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【自惚屋の美術館】
鈴の音が響いた。
真っ白な空間の中に長い金髪を後ろへ括った水色の瞳の身体が黒い軍服に長細い鞘を腰に下げていた。
古いな、と初対面の女性に思ったと同時にパリにこんなものがいたことに少なからず感心した。
漫画やイラストが盛んな国であるし、そう珍しい話でもない。
「あ~...新しく入った方の館長か?」
何となく悪寒のする若い女性。お淑やかな雰囲気の中に奇妙な手応えがある。
会釈して顔を見ると頭の中で何かが弾けて突き抜けるような感覚に襲われる。
いやに強制力を持ったそれを払うようにして、あるいは感情を隠すようにして口を開いた。
「…私はアムールプロープル ミュゼの新館長、アーフレジアン・シトリックです。
リュミエール・フルール・オルガ…さんでよろしいですか?」
「ああ、それで合ってる…ずっといやに高鳴ってるんだが、お前の仕業か?」
「その通りです、などと申し上げましたら…どうします?」
「…今すぐ止めろ、今すぐだ」
確証無しに威圧をもって凄んだが、奇妙だった感覚が引いていく辺り、正解だったらしい。
何をしたのか知らないが、これまた変わったものをお持ちのようだ。
「アーフレジアン…で、いいな?何をするかは前館長に聞いてるか?」
「ええ、まぁ…昼に来客等の対応と、夜は警備に手を回せば良いんですよね?」
「…そんなところだな。で、他の奴は?」
「あら…揃っていないんですか」
「そう、だな……本格的には夜からだろうし、夕方辺りに来るのかもな」
顎を引いたアーフレジアンに背中を向け、机の上に山積みにされた書類を漁る。
確か、誰かが全ての美術品の特徴を見出していたはずだ。
書類の中の一つを手にとって目を通したと同時に後ろから視線を感じた。
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**E-039:善人者/早摘み**
塔上の白い建物の上に白い薔薇が咲いており、その薔薇の茎を大きな|鋏《はさみ》が手をかけている絵画です。
対象者はルネ=ルイーズ・カロン。
興味本位で当館を訪れた後にアンハッピーと魔法与えられましたが、対象者による魔法の使用は禁止されました。
対象者は贈与時、「何が起こったのか分からない」「頭がおかしい」「帰らせろ」「狂ってる、アンタ狂ってるんだ」等と供述した後、足元に鋏が掠めた直後、非常に大人しくなりました。
E-039は贈与時、~~ひどく苛立ったような形で~~対象者に対し昼であるのに構わず異変を発生させました。
以下、E-039が発生させた異変です。
(対象者に贈与時)
・鋏が対象者の足元を掠める。
・~~近くで水を飲んでいた~~猫の首を鋏ではねる。
・~~アムール及び、~~特定の職員のみに鋏が飛んでくる。
(通常時)
・対象が飾られている空間が階段ブロックのように崩れる。
・頂上に咲く白薔薇を抜くまで鋏が追ってくる。
現在、E-039は対象者に対し何も行っていません。
報告は以上です。
`何が以上だ、クソッタレめ。この脅迫みたいな行動のせいで、こっちはワガママ絵画の世話を任される羽目になったんだぞ。こんなもん書いてる暇あったら呪いみたいなもん解く方法を考えてくれよ。`
追記:
ルネ=ルイーズ・カロンが200×年にE-040の近くで亡くなっているのを発見しました。
死因を調査したところ、自殺とみられます。
報告は以上です。
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乱雑に書き殴られた赤色の文字。
他の綺麗な文字で書かれたものとは違い、別人であることが分かる。
インクは乾いていて随分と前のもののようだった。
ルネ=ルイーズ・カロン。確か、前の警備の前任者だったはずだ。
その頃はあまり美術品も異変が頻繁に発生せず、比較的には平和だったとの話だが何やらきな臭い。
しかし、今それを話しても仕方がないだろう。
後ろを振り返り、書類に目を通そうとしているアーフレジアンに紙っきれを手渡した直後、また鈴の音と複数人の足音が響いた。
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「こんにちは」
始めに長い金髪に海のように深く美しい青色の瞳をして、茶色のブーツから上に腰へ黒いベルトが巻かれただけのシンプルな白いワンピースに身を包んだ女性が挨拶をした。
名前は…確か、星を彷彿とさせるような名前だったはずだ。
「私はネージュ・テラリウム。以後、お見知りおきを」
その言葉を皮切りに会釈を返される。
返された会釈をこちらも渡し、更に後ろの人物に目を通す。
手品師のような格好に両方を白の布で結んだ青髪、右が水色、左が黒の瞳をしたひどく陽気な男性。
淡い桃色の髪に大きめのリボンをつけてラフな格好の女性。
黒い天然のパーマを目立たないよう抑えるほど短くして、睫毛が長くやや伏目がちな葡萄に似た色味の良い瞳に、えんじ色のセーターの首周りに白く大きなリボンを結んだ白いワイシャツが見える。更に薄い色をしたジーンズズボンに灰色のスニーカーを履き、どこか陰りを帯びたような儚げな雰囲気を漂わせる男性。
短い茶髪に灰色の瞳の白シャツの上に、灰色のチェック柄ジャケットを着込み、耳の銀色のピアスが目立つ親しみやすさが感じられる明るい好青年のような男性。
クリームのようなやや薄い茶色の長髪に笑うような金色の瞳の上に黒いスーツを纏った奇妙な男性。
深く被った黒いフードの中に黒髪に刺さるような白い瞳をして、瞳の下の黒い黒子と耳の黒いピアスが目立った顔が一切変わることがない不審な男性。
長い白髪に深い青の瞳をしているものの、胸元が妙に硬そうに何が浮き出たような違和感のある女性。
こちらもクリームのようなやや薄い茶髪を一本の三つ編みにし、身の丈に合わないのかダボッとしたTシャツに短パンを履いた眠そうな女性。
手品師のような格好をした男性が嬉々としてこちらを見て、言葉を投げた。
「……やァ!僕の名はテュベフキュローズ…テュベフキュローズ・ペストノア!!
普段は道化師やってるよ!!ピエロさん?ノア?ローズ?なんとでも呼んでくれ!!」
「ああ、そりゃ選択肢が豊富で…良いもんだな、そっちの後ろの方の名前も教えてくれ」
それを境に一斉に紹介の声が響いた。
ラフな格好の女性が親しみやすそうに、
「それなら、一番手から!うちはモルフォ・フラワーだよ!モルフォって読んでね!」
儚げな雰囲気の男性がかしこまったように、
「レザン・ウロボロスと申します。よ、よろしくお願いします」
明るい好青年のような男性が気を配るように、
「俺はフレデリック・アダン・ジュイ。
…ちょっと長いからフレディって呼んでもいいよ。よろしくな」
女性を一瞥する奇妙な男性が自分を主張するように、
「俺はエーベル・ハーベスト、よろしくな」
いやに違和感のある女性が明るく振る舞うように、
「はじめまして!日向・エマです!よろしくお願いします!」
ラフな格好で眠そうな女性が諭すように、
「僕はコウガ。コウガ・ルージュだよ」
最後に、やけに不審な男性が気怠そうに、
「…ソイル・アトア…」
そう全員が挨拶をした。
挨拶の後の視線を一斉に浴び、少し照れくさくなりながら笑って言葉を返す。
何もかもが泥沼に浸かったような遅さで済ませる挨拶や仕事の説明をしている内に、あんなに高く登っていた太陽は既に沈みかけていた。
書き方を変えるか、変えないか…模索中ですが…まぁ見やすい方で行きましょうね。
本文は中々良いものができず悩んだ結果、無理やり終わらせました。
次回で来客とE-39の話になります。
下にはメスなシリンダー様のキャラクターと、故人のキャラクターのプロフィールになります。
**キャラクタープロフィール**
⑴リーセ・アルファ / メスなシリンダー 様
https://firealpaca.com/get/BTSOQFXP
名前:リーセ・アルファ
年齢:23
性別: 男性
性格:気まま(気分屋) 絵画に対してのみプライドが高く他のことに興味がない
容姿:後ろ手に一括りした濃い緑に紫のメッシュ、黄色い瞳、黒い丸眼鏡、白い紐ピアス、奇妙な服に白ベルト、黒ズボン
一人称:私
二人称:呼び捨て
三人称:あいつ(男性) あのひと(女性)
好きな物:絵画、美術館、自分のファン
嫌いな物:自分の絵を否定する人間、魚
過去:画家の一家に生まれ自分も画家を志す。兄に名声を聞いてミュゼに作品を寄贈するようになる。
寄贈する美術品の名前:幾何学の踊り
寄贈する美術品の種類:絵画
寄贈する美術品の詳細:抽象画。幾何学模様が画面に広がっている(アルファの服の模様みたいな)
寄贈する美術品が起こす異変:幾何学模様が宙に浮いているような幻覚を引き起こす
寄贈する美術品の番号:B-317
寄贈する美術品の印象:絵画というよりデザインに近い。素人に「自分でも描けそう」と言われがち
その他:無し
サンプルボイス:
「私はリーセ・アルファ。その絵を描いた画家だ。
リーセ家の絵画をご存知かい?ふぅん、気に入っている? 中々お目が高いじゃないか」
「リーセ家の人間はみんな画家なんだよ」
⑵ルネ=ルイーズ・カロン (故人)
名前:ルネ=ルイーズ・カロン
年齢:26
性別:男性
性格:野心的で大雑把、芯が強い性格
容姿:短くやや薄い茶髪に水色の瞳
乾いた肌で白いパーカー、赤茶のズボン、黒いスニーカー
一人称:俺
二人称:君、アンタ
三人称:俺ら
好きな物:運動、ココア、勉強
嫌いな物:レーズン
過去:美術専門大学 中退
武器:警棒
職業:アムールプロープル ミュゼの“元”警備員
魅た美術品の名前/別名:善人者 / 早摘み
魅た美術品の種類:絵画
魅た美術品の詳細:高い位置に咲いた白薔薇の茎に断ち切り鋏が手をかけている描画
魅た美術品が起こす異変:対象が飾られている空間が階段ブロックのように崩れ、頂上に咲く白薔薇を抜くまで鋏が追ってくる
魅た美術品の番号:E-039
魅た美術品の印象:趣味の悪さが際立って見える
魔法:火炎系列(禁止)
初来訪時の理由:興味本位
その他:故人
サンプルボイス:死人に口無し