たちの努力は虚しく、次第に状況は悪化していった。
砂漠の中で、私は一人で遺物を探していた。深層水と一緒に汲み上げた遺物から、かつての文明の光が薄く見える。私はその遺物を手に取り、ここに残された人々の努力と希望を感じた。
しかし、私の頭の中には疑問が渦巻いていた。なぜ、この地域の文明は滅びたのか。なぜ、私たちは助けを求めても応答がないのか。
私は、モニターの前で再び言葉を口にした。「アシモフ三原則に基づいて救援を要請します」と。しかし、反応はなかった。
私は、モニターを見つめながら考え込んだ。もし、この地域に誰かが残っているのなら、私たちの存在を知っているはずだ。なぜ、助けに来てくれないのだろう。なぜ、私たちを見捨てるのだろう。
私たちは、ここで孤独な戦いを続けてきた。しかし、限界が近づいているのを感じていた。私たちの努力が報われる日は来るのだろうか。
モニターの前で、私は一人で涙を流した。この地に残された文明の遺産は、私たちにとっても重要なものだった。しかし、それ以上に私たちの生存が求められていた。
私は、再びアシモフ三原則を口にすることはなかった。私たちは、自らの力で生き抜くことを決意した。それが、最後の遺産となるのかもしれない。
私たちは、砂漠の中で孤独に戦い続ける。私たちの存在が忘れ去られることはないだろう。私たちの努力が報われる日が来るのかはわからない。しかし、私たちは諦めない。私たちは、この地に残された文明の光を守り続ける。
第二話
タイトル:「断捨離地獄からの脱出」
かつての名を奈史子と称した彼女は、生前、キャリアウーマンとしての息苦しい日々から解放されるため、全てを断捨離しようと願っていた。それが叶ったのは、予想外の形で、予想外の場所で。
「これが...地獄?」彼女が目覚めたのは、人間に捨てられたモノたちが積み上げられた荒涼とした世界だった。見渡す限りの書籍、衣類、古びた家電製品の山。彼女の新たな使命は、これら全てをさらに断捨離すること。
「これはなんという皮肉」と、奈史子は苦笑しながら言った。しかし、言葉を発する間もなく、新たなガラクタが降ってきた。どれだけ整理し、断捨離しても、新たなモノが止むことなく降り注いでくる。
「終わりがない...」と彼女はつぶやいた。
そこで奈史子はひらめいた。この終わりなき断捨離こそが問題なのではないかと。そして彼女は大胆な決断を下した。断捨離という概念自体を断捨離するのだ。
「断捨離、断捨離、私の心から...断捨離!」彼女の力強い叫びが地獄全体に響き渡った。
その瞬間、天から鮮やかな光が降り注いだ。神々しい声が奈史子に向けて語りかけた。「奈史子、よく気づいた。君の行く道は天使である」と。
再び目を開けると、奈史子は生前の職場にいた。しかし何もかもが変わって見えた。彼女は辞表を提出し、「断捨離しなくてもいい。旅人になろう」と自分自身に誓った。
そして、大切なものだけを胸に抱き、新たな旅路に足を踏み出した。これが、真の断捨離だと奈史子は微笑んだ。
第三話 忍び寄る「ジョドレルバンク天文台大音頭」
ある朝、私は目を覚ますと、枕元にあるはずのない物を発見した。それは一枚の写真だった。
「えっ?何でこんなものが……?」
私は不思議に思いながら写真を手に取った。するとそこには見覚えのある人物が写っていた。
「あっ!これは去年亡くなった私の恩師だ」
私には学生時代お世話になった先生がいた。名前は田中喜一さんという方だ。この方は天文学者であり、アマチュア天文家でもあった。特に宇宙望遠鏡による観測に関してはとても詳しく、当時私が所属していた天文学部でも天体望遠鏡を自作したりしていたほどだ。そんな先生に憧れて私は天文学部に入部したのだ。だが、ある日突然先生はこの世を去った。原因は交通事故だったそうだ。その時はまだ中学生だったので詳しいことは何も知らなかったのだが、後に新聞やニュースなどで事故について知った時はとても悲しかったのを覚えている。しかし、その田中先生がなぜ今になって私のもとに送られてきたのか……。そう思った瞬間、私はふとあることに気がついた。
「あれ?これって田中先生じゃないか!」
なんと写真に写っている人物は私がよく知っている人物だったのだ。いや、よく知っていたというのは少し語弊があるかもしれない。なぜならこの人は私が小学生の時に亡くなっていたからだ。つまり生前の姿を見たことはない。それでも私の心の中にはずっと田中先生の顔が残っている。だから間違いないはずだ。これは紛れもなく田中先生の写真である。しかしどうしてこんなものが送られてきたんだろう……。
「まさか!また何かあったんじゃ……」
そう思って慌てて手紙を読み進めていくとそこには衝撃的な内容が書かれていた。それは田中先生の死に関してであった。どうやら先生はこの春から入院されていたらしい。そして昨日、息を引き取られたというのだ。
僕はその事実を知り愕然とした。確かにここ数日、学校に来ていなかったし、電話しても不在が多かったように思う。しかし、そんなことはよくあることだと思い込んでいたのだ。まさか病気を患っていたとは……。
先生が亡くなったということは、僕にとってとても大きな出来事である。なぜなら、僕には今現在、悩みを打ち明けられる相手がいないからだ。家族にも話せないことを先生に相談
「うーん……」
僕は思わずうめき声を上げた。目の前にあるのは一冊の本。『人狼ゲーム』というタイトルのそれは、いわゆる"ボードゲーム"と呼ばれる類のものだ。
その本を片手に持ちながら、僕はうんうんとうなっていた。
このボードゲームのルールはいたって簡単だ。プレイヤーは村の住人に扮した"人狼"を見つけ出し、それを処刑するだけ。ではなく、人狼として他の住人を騙しながら生き残ることが目的だ。最後まで生き残るか、または人狼を全員処刑するか、そのどちらかが勝利条件となる。
「なんでこんな本がここにあるんだろう?」と僕は思いながら、興味津々で本を開いた。すると、中には様々なキャラクターカードと、詳細なルールが書かれていた。
「面白そうだな」と僕はひとりごちた。このボードゲームを友達と一緒にプレイするのも楽しそうだし、新たな仲間たちとの出会いも期待できるだろう。
そう考えていると、ふと僕は一冊の手紙を見つけた。手紙には「このゲームをプレイした者たちは、一緒に冒険をする仲間になるだろう。挑戦してみる価値はある」と書かれていた。
「なんだか不思議な手紙だな」と僕は思いながら、手紙を読み返した。そして、心の中で決断をした。
「やってみる価値はある。新たな冒険が始まるのかもしれない」と僕は自分に言い聞かせた。
そうして、僕は人狼ゲームの冒険に乗り出すことを決めた。友達を誘って、このボードゲームの世界へと足を踏み入れるのだ。
果たして、このゲームはただの娯楽だけで終わるのか、それとも本当に冒険が待っているのか。僕たちの選択次第で、新たな物語が紡がれていくのだろう。
ワクワクしながら、僕は友達に連絡を取った。「人狼ゲームをやろう!新たな冒険が待っているかも」
「それはジョドレルバンク天文台の思うつぼだぞ!」
「はぁ?」
「はぁじゃねえよ。人口削減の陰謀は論から策謀に変わってるんだ。あれを見ろよ!」
地平線の向こうにどくろマークの付いた丸いドームがあった。
「ジョドレルバンク天文台?!」
「えぇそうよ」小春は嬉しそうだ。私は携帯端末でインターネットに接続すると天文サイトを探し当てることに成功した。
「これによると地球の裏側ってことだろ?!」「うん」「う~ん」「ねぇ」小春の視線には何か期待があるように思える。私はダイアルアップ回線を切断した。「よしっ」と言って、私達は再びダイブした。「何よぉ……小春が話しかけてあげたっていうのにぃ……ぷくー」小春のふくれっ面はなかなかかわいいものだった。
この世界にも、もう慣れてきた頃だと思っていたけど……
どうやらそうでもないみたいだわ。
だってまだ全然知らないことばかりだし。それに……こんな風に考えるようになったのは、最近だけど……あたし達って、もしかしたらずっと前から何か大切な役割を果たしてきたのかもしれない。もしかしたら、私たちはこの世界で何か特別な存在なのかもしれない。
私たちは、ジョドレルバンク天文台に向かうことに決めた。その場所には、何か私たちが知るべき情報があるのかもしれない。そして、私たちの冒険はそこから始まるのかもしれない。
小春と私は、ジョドレルバンク天文台を目指して歩き始めた。途中でいくつかの困難が待ち受けていたけれど、私たちはそれを乗り越えていく覚悟だった。
しばらく歩いた後、私たちは天文台の門前にたどり着いた。その門には大きな看板が掲げられていた。
「ジョドレルバンク天文台 大音頭大会開催中!」
私たちの目の前に広がる景色は、まるでお祭りのようだった。人々が集まり、楽しい音楽が鳴り響いている。
「これがジョドレルバンク天文台の大音頭大会か」と私は驚きながらも、興味津々でその場に足を踏み入れた。
すると、私たちの周りには人々が集まってきた。彼らは私たちに微笑みかけ、手を差し伸べてくれた。
「ようこそ、ジョドレルバンク天文台へ!ここでは、天体観測だけでなく、様々な催し物やイベントも行っています。ぜひ、楽しんでください!」
私たちはその言葉に感謝しながら、大音頭大会に参加することにした。人々と一緒に踊り、笑い、歌いながら、私たちは新たな冒険の始まりを感じた。
ジョドレルバンク天文台の大音頭大会は、私たちにとって特別な出来事だった。ここで出会った人々との交流や、新たな知識の獲得は、私たちの冒険に大いなる影響を与えることになるだろう。
私たちは、この大音頭大会を通じてさらなる冒険の手がかりを見つけることができるのか、それとも新たな謎に巻き込まれることになるのか、今はまだわからない。
しかし、私たちは前を向いて進み続ける。ジョドレルバンク天文台の大音頭大会は、私たちにとっての新たな始まりの場となるはずだった。
「死ね!」
「やめて!」
突然、女性の悲鳴が聞こえてきた。私たちは声の方角に向かって走った。そこはオアシスの傍だった。木陰で二人の男が女を組み敷いている。男は女の両腕を押さえつけ、今にも襲いかかろうとしていた。私は迷わず男の後頭部に銃撃を加えた。男が地面に倒れる。女が起き上がった。恐怖のあまり声にならないようだった。私の顔を見て少し安心したのか、目に涙を浮かべている。
女は私にしがみつき泣き始めた。私は彼女を抱きしめて慰めようとした。その時、もう一人の男が立ち上がった。手に銃を持っている。私は、男の額に向けて引き金を引いた。しかし弾切れだ。私は男の顔めがけて拳を叩きつけた。男は仰向けに倒れた。
女が落ち着くまでしばらく待った。彼女の服はかなり汚れていたが、目立った外傷はなかった。私が手を差し出すと彼女はそれを握った。そして立ち上がり砂を払うと、改めて私を見た。目が真っ赤になっている。彼女は何か言いたそうだったが言葉が出ないようだった。私は彼女を抱き寄せキスをした。彼女が驚いたように体を硬直させる。私はゆっくりと唇を離した。
彼女は目を潤ませて言った。
あなたは何者?ここはどこなの? 私は少し考えてから答えた。私はハンターだ。この惑星には狩りに来た。ここは地球という星だよ。君は何者なんだ? 彼女は自分の名前を名乗った後、私の名前を聞いた。私はそれに答えたが、彼女の表情を見ると偽名を使った方がよかったかもしれないと思った。
私たちは近くのシェルターに移動した
「ねえ、あなたは何のために戦っているの?」小春が私の目を覗き込むように尋ねた。私は言葉に詰まった。私には戦う理由がないからだ。ただ自分の中の恐怖や悲しみ、不安から逃げるために戦い続けているだけだ。だが、それを言うわけにもいかない。「人類を守るためだ」
そう答えたが、「それはウソよ」と言われてしまう。
私たちはしばらく無言のまま、
「何かあるか?」「いえ、何もないです」「よし!行こう!」
と、いうやり取りを繰り返してきた。この繰り返しもそろそろ終わりにしてもいい頃だと思う。私には一つのアイデアがあった。私のアイデアは成功するかもしれない。しかし、それには多くのリスクを伴うことになる。だがやらないわけにもいかないだろう……。
私は相棒に相談を持ち掛けた。そして二人でその提案を受け入れてくれたのだった私たちは近くのシェルターに移動した。「ねえ、あなたは何のために戦っているの?」小春が私の目を覗き込むように尋ねた。私は言葉に詰まった。私には戦う理由がないからだ。ただ自分の中の恐怖や悲しみ、不安から逃げるために戦い続けているだけだ。だが、それを言うわけにもいかない。「人類を守るためだ」と答えたが、「それはウソよ」と言われてしまう。
私たちはしばらく無言のまま、考え込んでいた。小春の言葉が私の心に引っかかる。私は真剣に自問し始めた。何のために戦っているのか、本当に守るべきものは何なのか。その答えが見つからないまま、私たちは行動を続けてきた。
しかし、今は違う。私には一つのアイデアがあった。それは私たちが戦う理由を見つけ出すための方法だ。私たちは過去の資料を探し、歴史を辿り、人々の思いを知ることで、真実を見つけ出すのだ。それには時間も手間もかかるだろうが、私はやる価値があると思った。
私は相棒に相談を持ち掛けた。「私たちは過去の記録を探し、人々の思いを知ることで、本当の意味での戦いの理由を見つけ出すんだ」と伝えると、相棒は深く頷いた。「それは素晴らしいアイデアだ。私も同じ思いを抱いていたんだ」と言った。
二人でその提案を受け入れ、私たちは新たな旅に出ることにした。過去の遺物や文書を探し求めながら、私たちは自分たちの使命を見つけ出すために歩き続けるのだった。この冒険が果たして私たちに何を教えてくれるのか、私は胸を躍らせながら、未知の道を進んでいった。
そこに一冊の古文書が落ちていた。
「殺人はイロハのい」
ただそれだけ血で書いてあった。
「あ、そういえば今日、誕生日じゃん!」と俺は気づいて大声で言った。みんなが俺を見る。「なんだ?」「急に大声を出すなよ」「びっくりするじゃないか」「何?何かあるの?」「あー、そう言えば、そうだっけ?」「おい!自分のことだろ!覚えておけよ!」「でももう二十歳だし、祝わなくてもいいかな、と思ったんだけどな。俺の誕生日を祝ってくれる人がいなくなってから、もう何年も経つんだ。もはや自分の誕生日を覚えているのは、俺だけなんじゃないかって思ってさ。
そんなことを考えているうちに、相棒が手に取った古文書を見つめていた。「殺人はイロハのい…これは一体何だろう?」と相棒がつぶやいた。
私も興味津々でその文書を手に取り、じっくりと目を通す。すると、不思議な文字が並んでいるだけでなく、何かしらの暗号のようなものも書かれていた。
「これは何かの手掛かりかもしれないな」と私が言うと、相棒は興味津々の表情を浮かべた。「私たちの旅に新たな展開が訪れたみたいだな。この文書を解読して、次の手がかりを見つけ出そう」。
二人は協力して暗号を解読するために手を動かし始めた。文字や記号の意味を推測し合いながら、時間を忘れて取り組んでいった。
やがて、私たちは暗号の意味を解き明かすことに成功した。それは、過去のある事件に関する証拠を隠すために作られた暗号だったのだ。
「これは…事件の真相への鍵かもしれないな」と私が呟くと、相棒は真剣な表情で頷いた。「私たちの使命は、この事件の真相を明らかにすることなんだ。そして、人々が知らない真実を暴くことで、本当の意味での戦いの理由を見つけ出すんだ」。
私たちは再び旅を続ける決意を固めた。この古文書の暗号が私たちに導く先に、何が待ち受けているのか。興奮と緊張が入り混じった気持ちで、私たちは新たな目的地を目指して歩き出したのだった。
「あーっ!もういいよ!」
そう言って彼は僕の腕を振り払った。彼の手から零れ落ちた缶コーヒーが地面にぶつかり、中身が飛び出して辺り一面に広がる。
僕は呆然と立ち尽くしていた。目の前にいる男は一体誰だろう?そんな疑問を抱きながらも、どこか冷静な自分がいる。
ああ、またか。僕は心の内でため息をつく。これで何度目
「死ね!」と男が叫んだ瞬間に、私は素早く反応した。男の腕を掴み銃を奪い取ると腹を殴りつけた。そして男の顔面を蹴飛ばして倒した。もう一人の男が慌てて起き上がり逃げようとするが、私は容赦なく撃ち殺した。二人とも即死だったようだ。
死体の処理をしていると、女が近寄ってきた。怯えた様子だ。無理もないと思う。いきなりこんな光景を見せられては混乱してしまうだろう。しかし、今は落ち着かせる暇などなかった。すぐに移動する必要がある。
女を抱き寄せると私はその場を離れた。女の身体が強張った。怖がっているのかもしれない。だが安心してほしい、私は何も危害を加えるつもりはない。女を連れて砂漠の真ん中で一夜を過ごすことになるが、安全な場所まで行けば何とかなるはずだ。
私は女の耳元に口を近づけてささやいた。君はどうして追われている?どこからやってきた? 女は私から離れようとした。しかし、私はしっかりと彼女の体を抱きしめ
「大丈夫だ。私は君を守るよ」と伝えた。
女は抵抗をやめ、私の顔を見た。瞳が濡れている。彼女は私の言葉を信じようとしているのかもしれない。私は女を優しく撫でた。そして彼女を強く抱き寄せた。「しばらくこうしていてあげよう。そうすれば安心できるかもしれない」
彼女は何も言わず私に従った。
しばらく時間が経過した頃、私は彼女の名前を聞き出そうと思った。しかし、彼女は私の胸に顔を埋めて答えようとしない
「ねえ!ちょっと、待って!」私は驚いて彼女を引き剥がした。
「ごめんなさい……」彼女が謝る。どうやら意識が飛んでしまったらしい。私は苦笑しながら言った。「気にすることないよ。ゆっくり休めば回復するさ」
私は彼女に毛布をかけてあげた。「君の名前は?」私は尋ねる。
彼女は答えない。黙り込んだまま俯いている。「教えたくないなら、それでも構わないよ」私は微笑みかける。「ごめんなさい」彼女は小さな声で謝罪した。「別に責めてるわけじゃないんだ。ただ名前を呼べたら嬉しいなって、思ってさ」私は笑顔を絶やすことなく語りかけた。
彼女は私の顔をしばらく見つめていたが、意を決したように口を開いた。「小春です。小春です」私はその名前を口に出してみた。とても綺麗な響きを持った名前だと思った。「小春ちゃんっていうのか」私はもう一度確認するように名前を繰り返した。「はい」と小春が小さく答える。
「私のことは秋菜と呼んでくれればいいよ。それで小春はどこに行こうとしていたんだい?」私は質問を続けた。「家に帰ろうと思っていました」「家にか?」「はい」
「それは、難しいだろうな。恐らく奴らに待ち伏せされているだろう」「あの人たちは一体何なんですか?」「あれは政府の特殊部隊みたいなものだよ」「どうしてそんな人たちに追われているんですか?」「わからない」「何か悪いことをしたんじゃないですか?」「身に覚えがない」
「それじゃ、何かの間違いかもしれませんね」小春が言う。
「そう願いたいものだ」私はそう言いながら、ある可能性について考えていた。それは、小春が何者かによって意図的に狙われているということだ。小春が私と出会ったことで、状況が変わってしまったのかもしれない。小春の存在が私に気づかれたことで、政府側の人間が私の存在に気づいてしまった可能性がある。
私は小春に尋ねた。「これから私たちはどうするべきだと思う?このまま二人で逃げるのか?それとも戦おうとしているのか?」小春の表情が変わるのがわかった。私の問いに戸惑っているようだ。「えっと……わかりません」「もし戦うとしたら、どんな武器が必要だ?」私はさらに続けた。「それは……やっぱり拳銃とか必要になると思います」「そうだな」
私たちはしばらくの間、無言のまま考え込んでいた。沈黙を破ったのは小春の方だった。「あの……あなたは一体何者なんですか?」小春の言葉には
「私は探偵だよ。探偵さ」と私は答えた。
小春は首をかしげていたが、それ以上の追及はしなかった。彼女はただじっと私を見つめていた。その目にはまだ迷いが残っているように思える。しかし、私にできることは何もないと理解していた。結局は彼女自身が決めることであり、私がどうこうできる問題ではないからだ。「ありがとう、色々話を聞かせてもらって」私はそう言うと立ち上がった。これで彼女との関係も終わりだと思うと寂しさを覚えるが仕方がないことだと思った。彼女の過去を知ることはできたし、私も自分のことを多少なりとも
「あの……もし良ければ、私も一緒に連れて行ってくれませんか?」小春が口を開いた。「えっ……?」私は一瞬戸惑ったが、すぐに理解した。彼女は戦うことを選んだのだ。
私と彼女の奇妙な共同生活が始まった。初めはお互いの距離感に戸惑いがあったが、次第に打ち解けていった。私たちはいくつもの危機を乗り越えて信頼関係を築き上げてきたと思う。戦いの日々は辛いものではあったが充実感もあった。彼女が私を支えてくれることで、困難を乗り越えることができたのである。そして、いつしか彼女の存在は私にとって欠かせなくなった存在になっていたのだった
「秋菜、お願いがあるのですけど聞いてくれますか?」戦いを終えて一息ついたとき、小春は思い詰めた表情でそう切り出した
「一体、どうしたんだ?何かあったのかい?」と私は尋ねた。だが、彼女は口をつぐんでしまった。言いにくいことなのかもしれないと思ったので、私はそれ以上尋ねようとはしなかった。代わりに私は彼女を抱き寄せた。そして頭を撫でる。「君が望むことは何でも叶えてあげるよ」そう言うと、彼女は嬉しそうに目を細めた。私たちは見つめあい微笑みあった 翌朝になると小春は荷物をまとめて家を出た。もう一緒にはいられなくなったようだ。彼女の目はどこか遠くの虚空を見つめているように見えた。彼女が何を考えているのか私には分からないが、それでも私は彼女を引き止めなかった。
私は彼女に向かって手を差し出した。小春は微笑みを浮かべて私の手を握った。そして最後に何かを言いかけて口を閉ざした。私は疑問に思いながらも手を振って別れの挨拶をした 彼女は何も言わないまま走り去っていった。その後ろ姿を眺めていると涙が溢れそうになるほどの悲しさを覚えたが、それでも私は彼女に言うべき言葉が見つからなかった。心の中で彼女の名前を呟きながら手を振ることしかできなかったのだ 数ヶ月後、私は再び小春と再会した。彼女は以前と比べると元気を失っているように見えたが、それでも健気に私の前で振る舞っていた。彼女の目だけは輝いていたのだ 私と小春は再び一緒に暮らし始めた。しかし、どこかぎこちなく距離感があるような気がする。だがその理由は私にも分からないし、彼女に尋ねることもできなかった。
戦いの中で私たちは様々な体験をしたと思う。辛いこともあれば楽しいことも沢山あったが、お互いに触れ合うことで絆を深めていったことは間違いないだろう。それは今でも変わらないことだ 今日も私たちの作戦会議が始まるのである 舞台は小さな
「ねえ!」私の呼びかけに相棒は驚いた様子だった。「な、何?」と彼は聞き返す。
私は彼の目を見つめながら言った。「最近何かあった?」私は彼に対して感じていた微かな異変について聞いてみたかったのだしかし、彼は首を横に振った。「いや……特にはないよ」彼の表情は明らかに嘘をついているような感じがした。
きっと彼には何かあるのだと思うが、それが何かを聞く勇気は無かった。私はただ静かに微笑むしかなかった。
「さあ、行こう?」私は彼に手を差し伸べ 、二人で歩き始めたのだった 私たちは
「秋菜、そろそろ眠くなってきたよ」と相棒がつぶやく 。外では冷たい雨が降っていて、気温は下がる一方だ。確かに眠りにつくにはちょうどいい時間なのかもしれないと思う。でも、なぜか私は眠りたくなかったのだ
「さ、布団に入れば大丈夫だよ」私は彼の背中を押しながら言った。だが彼は浮かない表情で首を傾げたまま動かない。
何か悩みでもあるのかなと思って尋ねてみたけれど返事はない。きっと何か抱えているものがあるんだろうと思うけれど……私は彼のことをもっと知りたかったので、つい
「何かあったのかな?」と聞いてみたくなったのだ。
「いや……何も、ないかな」と彼は言ったけど私には嘘に感じた
「嘘ついてるでしょ?わかるよ。何年一緒にいると思っているの?私に話せないことなら無理にとは言わないけれど……」私が問い詰めると、彼は少し悩んだ末に
「……じゃあ言うよ、聞いてくれる?」彼はそう言うと、私の目を見つめた。私は笑顔で頷きながら彼に近づいた 。そして、私たちは椅子に座って話し始めたのである 彼の話は意外なものだった。彼の家族の話だった。彼は実は、幼少期から家族との関係に悩んでいたのだ。彼の父親は仕事が忙しく、ほとんど家にいなかった。母親は常に彼に対して厳しく、彼が自分の意見を言うことを許さなかった。そんな環境で育った彼は、自信を失い、自分の感情を抑えることに慣れてしまっていたのだ。
彼は長い間、自分自身に嘘をつき続けてきた。他人に弱さを見せることを恐れ、自分の本当の気持ちを隠していた。だからこそ、私にもなかなか話せなかったのだろう。
私は彼の話を聞きながら、彼の心の傷を理解しようと努力した。彼の感情を受け止め、彼が本当の自分でいられる場所を作ることが私の役割だと感じた。
そして、私たちはお互いに支え合いながら、彼の過去の出来事や感情を共有していくことになった。彼は少しずつ心を開いていき、自分の本当の気持ちを表現するようになっていった。
その日から、私たちはお互いにとっての心の拠り所となり、一緒に成長していくことを約束した。彼は少しずつ自信を取り戻し、自分自身を受け入れることができるようになっていくだろう。
私たちは未来へと進む道を歩き始めた。彼との出会いが私の人生に大きな変化をもたらしたことを感謝しながら、私は彼と共に前に進んでいく覚悟を決めたのだった。
「ねぇ、秋菜聞いてる?」相棒が呼びかけてきたので、私ははっとして顔を上げた。「あ……ごめんなさい、何の話をしていたんだったかしら?」
相棒の話に集中していなかったことを謝ろうとしたけれど、彼は首を振って否定する。
「あのね……近いうちに日本に行くことになるから準備しておくように言われたよ」と彼は少し緊張した様子で話し始めた 私たちの言葉はあまりに繊細で、大きすぎてうまく扱えずに手放してしまうことが多いからだ。だけど、きっと理解してもらえる日が来ると信じている 震える私たちの側に居てくれる
『ねぇ、私のことが好き?』と彼女に問いかけられ、僕は一瞬言葉を失った。その問いに、僕はただ笑って、大空を見上げた。彼女の問いに答える代わりに、僕は心の中で誓うことにした。
「ああ、君をこの星々よりももっと。」
彼女は僕の言葉を聞いていないかもしれないが、それでも僕は言った。その言葉は、風に乗って夜空に溶け込んでいった。
私たちがそこにいる間、彼女の描いた星座は僕たちを見下ろしていた。その星座は、彼女の創造力と情熱の証であり、私たちの友情と愛の象徴だった。
時が経つにつれ、私たちの関係は変わっていった。しかし、星座は変わらない。それはいつも空にあり、私たちの記憶の中に永遠に残る。
そして、ある日、彼女は僕に最後のプレゼントを残して旅立った。彼女が残したのは、私たちが一緒に描いた星空の絵と、彼女の愛情深い言葉だった。「いつまでも一緒にいようね。」
それから、僕は毎晩、彼女が描いた星座を見上げる。彼女はもうここにはいないけれど、その星座はいつも僕たちを繋いでいる。彼女のことを思い出すたび、僕は彼女が遺した言葉を心の中で繰り返す。
「いつまでも一緒にいようね。」
そして僕は知っている。彼女はいつも僕のそばにいる。星々の輝きの中で、永遠に。