公開中
第2章:風の旋律《ペガススの記憶》
星環領域《セレスティア》の西端―― そこには、風が絶えず吹き抜ける尾根があった。 空に最も近いその場所は、かつて自由の星霊が眠っていた聖域。 ペガスス座――空を駆ける星霊は、風の中に封印されていた。
アルモニは、静かに尾根を登っていた。 彼の背には、星霊の音を受信する共鳴器が揺れていた。 風が吹くたび、音が鳴る。 それは、星霊の声の残響だった。
「旋律が…乱れてる。 星霊の記憶が、風に散ってる」
彼は、祠の前に立ち、耳を澄ませた。 風の中に、微かな歌が混じっていた。 それは、ペガススの記憶――自由を求めた星霊の旋律。
「私は、空を駆ける者。 誰にも縛られず、風とともに生きた。 だが、空白が広がったとき、私は封印された。 自由は、孤独と紙一重だった。 あなたは、私の旋律を聞けるか?」
アルモニは、静かに目を閉じた。 彼の心に、風の音が流れ込む。 それは、孤独な旋律だった。 誰にも届かない、空の歌。
「俺は、調和を奏でる者。 でも、調和は自由を否定しない。 あなたの旋律を、俺の音で包む。 それが、共鳴だ」
その言葉に、風が震えた。 祠が光を放ち、空に旋律が舞い上がる。
アルモニの背に、風の翼が広がる。 彼の足元に魔法陣が展開され、空を駆ける力が宿る。
ペガスス・ライド: 味方全体の移動速度・回避力上昇+風属性強化。 空を駆ける旋律が、戦場を疾走する。
風が尾根を駆け抜け、封印が解かれていく。 ペガスス座が、夜空に戻る。 その輝きは、自由と孤独の狭間で揺れていた。
「あなたの音が、私の孤独を包んだ。 調和は、旋律の重なり。 あなたたちの旅は、空を再び奏でるもの。 次に待つ星霊は、記憶を凍らせた者。 彼は、過去と向き合う者。 あなたの優しさが、彼の封印を解く鍵となる」
アルモニは、風の尾根を後にした。 空には二つの星座が輝いていた。 だが、次に向かうのは――氷の祠。 そこには、封印された星霊《ループス(狼座)》が眠っている。