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空にとばそう。3
「明日修学旅行ってことすっかり忘れてた〜....」
姉の風が、焦りながら明日の支度をしている。
(いや修学旅行を前日に思い出すことってないだろ...)
と、思いながらも準備を手伝っている自分の甘さに嫌気が差す。
「こんなんだから...きっと...」
あんなことに、なってしまったんだろうな...
かといってそんなことを思っている暇はなかった。ゼルラの力を借りてようやくこっちの世界にたどり着いたと思ったら。神の力を使えるようになっていたり、龍にーちゃんの弟ではなく見知らぬ人の弟になったと思ったら麗王に恋心を抱いたり。そうかと思えば彩花の本性がけっこうエグかったり...
(こっちの身にもなってくれよ...)
この物語(中々なメタ発言すまねー...)のなかで、唯一善の心を持ちながら、本音で話せる相談役が居ない蓮はすこしこころを病ませていた。
「ねぇ、姉ちゃんはいつ龍にーちゃ...じゃなかった麗王にーちゃんに、こ、告白とかしないの?」
少し頬を赤らめながら聞くと、風の顔はみるみるうちに赤く染まっていった。
「ぁ、明日....ちょ、ちょびっとだけ」
(いや告白にちょっともないだろ)
心のなかでツッコミを入れながらよかったねがんばれ、と応援の声を送る。
だが、一つ心配なことがあった。
(彩花日和...)
蓮が彩花の本性...まあ、能力の試運転をしていたときに偶然見ただけなのだが、それはえぐい、もう人間じゃなかった。
(...あいつも。俺と同じか。)
彩花の家での様子を見ると、自分と同じ力を使って居るように見えた。
「だとしたら....」
すこしまずい。蓮はゼルラの力を受け継いだだけだし、どんな力ががあるのかをまだあまり知らない。一言で言うと、経験不足なのだ。
彩花はきっとたくさんのことを知っている。熟練というのだろうか...
蓮は少し人より頭の良い自信はあるが、彩花はまえの高校時代でも相当頭が良かったと聞く。
「ちょっとだけ、本気を出すしかないな...」
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『蓮は頑張っているようじゃな〜』
『彩花は熟練の神、笑わせる』
腹を抱えて大声で笑っているゼルラに、美青年が話しかけてきた。
『声を慎め、ゼルラ。』
『...シュテルネンリヒトか。お前も笑えるだろう。彩花が熟練の神だと言っておる。』
『それは笑えるが...声量には気をつけたほうが良い。彩花は容姿が極めていい。そのせいで味方もたくさんおるのだ。』
ヒソヒソと話し声が聞こえてくる。
『そのようなことは関係ない。妾の力を受け継いだのだ、彩花程度などゴミクズ同然じゃ。』
『................それもそうか。』
フッとわらったシュテルネンリヒトは、膝を地面につけ、少し声のトーンを下げて声を発した。
『序列一位女神兼序列一位堕天使ゼルラ様。』
『よすのだ、序列一位天使兼序列一位悪魔シュテルネンリヒト様。』
神々の世界で最も強いとされる称号は3つ。
序列一位女神、序列一位堕天使、序列一位悪魔。
その3つを所持するのは二人。ゼルラとシュテルネンリヒト。神々の世界で最も強く、最も権力を持っている。同時に最も恐れられている神である_______。
そして、もう一つ強さとは関係のない称号...というよりこれはこの二人が勝手に考え、勝手につけて遊ぶ称号。『八方美人狼の皮を被った羊。』ただの暴力である。だがこの称号をつけられた神は、その称号にふさわしいといわれていた。
『最弱女神、彩花日和。』
この称号をつけられたそのひとである。
蓮の一人称がコロコロ変わるのはひみつ