公開中
雪
雪が降っていた。
病室から見る庭は白銀の世界。
気を抜いたら吸い込まれてしまいそうだ。
余命一ヶ月。
それを聞いた君は
「桜、一緒に見ようね」
とだけ、優しい顔で言った。
雪降る2月のことだった。
朝、起きたとき、庭が白いと安心する。
あ、まだ冬なんだ。
まだ、生きていける。
そう思った。
君は毎日会いに来た。
それを素直に嬉しい。とも思ったし、
嫌だな。とも思った。
弱っていく姿を見てほしくなかった。
ある朝。
目覚めると、緑が広がっていた。
あまりの美しさにはっと息を呑む。
それと同時になんとも言えない感情が心を支配する。
君は今日も横にいて、笑った。
「おはよう」
今日もまた、私は眠りにつく。
窓の外が白銀でありますように。
また、目を開くことができますように。
君とまた笑い合うことができますように。
もう起きないかもしれない恐怖に心を支配されながら、
「おやすみ」と君と笑う。