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#01
--- ある日のこと ---
とある公園にて不良たちの間に、張り詰めた空気が漂っていた。
「おい!バット持ってこい!」
怒鳴りつけたのは、この場を取り仕切るキヨマサだ。
周囲の人間が、ひそひそと囁きあう。
「え?バット?喧嘩賭博じゃねえの」
「そんなの、さすがに卑怯じゃねえか」
その声がキヨマサの苛立ちを煽った。
「おい!早く持ってこい!」
「お、おう……早く持って行こうぜ」
怯えるように声を上げた男たちが、慌ててバットを取りに行った。
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その時、喧騒をかき消すように静かな声が響いた。
「おい、キヨマサァ。客が引いてるぞ」
声のした方を向くと、そこにはドラゴンの刺青をこめかみ刻んだ、威圧感のある男が立っていた。
「なぁなぁ、けんちん、どら焼き無くなっちゃった」
ドラケンの後ろから幼い子供のように無邪気な声が聞こえる。
「はぁ……マイキー。みんながいるところでそのあだ名で呼ぶなよ」
ドラケンは、うんざりしたように言いながらも、その言葉にはどこか優しさが滲んでいる。
彼の背後には、クリーム色の髪をした小柄な少年が立っていた。
「な、後でまた買い足すからね//」
そうヒュドラーが言うと、マイキーはにこりと笑った。
「えへへ、ありがとう」
(なんだ、この、とんでもなく可愛い生物は……!)
武道は呆然としながらも、その光景を頭の片隅で冷静に見ていた
その瞬間、キヨマサを含め、不良たちが一斉に頭を下げる。
「……!お疲れ様です、総長!」
「へ?そ、総長?」
武道は思わず、声に出して呟いてしまった。
「あ、マイキーくん、俺、三番隊の……え、あれ?」
状況が理解できず混乱する最弱不良を無視してドラケンはこう言った
「マイキーは興味ねぇやつとは話さねぇ」
「お疲れ様です、総長」
キヨマサの言葉に、ドラケンが静かに、しかし威圧的に告げた。
ドラケンはキヨマサの腹を蹴りつけた。
「総長に挨拶するとき、その角度じゃねえだろ」
「は、はい……」
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「お前、名前は?」
マイキーが武道の前までやってきて尋ねた。
「え、は、花垣武道」
「たけみっち、今日からオレの友達、な」
マイキーはそう言うと、武道に微笑みかけた。
「へ?た、たけみっち?」
少し混乱した後ドラケンがこう言った
「マイキーがそういうんだたけみっち」
その後、キヨマサをボコボコにしたあと無表情で言い放った。
「喧嘩賭博とか、興味ねぇ」
そうして、あっけなくマイキーは去っていく。
「たけみっち、またね」
武道は、ただその背中を見つめるしかなかった。