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隕石が降る時って大体晴れじゃね?
「はい、じゃあ自由課題の提出は明日まで」
「…え?」
静かだった教室がざわつく。
「先生、明日の事、ご存じないんですか…?」
生徒が訝しげに尋ねる。
「…いえ、僕が皆さんの自由課題を最期に見たいんです」
たった一週間前に全国民に知らされた出来事。
「提出しないと成績が《《落ち》》ますよ」
「シャレにならんて」
それは地球に回避不可の隕石が落ちてくるとのことだった。
「じゃ、そういうことなので。これで最後の授業を終わります。」
先生はそう言って、聞く耳を持たずスタスタと出ていってしまった…
生徒達もぼちぼちと帰宅を始める。
放課後の廊下は、いつもより少しだけ静かだった。
オレンジ色があたりを染める。
「いやなんでだよ!!!」
俺は無料になっているいちごオレを思いっきり投げた。
気づかなかった、少しだけ残っていた液体が空中でひしゃげて床に散った。
甘ったるい香りがむなしく漂う。
少しだけ目眩がし、壁にもたれた。
隕石が落ちてくる。
その事実に苦しくなってくる。
俺はまだ夢があった
やりたかったことがあった
沢山たくさんあったってのに
「なにしてんのさ」
それはクラス内でよく響く声だった。
顔をあげると、夕焼けの光がその人の輪郭を縁取っていた。
その俺を見上げたその顔は困ったように笑っていた。
「あ……」
「も〜終末くらい笑顔でいようよ〜!らしくない〜!」
その軽くどこも見ていないような言い方が、この状況にはまるで似つかわしくなくて。
「で?落ち込んでたの?」
「……別に?」
強がってしまった。
投げ出したい気持ちと、やりたいことを諦められない気持ちがごちゃ混ぜになって、うまく言葉にならなかった。
肺に穴が空いたかのような苦しさが染み出す。
「じゃ俺は、これで」
そう言って俺は駆けだした。
何か俺に掛ける声がしたが、気にするほどの余裕なんて無かった。
教室の入口、夕焼け色の窓々、沢山見える影。
それらが素早く俺の横を通っていく。
息が切れるほど走った。
ふと、窓の奥に目がいった。
近くなりすぎた暗い大きな物体がこちらを永遠と追いかけている。
それは世界にぽっかりとあいてしまった穴のようで、はたまた俺を見ている大きな目のようで。
どこか救いを望んだ。
気付けば屋上にいた。
隕石止められるとでも思ったのだろうか。
そもそもなんで鍵が空いてるんだ。
フェンスからこの街を俯瞰する。
家々に影が落ちている。
車や人は思っていたよりも少なかった。
ふと、あの黒を追いかけたくなった。
手が伸びて
「バカ!!」
それは俺の手を強く強く掴んだ。
そしてフェンスに手をかけた俺を引き寄せた。
「何してんの!!!」
「なにって…」
そもそもどうせみんな明日で死ぬだろ、と言いかけて言葉を飲んだ。
目の前の少女は、泣いていた。
目を合わせられない。
髪が揺れる。
沈黙が流れる。
「わかったって…」
俺は観念し、フェンスから離れた。
さっきまで見えていた街が、少し遠くなる。
「……怒ってる?」
一番最初に出てきた言葉は、自分でも少し茶化しているように聞こえた。
こういうところだよなと少し後悔が込み上げる。
「一人で決めないで、今日くらいさ」
何もでてこないと思った目の前の口から言葉が出てきた。
風が吹き、フェンスが小さく鳴った。
空の向こうで、影は確かに近づいている。
「ね、私も混ぜてよ」
その声は、冗談みたいに軽い。
どこか逃げ場を探すみたいにさえ感じた。
まだお昼のはずの空は、何度見ても深い夕焼けのようだった。
時間の感覚だけが先に壊れていくのを感じる。
「一緒にいてほしい、な」
俺は初めて、ちゃんと息ができた気がした。
…自分の心臓の音がやけに大きい。
「黙ってるって事はOKってことだね!」
いつの間にか目の前の綺麗な目からは涙は消えていた。
「ずるいな」
「素直になりなよ〜〜」
夕焼け色の空が、さらに濃くなる。
…もはや暗くなってきたように感じる。
俺たちは並んでフェンスの前に座り、街を見下ろした。
「というか、自由課題何にするの?絶対やってないでしょ」
「隕石が落ちた後の世界の感想文2行」
「不真面目」
「じゃあそっちは?」
「隕石が落ちた後の地球の変化を調べます!」
「お相子じゃん」
ほんの少しだったが、笑いが生まれた。
風が吹くたび、制服の裾が揺れる。
真面目に自由課題に取り組んだとしても、この風なら無理だ。うん。
「でもさ、俺気づいたことがあるんだよね」
あたりはすっかり暗くなっていた。
もはや現実味のない黒とも言える。
この距離でお互いの顔がなんとか見えるくらいだ。
星すら見えない空の色なんて初めてだった。
「隕石が降る時って大体晴れじゃね?」
「…ふはっ!!」
ウケた。
普段学校でおちゃらけキャラな心の俺が喜んでる。
笑いをこらえきれないまま、肩で息をしている。
その声につられて、俺も少し笑った。
「いやいやだってさ、映画とかアニメとか漫画とか、だいたい晴れじゃん。地球側の配慮なのかな?」
ウケてる。
よほど面白いのかツボに入ったのか、ずっと笑っている。
ふと、視界のすみがチラついた。
みると、街灯が一つ、また一つと消えていく。
計画停電なのか、もう意味がないからなのか、わからない。
ただ、暗くなるたびに世界が少しずつ軽くなっていく気がした。
…隕石落下って、世界の終わりって明日、だったよな?
「あーあ!屋上ついてきてよかった!」
もう声だけしか聞こえないほどあたりは真っ暗だった。
「私達、一番乗りで隕石触れるね!」
「…だな!」
もう吹っ切れたように聞こえたそれは、もう俺の心の支えだった。
世界の終わりがもうわずかということが感じられた。
「だんだんあったかくなってきたね」
「冬なのにな。てか俺ら貴重な体験すぎるだろこれ」
俺たち、ここで燃え死ぬか、潰れ死ぬのか。
「ほんと、ありがとうね」
最期数秒、手に温もりを感じた気がした。
ねえ隕石明日って言ったじゃん!!!!なんで!!!!!!!!
な、お話です。
夏井蒼徒 様のコンテスト用テンプレートーーー
作品名 隕石が降る時って大体晴れじゃね?
ユーザーの名前 冬
この作品に込めた思い 終末に過ごすならどないしようかな〜と妄想を膨らませました。
その他でほしいもの 日記などで私の作品のどれかをついでに紹介
一言 もしダブルでの応募がダメでしたら遠慮なく落としてください!
黒薔薇姫 様のコンテスト用テンプレートーーー
作品のこだわり、工夫点
面白くもあり、シリアスでもあり、人間の勇気のでない部分をできるだけ綺麗事にしないように工夫しました。
つまりリアルな感じになるようにしました。
報酬
1つ目 ユーザー紹介
2つ目 希望作品への感想(どの作品でも大丈夫です!)