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餅
春といえば君は何を思い浮かべる?
桜?菜の花?お花見?...俺はどれとも違う。
春といえば...そう!
**餅なんだ!**
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「えー...また餅食うのぉー??」
俺は持田 望の介(もちだ もちのすけ)。
名前の通り餅が大好き!なわけないだろう!
餅というのは苦くて見た目も地味ですぐに飽きる。しかも喉に詰まらせたら死ぬかもしれない、もはや兵器のようなものだ。食べ物ではない。
しかし春になると頻繁に餅を食べる機会がやってくる。
初めはひな祭り。
あの三色の菱形の餅だ。
まぁ、一番最初だから対して大変なことはない。揚げ餅にしたりきな粉をつけて食べたり、その時の気分によりけりな食べ方でいただく。
次に春彼岸だ。
そこではぼた餅を食べる。ぼた餅は名前の通り春の花である牡丹に由来しているのだが、秋のぼた餅はおはぎというらしい。秋といえば萩だからだ。
正直なところ名前を変えたところで同じ餅ではないかと思う。全く我が国の昔の人間は何を考えているのかわかったもんじゃない。
そしてお花見だ。
お花見では三色団子が出される。それから桜餅もだ。花より団子とはよく言うものだが、俺は断然花派だね。餅なんか大嫌いだ!
極め付けは端午の節句だ。
俺はこの餅がこの世で一番大嫌い!柏餅ってやつだ。葉っぱなんか巻いてあって、しかもなんだか青臭いから嫌いだ!
...え?端午の節句は夏の行事だって?ノー!この行事は春と夏の狭間の行事なのだ!だから春でもあるのだ!
そして今は春、5月5日。まさしく端午の節句の日であった。
「ねぇ...本当に食わないとダメ?」
俺は一縷の望みにかけてママに上目遣いで問いかけてみる。しかしママは頑なに笑顔のまま、「ダメ」と言うだけで俺の言葉になんか耳も貸してくれない。しょんぼりとした様子を見せつけるように多少オーバーに表現しながら、皿の上に置かれた柏餅を持ち上げる。
餅は俺の魂を吸い込むみたいに、気味の悪いツヤを放っていた。食いたくないんだけど...
ほんの少し涙目になりながら口の中にぐっと押し込む。やはり青臭い。何度食べても美味しいなんて思えない。
ママは満面の笑みで俺が餅を食べる様子を眺めていた。「どう?美味しい?」なんて聞いてくる。まずいなんて言えるわけがないだろう...「美味しい、よ。」そう答えるので精一杯だった。
あぁ、なぜこの国には餅なんてものがあるのだろうか。特に春はひどい。しかし春が終わればこれで餅地獄からも抜け出せると言うことか?それならばよかった。
...いや待てよ、冬も餅の季節ではないか?正月がある。
それから秋も...月見団子がある。
それじゃあ夏は?...宇治金時かき氷の上の白玉があるじゃないか!
俺はそれに気がついた途端にふらりと眩暈がした。
日本にいる限り餅から逃れることは叶わない、そう悟ってしまった。