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#11 謎解き嫌いな相談人
20分休み。
優月先生が名簿を持ってきてくれた。
2年3組、6年4組、4年1組、1年1組、5年1組。4年1組とその前は、僕がまだ入る前の悩み相談だろう。…足立の悩み相談はカウントしないのだろうか。
「そして、僕のことを知っているということは、5年1組と4年1組の可能性が高い」
そう言って、僕は4年1組と5年1組の名簿を手に取った。
「ら、からだから、かなり後半よね」
…4年1組は、いないみたい。
「あっ、5年1組にっ」
大橋が声を上げた。
「|羅山華《らやまはな》!」
「ラヤマハナって、どうやって書くんだよ?」
「一張羅のラに、富士山の山、華やかの華で羅山華で羅山華」
「さっそく行きましょう」
そう言って、昼休みに5年1組へ向かうことになった。
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僕、大橋、足立、優月先生の4人フルメンバーで5年1組へ向かう。…といっても、実際は怪しまれるため、人の良さそうな大橋が呼ぶことになっている。
廊下で誰か待ってるふうに過ごしていると、いかにも根暗そうな女子が来た。
「ああ、解けたんですか」
第一声は、あまりに小5とは思えない発言だった。かすれそうな声で、ドスの利いた低い声で。
「失礼、小6の実力を見くびってました。もう少し難しいほうがよかったですかね?」
「いや…」
いや、足立は本当にわからなかっただろ。
にやりと笑った彼女は、「自分の悩み、本当に解決してくれるんですか?」と聞いてきた。
「ええ、解決率100%だから。なんでも相談してね」
「なんでも相談して…ですか。ただの小6と先生だけで。専門家でもないですよね?そのうち、また同じ手口で自分の友達が相談しますので、よろしくお願いします」
友達、いたんだ…失礼か。
「自分の悩みは、好き、興味のあるものがないということです」
「え?あの謎解き、好きじゃないのっ?」
そうだよな、大橋。
「はい、あれは友達に頼まれたから。本当はそんな好きじゃありません。謎解きふうに作ってと外注されただけです」
「でも、さ。友達がいるってことは、共通する趣味とかがあるんじゃ」
「まさか。自分に趣味はありません、彼女と知り合ったのは親同士が仲良しで、仲良くしなさいみたいな雰囲気だったからです」
「じゃ、わたしの好きなものを紹介するから___」「はぁ?」
彼女は力強く言った。
「そんなの、単なる綺麗事。人間の趣味なんて、陰でいやみったらしい口を叩く。それこそが、人間の最高の趣味であり嗜好なんです。どんな趣味もタバコも、陰口には勝てやしない。陰口は手軽にできてやめられない、中毒性で依存性がある趣味なんですから。…やっぱり皆さんに言っても無駄でした」
「そっ、そんなことない…です」
宙が口を開いた。
「こんなこと…綺麗事かもしんないけど。でも、いい言葉があるからこそ、悪い言葉がある。いい言葉は綺麗事かもしれないけど、少なくとも、誰かの心は救ってます。いつ、か、華さんも、救われるといいいと思います」
「足立の言う通りだ。今は救われてないかもしれないけど、いつか、誰か、救うか救われる。僕はそう思う」
「わたしも。…また、相談してね」
「…チッ」
華はそう舌打ちをしたが、少しだけ口角が上がっていた。
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「ね、あの時なんで言ったのよ」
そう宙に訪ねた。
「えぇ、と…困ってそうだったから。…別に、気分だし」
「あーあー、僕もうお腹いっぱい。運動してくる」
そう言って、アホ毛をくるりと翻して心葉は行ってしまった。
「…なんで黙るのよ」
「……別に」
「さっきからそればっか。意見言えないから、国語力弱いんでしょ」
「うっさい」
「ちなみに、大テストの結果は?わたしは国算理社、98・76・94・96」
「お前…っ!マウントとんなよっ」
どうせ、人に言えない点数なんでしょ…30とか?
「楠木山小代々受け継がれてきた悩み委員会に、恥を晒すことなど言語道断。悩みなんて、簡単に打ち明けられるものじゃない。その悩みを自分事にとらえて、悩みを解決する。それこそ、悩み委員会なんだから」
「…かっこいいと思ってんの?」
「うっさいっ!!」
ちょっと気にしてたのにっ!!