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Ririnaとリリナのメモリアル
頭から炎の揺らめく二重の耳が生え、右の額から捻じ曲がった角が伸び、猫又のように先端が二つに分かれた尾を持つ少女がいた。彼女は薄緑の長い髪を風にたなびかせながら、ベランダの柵に寄り掛かり遠くを見て物思いに耽っている。
「今日でもう二周年かー」
今日は5月21日。彼女が短編カフェで活動を始めた記念日だ。
彼女は退屈そうに大きくあくびをした。
「記念日っつっても、誰も祝ってくんねー」
ふと後ろを振り返ったところ、彼女は一瞬思考が停止した。
目の前に自分とそっくりな容姿をした人物がいたのだ。ギョッとして後退りした拍子に、ベランダから落ちそうになる。
「ふぇぇぇ!?」
なんとか落ちずに持ち堪えたが、気がつくと目の前の謎の人物は姿を消していた。
「な、なんだったん... ???」
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さっきのことを気にかけながらも、彼女は突然食べたくなった明太子を買いにスーパーに向かっていた。そのうちに野良猫を見かけて追いかけていたところ、見知らぬ場所へと迷い込んでいた。
「ぬ...これは正真正銘、迷ったな。」
片手にがま口の財布を握りしめながら硬直する。全身から冷や汗が吹き出してくる。
猫は足元で何やらすりすりと頬を彼女の足に擦り付けている。懐かれているのか、猫自身のダニを落とすために使われているのかはわからない。
とりあえず彼女は元来た道を戻ることにした。実は元来た道さえもわかっていないのだが...
「ねぇ、Ririna」
突然後ろから聞き慣れた声が聞こえたので振り返ったところ、そこにいたのは自分自身だった。おそらくさっきの謎の人物と同じ奴だろう。口を三日月の形にしてニヤニヤと笑い、そのギザ歯が白く光っていた。
「私は、リリナ。はじまして、じゃないけどはじまして。」
リリナは不気味な笑みを浮かべたままRirinaに近づいてくる。
「ふぇ?どゆこと?」
いまだ混乱するRirinaの脳内には、鬼気迫るトランペットの音色がやかましく響いていた。
リリナはRirinaの眼前で立ち止まり、Ririnaが握っていたがま口財布を盗んで逃げていく。
「あぁぁぁドロボぉぉぉぉー!!?おまわりさんこいつでぇぇぇすっ!!」
こうしてRirinaとリリナの鬼ごっこが始まった。
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逃げるリリナと追うRirina。
のどかな街中を駆け抜ける二人はまるで異様な光景だった。
「双子?」
「追いかけっこ楽しそー!」
「おい!危ないだろうがてやんでぇい!!」
町人がその二人の爆走劇を見て眉を顰める。Ririnaとリリナは脇目も振らずに駆け抜けていった。
いつの間にか二人はRirina宅まで戻ってきていた。
Ririnaは肩で息をしながら、リリナを睨みつける。
「財布...返せや!」
リリナは依然ニヤニヤとした笑みを貼り付けたままであったが、大人しくそのがま口財布を手渡した。あまりに素直だったのでRirinaはきょとんとする。
そして気がつく。自分が迷子になっていたのを家まで導いてくれた...?
「二周年おめでとう、Ririna」
リリナはニッカリと笑って、花束を差し出してきた。それは白い霞草と青いブルースターが咲き乱れた可愛らしい花束だった。
「これ...私に?」
リリナはただ無言で頷く。ブルースターはまるで星のようにキラキラと輝いて見えた。
「...ありがとう!」
Ririnaとリリナは和解して笑い合った。
そして明太ご飯を食べた。なぜ財布を盗んだのかはいまだわからないが、そんな不可解なことがあるのもまたいいものだと、Ririnaは心の中で無理やり納得したのであった。